無一物(むいちもつ)『モリのいる場所』沖田修一監督、山崎努、樹木希林、他
注・内容に触れています。
『モリのいる場所』
監督 : 沖田修一
出演 : 山崎努
樹木希林
池谷のぶえ
加瀬亮、吉村界人
光石研、青木崇高
吹越満、きたろう
林与一、三上博史
物語・画家の守一(山崎努)は草木が生え、いろいろな種類の生きものが住み着く自宅の庭を眺めることを30年以上日課にしていた。妻と暮らす守一の家には、守一の写真を撮る若い写真家の藤田、看板を描いてもらおうとする温泉旅館の主人、隣人の夫婦など来客がひっきりなしだった。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo
●冒頭から驚いた。
「これは何歳の小学生が書いた絵ですか?」
昭和天皇(林与一)の台詞で幕を開ける。
続く長野で旅館をやっている朝比奈(光石研)が看板を書いてほしいと訪ねてくれるシーン。
「長野!?それは大変だったでしょう。さっそく準備しましょう」
「よかったねぇー、あんた」
「先生はめったに書いてくれないから」
(現に表札が何度も盗まれている)
「新幹線のこと知らないから、ここへ来るの、ものすごく時間がかかったと思われてる」
出された大きな檜。
見守るギャラリー(誰?という人も 笑)
そして書かれた文字。
(旅館名ではなく熊谷守一の好きな言葉)
「無一物」
●鑑賞後用に録画しておいた展覧会のナビ番組『生きるよろこび 画家 熊谷守一の軌跡』と『美の巨人たち/宵月』をチェック。
1972年のドキュメンタリー映像で庭を歩く姿や夫婦で囲碁をうつシーンが部分使用されていた。
蟻の一歩についても。
(紹介作品は1958年「豆に蟻」)
「蟻は左足の前から二番目の足から歩き始める」
そして、もうひとりの出演者とも言える家、昭和7年築!
インタビュー記事などを読むと全体が見渡せる画面は写さず、庭自体の広さが判別できるのはラスト、写真家・藤田が隣に建てられたマンションの屋上にあがって写真を撮る件(くだり)
こんなに狭かったんだ…。
藤田もアシスタントも、そして本作を観てきた観客もここで驚かさせられる。
●その「美の巨人たち」の中で山崎努さんへのインタビュー。
「一貫してマイペースを貫いた人ですよね。彼は見る人でね。見るということはインプットすることで、見た経験が自分の中で発酵してそれが作品としてアウトプットするわけですよね。だけども守一さんの場合は絵を描くためになにかを観察したり勉強するわけじゃないんでね。そういう生き方って贅沢だと思いません?」
「好きに作品は『宵月』です」
「あの青は僕にとってはね深くてね。よく見るとあの節のところにジャイアンツのGって書いてあるんですよ。ユーモアあるんですよ」
(本当に熊谷守一さんが好きなんだなぁ、ということが伝わるインタビュー)
●じーっと石を見て動かない熊谷。
(まさに本人も石と同化?いや、その前に庭と一体化しているか)
「あ、動いた」
●蟻の隊列について、どうやって撮影したのかについて「モリカズさんと私」に書かれていました。意外とシンプルな方法。(ちなみに黒澤明監督『八月の狂詩曲』でリチャード・ギアと子どもが蟻の行列を見るシーンがあるが、そちらはフェロモンを発生させる装置を使ったりと超大掛かりなシステムで撮られたとのこと。)
●設定が1974年。
ドリフターズに志村けんが加入した件の話があっての、たらい落としネタやいつの間にか加わっていた知らない男(三上博史)が実は宇宙人?など一見、リアリスティックに寄りがちなドラマを見事にハネさせていて、この空気感を醸しだす沖田修一監督作品は好みだわぁー。
●で、おなじみの食べものネタ。
伊勢海老『南極料理人』海苔『キツツキと雨』とんがりコーン『滝を見にいく』ピザ『モヒカン故郷に帰る』と続いて、本作は牛肉。(姪がついつい買ってきた大量の牛肉。続くシーンが想像どおりで笑ってしまった)
●今年(2018年)東京で開催され現在、愛媛県美術館で開催中の『没後40年 熊谷守一 生きるよろこび』展。(6月17日まで)
音声ガイドが山崎努さんと樹木希林さん!
http://kumagai2017.exhn.jp/
映画『モリのいる場所』公式サイト
http://mori-movie.com/
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