「物語」のバトンをつなぐ。 Netflix『DEVILMAN crybaby』原作 : 永井豪、監督 : 湯浅政明
注・内容、ラストに触れています。
『DEVILMAN crybaby』
原作 : 永井豪
監督 : 湯浅政明
※Memo1
●デビルマン原作が終了した年に中東戦争が始まり翌年オイルショックが始まった時代の予兆を含めた空気感。
そこから生み出された物語。
それをそのまま2018年に置き換えることは不可だ。
ノストラダムスも日本沈没もゴジラ対ヘドラも全ては70年代前半のこと。
(それは『エクソシスト』をはじめとするオカルトブームとも呼応する。この時期の映画を現代にリメイクすることはそれ自体でハードルが高い)
本作の湯浅政明監督による「漫画史に残る物語」の新たなるアップデート
(最も顕著なSNSの扱いや「デビルマン」が既にアニメとして存在している世界という「デビルマン」原作以降に多々誕生したアニメや漫画への目配せなど)
そうすることによって次世代へ「物語」のバトンを手渡すという英断と手法は素晴らしい。
●2と9話(Netflix 特有のエンドクレジット飛ばしのマーカーもラストまで出ない)が出色。
(湯浅監督自らがツイートしているとおり9話は原作でも最も衝撃的な展開が待ち受けているエピソード回。エンドクレジットの曲とその後のシーンも含めて)
映画とは違いリミテッド(ミニ)アニメシリーズ。
全話一括配信とはいえ1話ごとに同じテンションでは描かず(まだ細かく精査していないがスタッフも仕上がりもかなり違う)全体バランスのために途中緩めているエピソードも存在。
●「悪意」の伝播。
転写、そしてまた伝播。
それは「魔女狩り」の時代から変わらぬ人間のメンタル構造における負(ここで負というのも二元論的だが)の部分。
それはSNSなどにおける拡散力の増幅によりさらに増している。
その中で描かれた9話。
牧村美樹の「それでも信じている」「私もデビルマンだ」というメッセージは「悪を憎み退治していくものもまた悪」といった広義な救済を描いていて強烈だ。
ラストの「明!教えてくれ!この感情はなんなんだ」と流す飛鳥了(サタン)の涙も同じだ。
しっかりと湯浅監督のテイスト(昨年の『夜明け告げるルーのうた』とも重なる)も練りこまれた作品となっている。
●1話に湯浅監督の昨年の映画『夜は短し歩けよ乙女』からまさかの台詞。
「たまたま通りかかったもので」
(さすがに言いかけて途中で止めてますが 笑)
他にも「地獄の黙示録」ナパーム弾シーンや「おやっ?ゴジラ?」と一瞬見えてしまう自衛隊トラックに載せられた退治されたと思しき悪魔←未確認(未確定)など、イースターエッグ的にいろいろありそう。
※Memo2
●余談1(オイルショック当時買った漫画の単行本は紙資源不足から中質紙の中でも特に質の悪い中質紙に変わり、もはや劣化の一途…)
●余談2(『デビルマン』に先だつ同じ永井豪原作『魔王ダンテ』の未完のラスト。「ぼくらマガジン」廃刊の為に仕方なく描かれたと思うのだけれど「さあ!これから」と思わせての「エッ?!ここで終わり?」は唖然としたと同時に「こういう終わり方もあるのだ」と逆に強烈な印象が残っている。それは石ノ森章太郎「幻魔大戦」ラスト最終カットと共に初期漫画原風景の絶対的記憶)
DEVILMAN crybaby | 公式サイト
http://devilman-crybaby.com/
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