"SURVIVAL IS VICTORY"『ダンケルク(DUNKIRK)』クリストファー・ノーラン監督、トム・ハーディ、ジャック・ロウデン、フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、マーク・ライランスケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、他
注・内容、台詞、ラストなどに触れています。
『ダンケルク』
DUNKIRK
監督 : クリストファー・ノーラン
出演 : フィオン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
トム・ハーディ
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン
キリアン・マーフィ
ケネス・ブラナー
マーク・ライランス、他
物語・1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●チクタクチクタクチクタクチクタク
時を刻む音。
メトロノームが左右に振幅している。
1番大きな振れ幅が1週間、中央寄りが1日、そしてほぼ中心が1日。
ただしリズムは全て同一。
どの場面においても戦っているのは顔の見えない敵ではなく"時間"ともいえる。
陸でも海でも空でも。
「この救出を待つ長い行列はいつまで待てばよいのか…」
「一刻の猶予もない、すぐに出航する」
「燃料はあと、どれぐらいだ」
この行きつ戻りつ、時に前後ねじれたりする時間の中を観客は兵士たちと共にラストまで目撃していくこととなる。
そして、それ(時を刻む音)はやがて、無事帰還したイギリスでの列車内でゆっくりと止まる。
カチッ
トミーたちと同じようにホッと一息つける瞬間だ。
●プロペラが止まりゆっくりとダンケルク海岸をとぶスピットファイア。
手動で車輪を出す。
詩的なるシーンはファンタジー性を帯びているようにもみえる。
読み上げられる"ダンケルクからの撤退こそ勝利"の新聞記事のボイスオーバーがかぶさり続け、音楽が高らかに鳴り響く。
ラストカット。
捕虜となるべく手を後ろで組むファリア。
燃えるスピットファイア。
(ただ、映画はここで終わらず…)
着陸したファリアの時間より既にはるかに進行している列車。
トミーの顔。
(この表情をどう、捉えるか…)
エンドクレジットへ。
●最強の箱庭シーン。
それぞれの時間軸のキャストに対して観客が同一視線で体感できるように構成されている本作にあって、いきなり出る俯瞰シーン。
海岸の兵士、桟橋の人の数…
●桟橋にずらりと並ぶ兵士。
近づく爆音に対して一斉に見上げる顔、顔、顔。
IMAXで見たときの奥の奥まで見える表情!
●Nolan Blue(グレートーンの中にも数%のブルーが混じっているようにみえる)に浮かび上がる炎のオレンジ。
本作はほとんど流血とよべるシーンがない。
唯一、そのようなシーンがあるのは、ムーンスター号でミスタードーソンの役に立ちたいと乗船したジョージがキリアン・マーフィ演じる謎の英国兵(あきらかに戦闘による神経症を発症している)に突き飛ばされ船内で階段から落ち後頭部を鉄ダクトハンドルに打ちつけた場面ぐらいではないだろうか?
(戦闘でも爆撃でもなく不慮の事故で死亡してしまうアイロニカルさ)
●決定的な台詞。
「何が見える」
「故国(HOME)」
・イギリスへ帰還した兵士たちが列車に乗り込もうとしている。
毛布を配っている盲目の老人に対して。
「生き残っただけだ」
「十分だ」
・コリンズに対しての兵士の台詞
(やや、小突き気味に)
「空軍は何をやってたんだ」
ミスター・ドーソン
「我々は知っているよ」
●マスク取ったらめちゃくちゃハンサム。
後ろの席で見ていた年配の女性ふたりの会話。
(関西弁 ↓)
「あのパイロット、マスク取ったらめちゃくちゃハンサムやったねー」
「あ、思った思った、正統派男前って感じやった」←これはきっとジャック・ロウデンの事ですね 笑
●こういう人もいました。
ラスト、桟橋で「あ、あれ?どうなってるの?」といった顔で目を覚まして(もしかして、最初から最後まで寝てたりして?)ちゃっかり将校たちの、これが最後となるイギリス兵の帰還船に乗船できる兵士。
※Memo2
●エキスポIMAXで発見したこと。
埃や糸くず(ヘアー)と思しきものが確認できる。
(後述、船内シーンで左下にかなり、はっきりと判る)
さすが完全アナログなフィトケミカルプロセスによる組み合わせ。
そのフィルムプリントからスキャニングされただけのことはある。
そしてデジタル修復せずに、そのまま再現していることに驚嘆。
●約75%のIMAXカメラ撮影に対して25%の65mmカメラ撮影部分は主にムーンスター号部分(船内、船上)、引潮で海岸に打ちあげられた状態になっている漁船の船内シーン(この密室シーン、本編中最も怖かった)、ボルトン海軍中佐(ケネス・ブラナー)が桟橋の上から海上に現れる民間船を目にするシーン。
●空を広く撮ったり描いたりすることは難しい。
スカスカという評、発言を見かけたけれど、龍安寺の庭みたいな余白の美として好きだけどなぁ。
「ヘルツォークが語っていた"Ecstatic Truth"の意のひとつとして砂浜での兵士たちの配置を幾何学模様にした」とインタビュー(後述TV Bros.)での発言も。
●65mmカメラで撮影された『アラビアのロレンス』と、どこかダブるような感慨のシーンがいくつか。
(『ダンケルク』のCGを使わないアナログ撮影に関してのメイキング映像や画像などがすごく面白い。同じように「ロレンス」も砂漠に電信柱を建てて電気をひくところから始める話や駱駝の面構えオーディションなど逸話が多数)
・1週間と1日と1時間が交差していく際に起こる時間軸のねじれ
(『アラビアのロレンス』におけるダマスカスで握手をもとめてきた兵士に「どこかで会いましたか?」と不思議な顔をするロレンス)
・冒頭「イングリーシュ!」「イングリーシュ!」と叫ぶトミーを見て『アラビアのロレンス』で3回出てくる同台詞を思いだした。
●スピットファイアの象徴するもの。
それは、まさにイギリスそのものでもある。
フレデリック・フォーサイス自伝『アウトサイダー』の中にスピットファイアに乗ることが子供の頃の夢だったから空軍へ入った記述が (最初の方にダンケルクのこともチラッと出てくる。最近撮影されたスピットファイアに乗るカラー写真も)
※Memo3
●おそらく最も上映館数が多いと思われる2K上映。
ビスタFLATかシネスコ額縁か。
張りキャンノーカットマスクの現在、最も大事なことはフットライトが最小限の明るさで場内が限りなく暗いこと(消防法の関係なのか禁煙室内灯がぼやっと点けざるをえない劇場もあるので注意)。
●TOHOシネマズなんばの2K IMAX
D列だと通路をはさんでC列の人の頭がかぶってくるため最初から販売していなかったりと、それぞれの劇場によって対応が変わっている(はず)
●冒頭。
…砂浜へ。建物や塀の影が青い。
その影の色が見たこともないほど美しい。
2K額縁でもエキスポIMAXでもデジタルIMAXでも全て同じ色だ。
(これもフィトケミカルプロセスの恩恵ではないだろうか)
●次世代レーザーIMAX
写真は大阪エキスポシティ・座席 F-012
最前列鉄柵のことを考えると、センターのF-020が個人的にはベスト(このあたりは好みの問題もある)。
●確認のため、2K額縁上映をなんばパークスシネマ シアター7で。
中央部分だとかなり没頭できる。
ショットとしておさまりがよくなるシーンも発見。
(最初から考えられているのだろうか?不思議だ)
初見の知人がエキスポIMAXでは視点の位置が中央になるため、IMAXカメラと65mmカメラ撮影部分との切替箇所は気づかなかったと言ってた。
※Memo4
●TVブロス. 9月9日号
『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督インタビュー。
カラー4P。
"Ecstatic Truth"の意味するもの、音楽的ストラクチャーの話、映画のトーンについてなど素晴らしい内容。
●「若き兵士たちはオープンキャスティングをやって集めた~中略~僕は各ストーリーラインをきっちりしめてくれる"アンカー"がほしかった。経験を積んだベテランで観客にも馴染みがある役者。ケネス(・ブラナー)、マーク(・ライアンス)、そしてトム(・ハーディ)だ。彼らがかっこいいって?そうでなくちゃ困るよ。かっこよく撮ったんだから(笑)」
●Title Design > SCARLET LETTERS
ノーラン監督のほとんどの作品(『インターステラー』『メメント』など除く)タイトルは黒バックに白文字。
クリストファー・ノーラン監督
Movie titles and typography from all feature films directed by Christopher Nolan.
http://annyas.com/screenshots/directors/christopher-nolan/
●パンフレット。
奥付けにしっかりとビスタサイズ(上下に黒みのあるレターボックス)/2D, IMAX/2Dという記載もある。
●まだ途中まで(やや拾い読み)ハーパーBOOKS『ダンケルク』
ノンフィクション本と思いきや、これがすこぶる面白いメイキング本(8Pカラーページ、インタビュー有り)でもあります。
(11章「新たなダンケルク」は40ページ以上にわたって映画に関して)
※Memo5
●手作り感!
厚紙で出来たエキストラを立てるところを撮影した動画
https://www.youtube.com/watch?v=26cNm9trmIU
●70mmフィルムのプロセス、配送などに関して。
A Day in the Life - 70mm Dunkirk
https://www.youtube.com/watch?v=tFGaxVejvys
●参考
マイケル・ケイン繋がり(ファリアとコリンズへ指示を出す司令官の声でカメオ出演)で『空軍大戦略(BATTLE OF BRITAIN)』(1969)
movie typography
タイトルデザインはモーリス・ビンダー(Maurice Binder)
http://annyas.com/screenshots/updates/battle-of-britain-1969-movie-typography/
『ダンケルク』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/
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