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2021-08-29

『いとみち』横浜聡子監督、駒井蓮、豊川悦司、西川洋子、黒川芽以、ジョナゴールド、他

いとみち

監督・脚本 : 横浜聡子
原作 : 越谷オサム
出演 : 駒井蓮、黒川芽以
横田真悠、中島歩、古坂大魔王
宇野祥平、ジョナゴールド
西川洋子、豊川悦司

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原作未読で鑑賞。

Memo1
時間が経過して色々なシーンが浮かんでくる作品がある。
本作がそうだ。
見た瞬間もよかったが、じわ〜っともう一回見たい!と。
ご当地映画としても過不足なく、そして押し付けがましくもなく上品に成立している。
津軽三味線名所(岩木山・浅虫海岸・弘前れんが倉庫美術館)、ご当地アイドル(りんご娘・アルプスおとめ・ライスボール)、そしてりんご(アップルパイ!)
駒井蓮さん演じるいとの「ぐぬぬぬぅぅ」といった声が聞こえてきそうな悔し顔を思いだし笑いした。
あんな漫画でしか見たことのない表情、実写で初めてみた。
また、場面場面で変化する表情も本当に素晴らしい。
パンフレットの写真だけでも同一人物とは思えないほどの印象。

通学列車が一緒で初めてできた友だち、早苗(ジョナゴールド)
父親や他の同級生、周りの人たちとは違った表情を見せる。
半ば家出(祖母に「頭、冷やしてこい」と父親とともに出されたのだから家出でもなくなる 笑)のような形で三味線(持って行く必要がないのだが、なぜか目に付いた)とバッグを持って早苗の家に泊まる、いと。
ここのシーンも好きな場面。
早苗「いとっちは三味線弾いだ方がいいよ」
いと「なして」
早苗「うん、なんとなく」
この前段階があってのラスト、津軽メイド珈琲店でのライヴ。
いとの父親、耕一(豊川悦司)。
『子供はわかってあげない』でも雑な日焼けの不思議能力・海パン父を演じていたが、本作でも幼くして母親を亡くした、いととの接し方に戸惑いを隠せない父親を好演。
父と娘の距離感。どこかよそよそしい。
お互い、打ち解けようとしても打ち解けない。
メイド珈琲店が経営者のオーナー逮捕で危機に陥った時、初めて語彙を荒げて、いととぶつかる。
(母親とのこと、周囲の同情などで)感情を表に出さず、泣かなかった、いと。
そんな二人の気持ちが通じるアイテムとしての珈琲。
父、耕一がいつも母親の仏壇に供えていた珈琲を、いとが初めて入れて父に出す。
会話はなかったが、成長した、いとの心を映した素敵なシーンだ。

周りの人たちも素敵。
永遠の22歳(って言った瞬間、笑ってしまった)本当はシングルマザーでいろいろ大変なのに、いとの心をほぐしていく先輩メイド、葛西幸子(黒川芽以)。浅虫海岸での慰安旅行。ここでの会話がまた、いとの心をほぐす。
同じく先輩メイドの智美(横田真悠) 漫画家志望で東京行きを目指している。上昇志向のように見えて友達もいなくて絵を描くだけと、いとに感情をぶつける。それが、またお互いの心を開いていく。
珈琲店・店長、工藤(中島歩)の結果的に信頼のおける立場に。接し方が丁寧。
いとの祖母 ハツヱ(西川洋子)
娘(いとの母)、いとに三味線を教える(伝える)。実際に高橋竹山の最初の弟子ということを後で知ってびっくり。演者としても、いとと耕一の良き理解者にしてメンター。まなざしが優しい。玄関で必ず干し餅を出してくるところが、また良き味。
いとが青森空襲の記念館に行くシーン。
(監督が以前に「イヨマンテ」を見たときに打ちのめされたのと同様の衝撃を、いとに感じてもらいたいとイメージした映画)『女と男のいる舗道』で、アンナ・カリーナ演じる主人公ナナが『裁かれるジャンヌ』を観て涙を流す、あれくらい美しくて衝撃的なシーンが撮れないものかと思って。(監督インタビューより)
そして、ラスト。
リニューアルしたメイド珈琲店での三味線ライヴ。
「...わあは、好ぎだように弾ぎます」
満を持して、どっしりと力強く三味線を弾く、いと。
そのまま、岩木山への父、耕一との登山シーンへ。
津軽平野を見下ろし、家のある方へ手を振る。
「わあだぢ。ちっちぇな」
逆に岩木山に手を振る、いと。

横浜聡子監督のすべての人に向けるまなざしは、そのまま見ている観客にも素直に届く。最初に書いた通り、それは初見から時間が経った今もじわ〜っと心の中に残る。


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Memo2
パンフレット
48P 
デザイン : クスハラ デザイン
監督&キャスト インタビュー、コメント。
スタッフプロフィール。プロダクションノート。
ロケ地マップ。
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シナリオ掲載(完成台本)
欄外で津軽弁を標準語に翻訳(?)してくれていて、例えば「でったらだ」「ほんずなし」や「か。け(ほら、食べろ)」とか初見(聴き)では絶対わからないし..(会話の雰囲気で伝わっていて、それがまた魅力でもありますが)


 









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2021-08-28

『オールド(Old)』M・ナイト・シャマラン監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、トーマサイン・マッケンジー、他

オールド
OLD
注 : 内容、ラストに盛大に触れています。グラフィックノベル原作は未読。

監督 : M・ナイト・シャマラン
原作 : フレデリック・ペータース
出演 : ガエル・ガルシア・ベルナル
ヴィッキー・クリープス
ルーファス・シーウェル
アレックス・ウルフ
トーマサイン・マッケンジー、他

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Memo1
さて、今回の「わくわくシャマランランド」は「どっちのシャマランショー」
30分で1年が過ぎる岸壁に囲まれた謎のビーチ。
限定された空間。招待された人々はどこか妙な言動やそぶり。
砂浜に先に訪れていた人が座っている。
もう、その設定だけでシャマランランドである。特に限定空間。
(ヴィレッジもサインもスプリットも)
さらにホテルに到着したガイとプリスカ夫妻、二人の子供を出迎えた際のマネージャーとアテンダー。もう見るからに胡散臭い笑みをもらして「ようこそ」「先にお聞きしたお好みに合わせて作ったスペシャルカクテルでございます」
(これが、キーアイテム)
案内されたビーチへの運転手が(お馴染み)シャマラン監督。
車を止めてビーチへの道へ入っていくところに謎の石が四つ。(ここが境界、目印)
未来志向のガイと後ろ向き過去にこだわるプリスカ(仕事が博物館員)。
それ故に(別の理由にプリスカは腫瘍がある)喧嘩が絶えない。
そして、招待されていた他の人たち。
最初からビーチにいたラッパーのミッドサイズ・セダンは血が止まらない病気。ドクターのチャールズは記憶障害とそこから引き起こされる妄想。その妻は骨に異常がある(後半の折れては治り、折れては治りで「遊星からの物体X」状態で迫ってくるシーン..怖っ)。パトリシアはホテル到着時にも起こっていた癲癇(てんかん)。
プリスカは前述の腫瘍(怖いのは時間が早く進むため良性だった腫瘍が悪性になり、みるみる大きくなっていくところ。傷が直ぐに治るところを逆手にとってドクターに手術を施してもらって助かる)
その後、夫は目が見えなくなっていきプリスカは耳が聞こえなくなる(これは老衰?後述・薬の副作用?)
徐々に老いていく二人。
寄り添いながら…
「今、ここの場所がいい」

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Memo2
脱出手段
元の道を引き返すと身体が対応できずに気絶してしまう。
周囲を岸壁。登ってくが、やはり上に行くに従って身体が順応できず15歳になったチャールズの娘は落下してしまう。
海からの脱出。波が荒いが泳ぎが得意だということでジャリンが試みるが同じ結果に…
6歳から中年(24時間で48歳なので、丸一日経っていないとして40歳前後?)を体験するガイとプリスカ夫妻の子供、トレントとマドックス。
到着時に知り合ったホテルマネージャーの甥っ子(ん?!甥っ子?)から、もらった暗号が脱出のヒントに。
「叔父さんは珊瑚礁が嫌い」
(マドックスが思いついていた金属で身体全体を覆えばビーチと外界との耐性が緩むはず)
珊瑚を潜っていけば…
やがて判明する製薬会社による治験会場としてのビーチの意味。
確かに新薬の治験に必要な時間は何年もの年数がかかるが、このビーチでは二日間でほとんどの人が亡くなってしまう。まさにうってつけな訳だ。
(ウェルカムドリンクが新薬)
時折、山の上に見えていたのは製薬会社の監視者(シャマラン監督、オイシイ役)
どんでん返し云々がずっと言われ続けるシャマラン監督だが実際は、そんなに驚くような「ちゃぶ台返し」や「オチ」がある作品ばかりではなく、ほとんどが途中の見せ方に魅力がある。
本作は、そう言った意味でも正攻法の語り口で飽きずにラストまで見られて面白かった。
(何故?このようなビーチが…については、まあ、そういう場所があったというぐらいで良いと思う。何でもかんでも説明付き過ぎると理詰めになりかねないので)
磁場がテロメアに直接作用、とかいろいろ理由は作れそうですけど。

Old

Memo3
スプリット、ミスターガラスに続いてFilmographによるタイトルデザイン(Main Title Sequence & Main on End Title Sequence)。文字によるモーショングラフィック・タイトルシークエンスが最近のシャマラン傾向。
他の監督作品に先日公開「プロミシング・ヤング・ウーマン」やジェームズ・ワン監督関連多数。
タイトル部分の動画あり
http://www.filmograph.tv/project/old
撮影監督もスプリット、ミスターガラスに引き続きマイク・ジオラキス。「イット・フォローズ」「アス」なども。こちらもシャマラン監督に合ったルック。顔の撮り方がよいなぁ。あとスコープサイズの使い方。
『DVD&動画配信でーた』シャマラン監督・興収&批評&自己愛の変遷グラフが「いつみても波乱万丈」みたいだ。
シャマラン監督twitterをたどると2020年9月27日が撮影ファーストショットの日になっている。それから考えると1年足らずでポスプロ含め、完成させているのだから結構早いかも。
マーロンブランドとジャックニコルソンが出ていた映画。判った人はスクリーンに向かって、それ「ミズーリブレイク」やー、って呟いたと思う。(タイトルの意味がミズーリ川流域のエリアを指しているので、ビーチと関連してチャールズが記憶の底から思い出したのかも?)









 

 

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2021-08-22

『子供はわかってあげない』田島列島原作、沖田修一監督、上白石萌歌、細田佳央太、豊川悦司、千葉雄大、他

子供はわかってあげない

原作 : 田島列島
監督 : 沖田修一
出演 : 上白石萌歌
細田佳央太、豊川悦司
千葉雄大、斉藤由貴
古舘寛治、他


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Memo1
それにしても、ひたすら上白石萌歌さんが笑っていて、こちらも最後まで、ずーっとニコニコして見てた。
のびのびとした屈託のなさと勢い、間合い、身体性。
画面からはみ出しております(実は今の家族のことを大事に思っていて、ずっと深いところにしまい込んでいるものもある)
オープニング。
いきなり始まるアニメ。しかも超ニッチな左官少女って 笑
このアニメを見ている美波と父親、走り回る弟、寿司を団扇(このうちわ、後も出てくる)であおぐ母。
ここをフィックスカメラの長回しで捉える(仲の良さや関係性も伝わる楽しい撮り方)
ラスト、屋上での告白シーン。原作19話。
「もじくん、あのね、私、もじくぶふぉう」そのまま、やるのかなぁって思ったら、ほぼそのままで嬉!吹き出し方がナイスタイミング。あと、見ないように(見ると笑う)手で目を隠す感じも抜群の見せ方。
豊川悦司、かなり癖あり父親役。
顔の日焼けがいかにも雑で、あー、この海岸前の家で暮らしてる感ビシバシ。
ある意味、原作越えの怪演。
ブーメランタイプの競泳水着を着て仁王立ちする父
「僕にも、泳ぎ、教えてくれよ」
(これではアブナイオヤジやん 笑)
家の前にテント張ったり、コロッケ買うついでにテレビ買ってきたり、なんだかいろいろ変だけど「娘と過ごせることが楽しい」感、出てて良いわ〜。KOTEKOのBOXセット買ってきてるし。
水泳部顧問の役名が「な」って、そのままやー。
ちなみに原作にも出てます。(さすがに映画では役名あるかと思ったら、脚本でもやっぱり「な」でした 笑)
タルンドル朔田とか細かいフレーズも。母、由起の「OK牧場」も。
もしかしてPG12って「海苔巻きちんちん」のことか?って思ったら未成年飲酒の件ね。
これもエンドロールの一番最後に「お酒は20歳になってから」の習字で補足していて、見事なオチ。

Kodomo

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パンフレット。
原作の田島列島さん描き下ろしイラスト
「屋上のふたり、その後」あり。
本編でもじくんが砂浜に「朔田美波」と描く場面、それに対して終盤、実はもじくんに会いたい美波がプールサイドに水で「もじくん」と描いた、そのシーンが描かれています。
撮影シナリオ掲載。
断り書き通り本編には無いシーンも。
同学年の水泳部、宮島が美波にパピコを膝で二つ割りして渡すところとかも。
(ほとんど膝蹴りみたいだが、あれでいいのか 笑)
あと「じゃりじゃり〜」
そして宮島との挨拶。「アデュー」は上白石萌歌さんが歌手の時に使うadieuのことだと思うけど、ちょっと小粋な小ネタ。
原作からの抽出度が絶妙。
もじくんの兄、明大の探偵シーン(父親探しと教祖が教団のお金持逃げ事件を同時に追う)がもっと多くあるけれど、父と娘の夏冒険物語&ガールミーツボーイものにしたところがシンプル&大正解。
沖田監督作品はほぼリアルタイムで公開時に見ているけれど(昨年の「おらおらでひとりいぐも」はお気に入りベストテンに)本作は格別な面白さがある。
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原作「あとがき」によると趣味で長編を描いてみようと思い立ってできたのが『子供はわかってあげない』しかも、これは趣味だと自分に言い聞かせなければどうにも描き出せなかった、とも。
「これは趣味だ これは趣味だ これは趣味だ 逃げちゃダメだ」には吹いた。
(サウンドトラック/牛尾憲輔)
サブスク配信されているので鑑賞後、聴ける方「走れ!!!」を是非。
おぉぉっ!ってなる。「じゃりじゃり〜」
もじくんが連絡が取れなくなった美波のことを案じて江虫浜に向かうシーンでかかる曲が、お!これって「ラブストーリーは突然に」じゃないと思ったらサントラ曲名が「左官のこころは突然に」
しかも脚本では→シーンNo.77 門司、トレンディードラマみたいに走る。
映画『子供はわかってあげない』劇中アニメ
【魔法左官少女バッファローKOTEKO】本編映像&ED
https://www.youtube.com/watch?v=7smP_TUKASY&t=1s




 

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「…チェーホフはおそろしい」『ドライブ・マイ・カー(Drive My Car)』村上春樹原作、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、他

ドライブ・マイ・カー
Drive My Car

原作 : 村上春樹
監督 : 濱口竜介
出演 : 西島秀俊、三浦透子
岡田将生、霧島れいか、他

Mycar

Memo1
何を足し何を削るか、そして膨らませるか。
村上春樹原作短編小説集『女のいない男たち』
(曰くコンセプト・アルバムのようなもの)。
骨格となるドライブ・マイ・カー。
サブテキストしての木野、シェラザード。
そしてチェーホフ「ワーニャ伯父さん」
(原作では「ヴァーニャ伯父」一行だけ記述)。
テキスト(言葉/会話)が演者を現実を侵食していく。
「…チェーホフはおそろしい」
車の中という密室。
そして、これは映画でもあり演者を写し取るでもある。
何を写し、何を映さないか。
劇中で用いられる他言語。
それは最初の舞台シーン「ゴドーを待ちながら」で提示される。
家福(日本語)ともう一人の演者(ホリゾントに字幕でインドネシア語/英語)
さらには韓国手話も。
ラスト。
パク・ユムリ演じるイ・ユナ。
失意のワーニャ(演劇祭で結果、演じることとなった家福)を励ますソーニャ(イ・ユナ)。
肩を抱くような形で後ろから手話で語る。
ここは「音」ではない形で。
「生きていかなければ」

構成は基本的に「東京編」と「広島編」
さらに : Codaとして「北海道編」「韓国編」
「東京編」
まず家福の妻、音とのセックスシーン。まだ仄暗く顔が見えない。
音から発生する物語。
それを家福は翌日、サーブの中で聞かせ直す。
ある日、予定していたウラジオストック便が飛ばず、仕方なく家に戻った家福が目撃する音の浮気現場。
に映った、その姿を家福は見る。
(角度からすると気づいていないのだろうか?)
これは後に広島でのオーディションシーンで(音の相手であろう)高槻(岡田将生)とジャニス・チャンが演じるキスシーンのと繋がる。

ある時、告げられる「話したいことがあるの」
しかし、家福はその続きを聞くことができないまま、音を失ってしまう。
ここでキャストクレジットが現れる(端正なフォント選び)
「広島編」
ドライバーとして雇われるみさき。
最初は自分にとって大事なひとりの空間を他人に任せられないと固辞するが、みさきの見事な運転、特に車線変更(音が運転している時に「あの場合はすぐに車線変更しないと」と細かい指摘をしていた)を見て任せることにする。
始まった演劇祭オーディション、
音の浮気相手のひとりだとわかっている高槻をワーニャへとキャスティングする。

(ここからが本作の肝の部分、濱口メソッドを再現しているとも言われているリハーサルシーンへと繋がるが、また再構築して追記で)

トラブルが多く、かなり不気味さを漂わせる高槻。
その高槻から聞かされる妻「音」の別の側面、物語の続き。
サーブの密室の中で初めて直接対峙する家福と高槻。
この時カメラは切り返しショットでふたりの顔を捉える。
「やつめうなぎの話の続き」を話しながら、ぼわっと浮かび上がる高槻の顔がホラー(怪異譚)のようだ。
「北海道編」
エッ?!
マジで…北海道まで車で...
(と、思ったが、この距離、時間が必要)
家福にとっては亡くなった娘が生きていれば、みさきと同じ年齢でもある。
やがて、(安直な言葉で言うならば)再生の旅が終わる。
3時間、スクリーンに映し出される出来事を観察するように見続けた我々(観客)が最後に辿りつく希望あるラスト。
みさきがスーパーで買い物をしている。ハングルが書かれた商品。
マスクをつけている。赤いサーブ。後部座席に犬の姿が。
はたして、これは家福から譲り受けたものなのか、どうなのかはわからないが後ろから顔を覗かせる犬とみさきの笑みをフロントガラス越しに捉えたショットは至福な瞬間をあたえてくれる。

Main

Memo2
そうか!三浦透子さん、2代目なっちゃんだったのか(知らなかった)
赤いサーブをロングショットで捉えた走行シーンや夜間など含め、あまりにも美しい赤で何か記載はないかとパンフレットチェック。
カラーグレーディングはIMAGICA Lab.のカラリスト北山夢人氏と判明。
本当に凄いので、これからご覧になる方は端正な色調も是非。
(それは朱色に寄った赤ではなく赤色)(Y+Mでもなく)

Car
Memo3
パンフレット。
物語、監督インタビュー、キャスト、批評、
リファレンス(ワーニャ伯父さんやサーブ900について)
ロケ地ガイド。
デザイン : 岡野登/柴田理子(サイファ) 32P
そういえば『ドライブ・マイ・カー』と同じ村上春樹・原作、トラン・アン・ユン監督『ノルウェイの森』パンフレット(レコードジャケットスタイル)も岡野登さんデザインによるもの。





 

 

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2021-08-08

一瞬の夏。『サマーフィルムにのって』松本壮史監督、伊藤万理華、河合優実、祷キララ、金子大地、他

サマーフィルムにのって

監督 : 松本壮史
脚本 : 三浦直之松本壮史

出演 :
伊藤万理華
河合優実
祷キララ
金子大地
小日向星一
池田永吉
篠田諒
甲田まひる
ゆうたろう
篠原悠伸
板橋駿谷

Summer


Memo1
そうそうそうそう!こんなノリ、こんな感じ。
昔、学園祭クラスで映画作った時、河原で乱闘シーンを撮っていたら、あまりにリアルすぎたのか近所の人が通報して警察来たこと思い出した。ストーリーは忘れてしまったけど、こういった製作途中の楽しさはよーく覚えてる。
撮り直しがきかない中の一発本番。上手く撮れたかは現像が出来上がるのを待つしかない神のみぞ知る所業。
そして、本作ではキラキラ映画班ともにMac Bookで行っていた編集も、当時は8ミリフィルムをスプライシングテープで切り貼りする超アナログ作業。
それにしても昨今の映研、あー!スマホで撮るのかぁぁぁ。
ハダシ監督、羨ましいー、撮り放題。
『映像研には手を出すな!』と『サマーフィルムにのって』の3人。
どちらもよくぞ集めた、この仲間。
中でも浅草氏(齋藤飛鳥)とハダシ(伊藤万理華)。
おぉっ!どちらも乃木坂繋がりではないか。(『映像研~』はドラマ版のこと)
伊藤万理華の動きというか身体性、表情の豊かさは凄い。
どーすれば、あんな漫画みたいな動きができるのか。
肩がぐっと上がって力んだ姿が、いかにも時代劇マニアの映画監督を体現している。
河合優実は「佐々木、イン、マイマイン」で知ったけど、ハダシのアシスト(映画も凛太郎との恋も)を少ない台詞でつないでいく。
祷キララの「本当は私もキラキラ恋愛映画に出たい」を隠しての「お、おぅ」といったハダシに合わせた気概もうまい。
笑ったシーン
ラストの決闘シーンを撮っているとぶーんぶーんと邪魔な音が入る。
その先を辿っていくと花鈴らのキラキラ恋愛映画班が波打ち際で撮影中。
海側にから、ふたりをドローンが。
「えっ?!ドローン?このシーンに必要?」
ラストの凛太郎を切ってしまうと映画が終わる、すると未来の映画も終わってしまうということでの、エッ?!、え、演劇、みたいな唐突なオチも好きだ(噂の壁ドンw)。
設定、整合性を超えた宇宙の真理「これでいいのだ」を体現している。
プロが撮った高校生の映研作品とでも呼べばいいのだろうか、このフレームはみ出す楽しさはなかなか撮れない。
もちろん演者が、まるで本当に「映画、撮るよー」と声をかけ、巻き込んで、集まった仲間たちになっているのも本作、多幸感の要因。

Film

Memo2
パンフレット。
全36ページ。
「あれから」というタイトルのコミック(4ページ)載ってる!
ハダシ、ビート板、ブルーハワイ。
卒業式当日のお話。
凛太郎もデコチャリも野球部補欠二人組も老け顔ダディボーイもみんなも出てる。
ブルーハワイ役の祷キララの公開当日のブログがものすごくよいので、見て。
こんなに素直に初日の気持ちを綴った文章初めて読んだ。
https://lineblog.me/inokila/archives/2668032.html


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『サイダーのように言葉が湧き上がる(Words Bubble Up Like Soda Pop)』イシグロキョウヘイ監督、杉咲花、市川染五郎、他

サイダーのように言葉が湧き上がる
Words Bubble Up Like Soda Pop

監督 : イシグロキョウヘイ
出演 : 杉咲花市川染五郎、潘めぐみ
花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛
諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾
山寺宏一、井上喜久子


Soda

Memo1
膨大なメイキング映像が公式に公開されていますが、未見の上で書いてます。
夕暮れ時にポッと灯された街灯の向こう側に見える"もくもく雲"を見たとき、永井博、鈴木英人、わたせせいぞうよりも先に吉田博「日本アルプス十二題」を思いだした。
そのあたりのこと、鑑賞後インタビューを読むと触れらていて嬉しかった。
キネ旬8月上旬号。イシグロキョウヘイ監督インタビュー「あと、80年代だけでなく、大正時代に独創的な風景版画家として活躍した吉田博、川瀬巴水といった作家のテイストも取り入れています」
杉咲花、市川染五郎ふたりの声がものすごくよい。
「答えは最初から出ている」と書くと推理小説みたいですが、ボーイミーツガールふたりの恋の行方ともう一つの軸、フジヤマのレコード探し。「陽だまり」の時計が早くから背景に写っていて「あれ?レコード」と観客は気づくような展開(自分は気づいた、というか昔、こんな時計あったなぁと思ったからかも)
「あかん、割るで割るで(関西弁)」と思っていたらーの、あー、やっぱり割れたー。絶対割ると思って見ていたら案の定、割ってしまうところも世代ギャップありきでよかった。

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Memo2
昨年公開(2020年5月15日・上記画像)だった本作が1年遅れたことによって逆に(パンフレットでも触れている)マスクのことや80年代シティポップスの絶対的浸透と支持。大滝詠一『A LONG VACATION』40周年盤とサブスク解禁
『喫茶店で松本隆さんに聞いたこと』に出てきた「ときのふるい」ならぬ「ときのはからい(時の計らい)」とでも呼ぶべきか。
『東京人』2021年4月号
シティ・ポップが生まれたまち
レコード探しの場面で幾つかの80年代レコードジャケットが。
すぐにわかる山下達郎「FOR YOU」(1982年発売/イラスト 鈴木英人)
シティポップ(いわゆる東京=シティ)と地方都市(郊外)の対比、描き方としても秀逸な作品。

Memo3
モノローグを使わないための装置
俳句(ラップの始祖)を詠むこと、タギング(グラフィティ的落書き)によって俳句を外界に向けて視覚的に見せることがものすごく効果的。
SNSは基本的にバックライトに浮かぶ文字を読むため(あるいはそこに書くため)寡黙なる一歩通行的意見と完結を生み出しやすいので、映画やドラマで扱う際の見せ方は難しい(スペースやclubhouseなどの音声SNSもクローズ度合いが高いので、まだ過渡期)
その点、本作はスマホの画面に映った文字を「俳句」として声に出して読む(これが大きい!)
その俳句を高校生20人くらい集まってもらって句会を開いた中から選んでいる点も大きい。感性のズレを考えると、ここも本作の本当のキラキラ度が出た所以。
「夕暮れのフライングめく夏灯」
「めく、が可愛い」
「マジか?!」
(その際の様子がパンフに書かれていて楽しい)
誠実なものづくりという点で片渕須直監督のこと、思いだしたけど、イシグロ監督も夫婦で作品に携わっているという点、何か関係あるかも?(あ、もちろん当事者ではないのでわかりませんが方向性や根幹部分の軌道修正がとりやすいということあるのかもしれないなぁ、と。ふと)


 

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『竜とそばかすの姫』細田守監督、中村佳穂、佐藤健、成田凌、幾田りら、他

竜とそばかすの姫

監督 : 細田守
キャスト : 中村佳穂成田凌
佐藤健幾田りら、染谷将太
玉城ティナ、森川智之、津田健次郎
小山茉美、宮野真守、森山良子
清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世


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Memo1
元々、細田守監督は訴えたい主題などなく描きたい世界(よくインタビューで目にする誰も見たことのない世界、もしかしたら主題隠しの可能性もあるが今後の作品を見ていかないと、まだ断定の域ではない)があるだけといった作家と思っているので『未来のミライ』はイマイチだったけれど、本作は逸脱したエモーション(中村佳穂の歌)が物語の基盤やディティールやセンシティブな部分の雑さを覆い隠したところがあって結果プラスに68%動いた。
その辺が賛否分かれる世評になっているのでは?
主人公のひとりに全ての負わせるパターンもいつも通りだし。
特にひとりで行かないでしょーという締めへのシークエンスは特に。
周りの見た友人に聞くと『未来のミライ』の方がよかった人は本作がイマイチ、嫌いって言ってて、そこ掘り下げていくと見えてくるかも。
ツッコミどころベストテンなどをやったらすぐに埋まるぐらいツッコミできるけど、そこは前述プラス後述通り。
(あんな数のフォロワーがいたら、竜/の居場所、すぐに特定できそうとか、他のAs扱いが雑とか、歌は日本語?とか)
12年後のインターネット世界とリアルワールドを描いている部分は成功しているのに、家族の問題(父と娘)や限界集落や同調圧力やDV(ここ、センシティブな問題につき本作での扱い雑すぎ)と、いろいろ詰め込みすぎている感も。
”竜がそんなに迫害を受けるほどの迷惑や犯罪を犯しているように見えないのに何故忌嫌われてしまっているのか”問題もある。
そこは醜悪という意味合いとも違う。
実はすべての元凶たる「悪」は実態を暴く権限(アンベイル=正体を暴く)を持ったジャスティス(自警団)とジャスティン側では?と思わせる節も多々ある。(そもそも権限を渡した5人の賢者って何?実在?そしてジャスティンをサポートするスポンサーロゴの醜いこと醜いこと)
すべて説明不足だが、ジャスティンはパンフレットには一切その姿を現していないが隠し意図?(単純にネタバレなら竜の記載ページ、注釈入りでネタバレしているし)

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ボディシェアリングのデバイス、よいなーと思ってチェックしていたら細田監督、<U>のアバター構築の際、玉城絵美さんに取材してたのですね。数年前に見た「セブンルール」の衝撃を思い出した。
途中で少し色彩設計が変わるシーン。
背景美術がカートゥーン・サルーンと聞いて納得(しかし、他のジン・キム、エリック・ウォン含めいろいろ豪華)
ひとかわむいたろうとぐっとこらえ丸、というネーミング。
このキャラクター含めイラストレーターとのコラボも多々。
声優に中村佳穂や幾田りら、音楽も「音楽村」を使っての作業含め、多種多様な方面から参加している。これ自体がリアル「U」でもある?
ペギースーって出てきたときにコッポラ監督の映画を思い出してしまった。
millennium paradeに参加しているermhoiがもう一人の歌姫というところにも本作における「歌」の重要性を感じた。

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パンフレットと入場者配布ステッカー(裏面にSpotifyプレイリストQRコード)。
パンフに劇中で歌われる楽曲の歌詞掲載あり(これは絶対的に入れたと予想)。
この歌詞が後で読むと心情がわかるのだが、それを字幕で入れてしまうのも違ってくるし…(逆に海外マーケットでは堂々と字幕が使える。そう、よく洋画で歌詞に字幕が必要な作品があるように)
R4

Memo4 蛇足
(番外編或いは細田作品放り投げに対しての耐性の話)
拓郎さんの(もう今では絶対に歌わないであろう)『ファミリー』や『望みを捨てろ』を70年代から80年代にかけて聴いてきたので、細田作品の一連の作品の放り投げ感への耐性があるので大丈夫なのかな、と。「My family」に続いて「ひとりであることに変わりなし」「ひとつになれないお互いの」や「ひとりになれない ひとりだから」「最後はいやでも ひとりだから」とか。(「望みを捨てろ」は岡本おさみ作詞)



 

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