『Arc アーク』石川慶監督、ケン・リュウ原作、芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫、他
『Arc アーク』
原作 : ケン・リュウ
監督 : 石川慶
芳根京子
寺島しのぶ
岡田将生
清水くるみ
井之脇海
中川翼
中村ゆり
倍賞千恵子
風吹ジュン
小林薫
※Memo1
●まさに円弧を描いた物語に呼ばれるように、もう一度最初のシーンから見てみたくなる再見必須の作品。
●原作未読で見たら、どんな印象だったのかは今となっては不可逆。
はたして、この物語を映画にすることは可能なのだろうか?
あゝ2パターン体験できたら..と思う心がSF。
●原作を読んだ時に感じたのは自分より若い母親に会う息子。
(「インターステラー」の自分より外見が若い父親に会う娘を想起)
映画ではその息子役を小林薫、パートナーである芙美(原作にはない役)を風吹ジュン。
●リナによるプラスティネーションの”舞”のシーン。
低い姿勢でスーッと動いたつま先が円弧を描く。
師であり恩人でもある永真(寺島しのぶ)がのりうつったようでもある。
●不死の施術を受けたリナの手から消えるホクロ。
それは逆の意味での印(しるし)
●好きなシーン。
「パパ、おはよう」
娘のハルがプラスティネーションが施された天音の腕(手)に挨拶。
そのまま貝殻のレリーフに触れて2階へ。続いてリナもレリーフに触れて上がっていく。
●カラーからモノクロへ転換する中盤。
夫、天音(岡田将生)の死後、ひとり不死のまま残るリナとハルの世界。
時間が止まっているという意味でも静謐さにあふれたシーンの数々。
さらに終盤、モノクロからカラーに移る瞬間。
暗室の真っ赤な画面。浮かび上がるモノクロ写真。
うまい転換方法。
そして、また動き出すリナの時間。
●音楽が奇しくも(偶然?)芳根京子主演の朝ドラ『べっぴんさん』を手がけた世武 裕子
(あとで知りましたが師事した作曲家がガブリエル・ヤレド)
●石川監督とは3度目のピオトル・ニエミイスキによる撮影。
前半と後半でルック自体が変わる。驚いた。
カラーグレーディングもポーランドで行われ、キエシロフスキ監督に通底する透明度。
美しい。
●原作にも映画にも登場する台詞
ラスト。
リナ(ここでは倍賞千恵子・135歳)と娘ハル(ここでは中村ゆり・50歳)が海岸で語らう。
「永遠に生きるチャンスを得た最初の女性は、それを諦める最初の人間にもなるのね」
※Memo2
●パンフレット。
鑑賞後、表紙の写真自体に感激した(エッ?!此処?を使うという冒頭の灯台シーン)。
監督、原作ケン・リュウ、主演の芳根京子はもちろん、造形コンセプトデザイン、振付、美術、撮影、音楽、衣装デザイン全てにおいてインタビュー、キーワード(会話・専門用語・事象)などが掲載されている。
副読本としてもオススメ。
●リナの孫にあたるセリの写真が1枚も掲載されていない。
このセリも芳根京子が演じていて、オーバーオール姿ではしゃぎ気味に走り回る姿にはビックリした。
ラストは3人が同一画面にいることになる。
リナ(135歳)ハル(50歳)そしてセリ。
●『SFマガジン』8月号。
『Arc アーク』公開記念特集。
石川慶監督インタビュウで是枝裕和監督『真実』劇中劇がケン・リュウ「母の記憶に」だったことについて触れてる!確かに「あ!」って思っただろうなぁ。
●ケン・リュウ「不死」をテーマとした姉妹編とも言える作品。
『円弧(アーク/Arc)』を地球編『波(The Waves)』はさしずめ宇宙編。(2015年「紙の動物園」訳者あとがき)
●VIDEO SALON 2021年7月号
特集 : 映画に学ぶ映像編集術
『Arc アーク』の舞台裏。
石川監督との共同編集者、太田義則インタビュー。
「年代を表すキャプションについて有る無し含め、フォントの種類、ポイント、位置などミリ単位で詰めた」
デザイン的にも硬質な、あの感じはこういったところまでと驚く。
※Memo3
●不老不死というと、やはり『火の鳥』を思い出す。
ただ、こちらのテーマは繰り返される円環のドラマであるという違いがありますが。
『アーク/Arc』は始まりと終わりのある円弧。
●「DVD&動画配信でーた」7月号。
あの人が選ぶ映画3本立てプログラムで石川慶監督が最初に挙げた作品がアンドリュー・ニコル監督『ガタカ』
そこでのCGを多用せず既存の建物を用いてのフューチャー感を出す手法は『Arc アーク』でも試みたと答えている。ちなみにスワヴォミール・イジャックは石川監督が通っていた大学の大先輩だそう。
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