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2021-08-08

『サイダーのように言葉が湧き上がる(Words Bubble Up Like Soda Pop)』イシグロキョウヘイ監督、杉咲花、市川染五郎、他

サイダーのように言葉が湧き上がる
Words Bubble Up Like Soda Pop

監督 : イシグロキョウヘイ
出演 : 杉咲花市川染五郎、潘めぐみ
花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛
諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾
山寺宏一、井上喜久子


Soda

Memo1
膨大なメイキング映像が公式に公開されていますが、未見の上で書いてます。
夕暮れ時にポッと灯された街灯の向こう側に見える"もくもく雲"を見たとき、永井博、鈴木英人、わたせせいぞうよりも先に吉田博「日本アルプス十二題」を思いだした。
そのあたりのこと、鑑賞後インタビューを読むと触れらていて嬉しかった。
キネ旬8月上旬号。イシグロキョウヘイ監督インタビュー「あと、80年代だけでなく、大正時代に独創的な風景版画家として活躍した吉田博、川瀬巴水といった作家のテイストも取り入れています」
杉咲花、市川染五郎ふたりの声がものすごくよい。
「答えは最初から出ている」と書くと推理小説みたいですが、ボーイミーツガールふたりの恋の行方ともう一つの軸、フジヤマのレコード探し。「陽だまり」の時計が早くから背景に写っていて「あれ?レコード」と観客は気づくような展開(自分は気づいた、というか昔、こんな時計あったなぁと思ったからかも)
「あかん、割るで割るで(関西弁)」と思っていたらーの、あー、やっぱり割れたー。絶対割ると思って見ていたら案の定、割ってしまうところも世代ギャップありきでよかった。

Soda2020

Memo2
昨年公開(2020年5月15日・上記画像)だった本作が1年遅れたことによって逆に(パンフレットでも触れている)マスクのことや80年代シティポップスの絶対的浸透と支持。大滝詠一『A LONG VACATION』40周年盤とサブスク解禁
『喫茶店で松本隆さんに聞いたこと』に出てきた「ときのふるい」ならぬ「ときのはからい(時の計らい)」とでも呼ぶべきか。
『東京人』2021年4月号
シティ・ポップが生まれたまち
レコード探しの場面で幾つかの80年代レコードジャケットが。
すぐにわかる山下達郎「FOR YOU」(1982年発売/イラスト 鈴木英人)
シティポップ(いわゆる東京=シティ)と地方都市(郊外)の対比、描き方としても秀逸な作品。

Memo3
モノローグを使わないための装置
俳句(ラップの始祖)を詠むこと、タギング(グラフィティ的落書き)によって俳句を外界に向けて視覚的に見せることがものすごく効果的。
SNSは基本的にバックライトに浮かぶ文字を読むため(あるいはそこに書くため)寡黙なる一歩通行的意見と完結を生み出しやすいので、映画やドラマで扱う際の見せ方は難しい(スペースやclubhouseなどの音声SNSもクローズ度合いが高いので、まだ過渡期)
その点、本作はスマホの画面に映った文字を「俳句」として声に出して読む(これが大きい!)
その俳句を高校生20人くらい集まってもらって句会を開いた中から選んでいる点も大きい。感性のズレを考えると、ここも本作の本当のキラキラ度が出た所以。
「夕暮れのフライングめく夏灯」
「めく、が可愛い」
「マジか?!」
(その際の様子がパンフに書かれていて楽しい)
誠実なものづくりという点で片渕須直監督のこと、思いだしたけど、イシグロ監督も夫婦で作品に携わっているという点、何か関係あるかも?(あ、もちろん当事者ではないのでわかりませんが方向性や根幹部分の軌道修正がとりやすいということあるのかもしれないなぁ、と。ふと)


 

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