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2021-09-30

『空白(Intolerance)』吉田恵輔監督、古田新太、松坂桃李、田畑智子、片岡礼子、寺島しのぶ、伊東蒼、藤原季節、他

空白
Intolerance

監督・脚本 : 吉田恵輔
出演 : 古田新太
松坂桃李
田畑智子
藤原季節
趣里
伊東蒼
片岡礼子
寺島しのぶ

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Memo1
英タイトル「Intolerance」と示すように「不寛容さ」について語られた映画。
100年以上前に撮られたD・W・グリフィス監督同タイトル作品も迫害や無実の罪を起こす心の狭さが描かれていた。
しかし、本作、ほのかに心が変わる瞬間も過ぎり、そこは閉塞感からの出口で実はヒントなのかもしれない。
「寛容さ」「赦し」への道標。
「負の連鎖」とも違う「落とし所」「怒りの納め所」が、わからぬが故の添田充(古田新太)の「あたり散らし」「拳のふるい方」は、周囲までをも歪め始めてしまう。その描き方の容赦なさ。
「普段から、ボランティアもしてるし、ちゃんとして生きてます」と周囲に「善意の押し売り」と受け取られない空気を醸し出しているスーパーアオヤギのパート店員、草加部麻子(寺島しのぶ)。
店長・青柳(松坂桃李)をずっと気にかけている(というよりも気がある。腕、しっかりしてるよぉ〜と触りにいくシーン。困った青柳の反応)。その割に同僚の店員には、ボランティアを手伝ってもらってるにもかかわらず態度が厳しい。
当事者でない人、特に学校側の対応。もしかするとそんな話はなかったかもしれないのに「以前、卒業生のお姉さんが、あそこのスーパーで痴漢に云々」と嘘でもなんでもよいから火の粉を払うような言動も。
添田の元妻・松本翔子を田畑智子。
吉田恵輔監督『さんかく』以来11年ぶりの出演。
添田を目覚めさせるのは、事故を起こした(呵責の念から、というよりも真面目な気質から自殺してしまう)娘の母親(片岡礼子)からの「娘を許してやってはもらえませんか」という、愛情の籠もった言葉。その態度。
それを機に物語は少し転調する。
「自分は娘のことを何も知らなかったんじゃないのか」

誰かは知らないところで見てくれている。
(ここ、本作で最も好きなシーン)
青柳を救う言葉が全く予想もしないところからかけられる。
スーパーを閉め工事現場の警備員をしている。
通りがかった若いトラック運転手。
「あの、すいません」
「スーパーアオヤギの店長さんですよね」
「店長の唐揚げ弁当、俺、好きだったんスよ」
「また、弁当屋さんでも始めてくださいよ。そしたら、俺、買いに行きますから」
「おつかれさまでした」
その青柳を慕い同じ船に乗って漁師をする野木(藤原季節)
(彼も非常に良い)
「俺、充さんが父親だったらキツイッすわ」
そう言いながらも実は一番気を遣って添田のことを見守っている。ラスト近くでわかることは父親がひとりで海に出て亡くなっていたということ。手を怪我した上に漁を続ける添田をまた失いたくないということ。
終盤。タクシーの中での3人。
添田、翔子、野木。
「みんな、どうやって折り合いつけるのかなぁ」
射し込む光が美しい。
そして、ラスト。
娘・花音と同じ雲を見ていたことを知る、添田。
その表情。

前作同様、上映時間が同じ107分。
近年の他映画からすれば短い。しかし、観客への台詞などで説明しきらない想像の余白、静かな余韻を残してくれる秀作。

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パンフレット。
表紙写真とデザインに驚いた。
この場所は表4まで広げると判るのだが事故が起こった、あの道路。
てっきりポスターなどに使われている古田新太と土下座している松坂桃李の写真が使われるものだと思っていただけに意表を突かれた。
そして一撃。
古田新太×松坂桃李対談、監督インタビュー、プロダクションノート、他、掲載。
前作『BLUE/ブルー』に続いて絶妙タイミングで出るメインタイトル。前者はリングへ上がる冒頭、本作は事故が起きた、あの場所、あの位置に、あの文字で。(タイトルといえば『ヒメノア〜ル』のようなビックリするパターンもあった!)
『空白』愛知県蒲郡市ロケ地マップ(PDFダウンロード可)
https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/kankoshoko/kuhaku.html

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『DVD&動画配信でーた』2021年4月号「吉田恵輔全仕事」と10月号「空白」インタビューによると来年公開予定の次回作はふざけまくっていて「あいつの巨匠期間は半年間だったかって思われるのが楽しみです!」「お前は何がしたいんだよ!どっちに行きたいんだって言われる監督では居続けたいですね」と語っていて、これまた楽しみな作品。

 

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2021-09-29

ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる『ムーンライト・シャドウ(Moonlight Shadow)』エドモンド・ヨウ監督、小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、臼田あさ美、他

ムーンライト・シャドウ
Moonlight Shadow

監督 : エドモンド・ヨウ
原作 : 吉本ばなな

出演 : 小松菜奈、宮沢氷魚
佐藤緋美、中原ナナ
吉倉あおい、中野誠也
臼田あさ美

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Memo1
彼岸と此岸を隔てるものは川だ。
そして繋ぐものも、思いをはせるために横たわるのも川だ。
ある種、夢を見ているような感覚。
時間の伸縮で言うならば、それは長い。
印象としての時間と実際の時間。
監督がインタビューで答えている通り、原作よりもかなり肉付けされた登場人物。
小説の映画化が(逆説的な意味ではなく)すごく文学的に見える。
映像から立ち上る行間は詩的だ。
さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)、柊(佐藤緋美)、ゆみこ(中原ナナ)、麗(臼田あさ美)の間に紡がれる時間も、川の流れのごとく、蜘蛛の巣のように地下に張り巡らされた地下の水のように、繋がっているようで変化し続け曖昧な感じだ。
4人が初めて顔を合わせるシーンがとてもよい。
柊とゆみこを見て反応するさつき。
それにしても、さつきを演じた小松菜奈のアップ絵の力強さたるや。(「渇き」以来、ずっとテレビよりも映画での出演作を見ている気がする。それほどにスクリーンが似合う)
出演者以外にも撮影、カラリスト、他、気になることがいっぱい。
そして印象深い音楽のトン・タット・アンさん
(『朝が来る』もそうだったのか、とMUBIをチェックして驚いているところ)
An Ton That
https://mubi.com/cast/an-ton-that
色のトーンについては何度もディスカッションを重ねたという通り、本作の文学性を創り上げる一端となっている。
さつきの赤のコートは(おそらくカラコレで強調されてると想像)強烈なイメージを残す。それはラストで喪失から踏み出して足を進める力強さにも繋がっていく"赤"だ。
ロケ地を調べると劇中、最も印象深い"あの橋"は東京都羽村市「羽村堰下橋(はむらせきしたばし)」
(google Mapに入力するとストリートビューもあるので、まさにあの場所へ飛ぶことができます)
これは、ちょっと行ってみたい。

Moon1
Memo2
パンフレット。
大島依提亜さんによるデザイン。
監督、キャストインタビュー、植本一子エッセイ、シナリオ決定稿(高橋知由)、他
(以下、大島さんのtwitterより引用)
上製本でもはや“本”(スピンやはなぎれも)
さらに表紙は金属的光沢の群青色のパール紙を使用。
谷川俊太郎さん詩/木下龍也さん岡野大嗣さん短歌の書き下ろし等、ナナロク社さん完全編集の中身も本気の書籍です。
これは本です、と語ってくる「もうひとつの仕掛け」が洒落ている。
(購入者のお楽しみとして)
買われた方の映画と映画館の思い出に

吉本ばなな原作本。
リアルタイムで読んだ当時、内容とともに話題となった装丁書籍を探したが見つからず、現在底本とされる新潮文庫版で再読。
「七夕現象」→「月影現象」
「うらら(ひらがな名)」→「麗(うらら)」
と、大きな差異はそれぐらいだ。
喪失からの一歩。
進んでいく「さつき」のモノローグ。
原作も映画もラストは同じ。
等。私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それは止めることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる
Moon2

 

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2021-09-28

『ショック・ドゥ・フューチャー(Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE)』マーク・コリン監督、アルマ・ホドロフスキー、他

ショック・ドゥ・フューチャー
Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE

監督・製作・脚本・音楽 : マーク・コリン
出演 : アルマ・ホドロフスキー
フィリップ・ルボ、クララ・ルチアーニ、
ジェフリー・キャリー、コリーヌ、他


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Memo1
音楽が生まれる瞬間の映画。
このような描き方があったのか!
1日で語るミュージシャンの現実と希望。
78分が短い。もっと浸りたい。
オープニングからドキドキした。
アナがベットから起き上がり、煙草を吸い、一息置いて(神殿にも見える)シンセサイザーの前に座る。
そして、音が流れる。
シンセサイザーとスピーカーが幅いっぱいに映るスコープサイズだからこその高揚感。
アナを演じたのがホドロフスキー監督の孫(祖父がホドロフスキー監督と表記するより、こちらの方がインパクト大きくて、ちょっと驚いた)
監督インタビューでの言葉
先見性を持ち、未来の音楽を予知した女性の物語
劇中、アナとボーカル入れにやってきたクララが打ち解ける(と、いうかハイになって)見るアニメ「シャピ シャポ」音楽がフランソワ・ド・ルーベ(冒険者たち、さらば友よなど)。やはり監督インタビューで知ったが「映画音楽の...」だけではなく「フランスにおける電子音楽の先駆者」といった位置づけもあるのだ。その他、とりわけエレクトロ・ミュージックへの造詣が深いマーク・コリン監督が、だからこその音楽映画といえる。そして、過去映像ドキュメンタリーではなく「映画」として描かれたことは幸せなことだ。
それにしても、この時代のセクハラ、パワハラ度合いは酷い(「男なら時間を守る」ってなんだ?!)。デビューするということはメジャーレーベルからレコードを出すこと。それしか方法がなく、アナもその呪縛の中で嫌な発注者(CM音楽)と会話を交わしていくこととなる。ほとんどの男性が、そのような接し方をする。(最初、リズムボックスを持ってきた部屋の持ち主の友人も「見返り」のような口ぶりを見せるところも)
結局、アナとクララで創り上げた音楽(曲)を大物プロデューサーは鼻にもかけず落胆するアナ。しかし、友人の弁護士が部屋から連れ出して案内してくれた女性歌手のレコーディングを見て、再び音楽へ戻ることとなる。この短い転調と呼べるシーンが、そのままcodaへつながるシンプルな構造。

Futur

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パンフレット
24P。日本語タイトル表記なしなのが素晴らしい。
監督インタビュー、野田勉(ele-king編集長)レビュー
スタッフ、キャスト(と言っても監督とそのバンドのみですが)、他
アナが魅せられたリズムマシン Roland CR-78。
のちにTR-808からTR-909へ(パンフレットで知ったのだが、本作で置き時計表示が9:09でTR-909へのオマージュだったなんて、監督のすご過ぎるエレクトロニック・ミュージック愛)

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こちらはTR-808 誕生から40周年のRoland記念サイト。
歴史はCR-78の紹介からスタート。
https://www.roland.com/jp/promos/roland_tr-808/

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ラストシーン
またシンセサイザーの前に座り曲を作り始めるアナ。
他の人には見えなくても確実に感じている未来の音楽。
そこからエンドロール。
最高。


 

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2021-09-26

『2021 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』西宮市大谷記念美術館。

2021 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
西宮市大谷記念美術館。
1978年から開催されてきた恒例の展覧会(昨年は中止)。

定点観測のような3点画像を。
2点目画像はおなじみの記念撮影パネル。

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西宮市大谷記念美術館に通うようになって既に15年経過。(半券並べて、しみじみ)
今、思うとショーン・タン(2009年当時はシャウン・タン表記)の原画(Tales from Outer Suburbia)を初めて見たのも『ボローニャ国際絵本原画展』でした。
今年(2021年)はロシア、韓国の入選作家が多かったし、印象にも残った。

ここの美術館は庭園も有名。
緑も鮮やかだが、紅葉の季節はまた格別の美しさに。
時節柄、彼岸花が。

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香櫨園駅。
旧駅舎の駅名が保存されています。
真下を流れる夙川。
(春には川沿いのがとても綺麗です)
美術館への道。
(落ち着いた住宅地を通っていく。アスファルト道路ではない所もこだわりありの路)

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