2022-09-05

2021_BEST MOVIE (お気に入り映画)

2021_BEST MOVIE (お気に入り映画)

2021_g

外国映画 ベスト10
① パワー・オブ・ザ・ドッグ
② プロミシング・ヤング・ウーマン
③ ショック・ドゥ・フューチャー
④ ドント・ルック・アップ
⑤ アメリカン・ユートピア
⑥ DUNE
⑦ 逃げた女
⑧ 最後の決闘裁判
⑨ ラストナイト・イン・ソーホー
⑩ エターナルズ

Netflixなど配信系映画は劇場鑑賞作品のみ。

外国映画
マルチバースに存在する10本
天国にちがいない
クーリエ:最高機密の運び屋
モーリタニアン 黒塗りの記録
レミニセンス
クルエラ
マグリナント
ボストン市庁舎
ハンズ・オブ・ゴッド
モンタナの目撃者
1秒先の彼女

2021_n

日本映画 ベスト10
① 子供はわかってあげない
② ひらいて
③ いとみち
④ アイの歌声を聴かせて
⑤ 光を追いかけて
⑥ 君は永遠にそいつらより若い
⑦ 偶然と想像
⑧ あのこは貴族
⑨ アーク Arc
⑩ サマーフィルムにのって

日本映画
マルチバース ベスト10
① すばらしき世界
② ドライブ・マイ・カー
③ 由宇子の天秤
④ 彼女が好きなものは
⑤ 空白
⑥ シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇
⑦ 草の響き
⑧ まともじゃないのは君も一緒
⑨ かそけきサンカヨウ
⑩ SAYONARA AMERICA

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番外編 : 2021年 タイトルデザインベスト10
カッコ内は製作もしくはプロデュース スタジオ
① プロミシング・ヤング・ウーマン(Filmograph)
② ドント・ルック・アップ(Picturemill)
③ マリグナント 狂暴な悪夢(Filmograph)

番外編 : 特別上映
アメリカン・ハニー (京都みなみ会館)
(ハル) 森田芳光監督 (シネリーブル梅田)
白蛇伝 (塚口サンサン劇場)

『アメリカン・ハニー』役名通りスター誕生となったサッシャ・レイン(サーシャ・レーン)をスクリーンで見られたことは最大の収穫。

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番外編 : 自立するパンフレット
『すばらしき世界』
(端正なデザイン、写真)
『ムーンライト・シャドウ』
(売上カードを模した”しおり”付き)
『君は永遠にそいつらより若い』
(パンフレット史上最厚 344P)
全てシナリオ付き!







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2021-10-27

『ひらいて』首藤凛監督、綿矢りさ原作、山田杏奈、作間龍斗、芋生悠、他

ひらいて

監督 : 首藤凛
原作 : 綿矢りさ
出演 :
山田杏奈
作間龍斗
芋生悠
山本浩司
河井青葉
木下あかり
板谷由夏
田中美佐子
萩原聖人、他


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Memo1
今年ベスト級の素晴らしさ。
着地点が見えないまま見続ける3人の関係性の行方。
ラスト、おぉっとなって大森靖子主題歌。完璧。
編集がいいなぁ、と思っていたら監督自身でした。
各ショットの長さ、切り返し。
よいわー。
演者のパワーもそのまま映画のエネルギーとなっている。
たとえの作間龍斗(ジャニーズJr. HiHi Jets)。
よく芸能人が「"オーラを消して"普通にコンビニとか行くよ」と話してる、オーラを消して目立たないように振る舞うが、勉強を教えてもらう同級生らが結構いるし浮いたところもない絶妙感。そして謎の部分。
美雪を演じた芋生悠。声が印象的。
だからこそのモノローグ、ボイスオーバーだと思う。
どこかへ飛んで行ってしまいそうなストーリー展開の熱を冷ます上でも、この声ということは重要。表情がよい。
もしかすると大ベテランと呼べるぐらいに出演作多数の愛役、山田杏奈。推薦楽勝で大学へも行ける成績。学園祭の実行委員もやり、母親との関係性も淡々としているがギクシャクはない。しかし密かに自分だけが、見つけたと思っている、たとえに彼女がいることを知ってしまってからの逸脱。

Hira1

綿矢りさがインタビューで「どうしてこういう設定の物語を描こうと?」の問いに「書きたいと思った瞬間から書いてたような気がします。」
他人、自分以外の人のことを100%理解することなんて不可能なわけで、そう言った意味でも愛の途中から何をやっているのか、何をやりたいのか、わからない暴走モードは凄すぎる。(おそらくは本人も更には演じた山田杏奈にも)
強烈な衝動と"もやもや"の振幅。
そしてディティール。
ヘアアイロンのカットで「こういう描写、映画で初めて見たかも」と思っていたらキネ旬、首藤凛監督へのインタビューで、そのことについて答えていました。
(さらに細かいです)。
パッツンきっちりヘアスタイルや整頓された部屋もぐちゃぐちゃに。
それと爪も。
最初はネイルケアも行い、整っていたのが、たとえが誰か他に好きな人がいることがわかってから徐々にボロボロになっていく。
「爪は、お母さんそっくりね」
(全く気づかない母)


Hira2

美雪が漫画雑誌を読んでいる。
愛が「最近、何か面白いのある?」って聞いて答えた漫画タイトルが『チェンソーマン』
「えっ、それって、どんな話」
「悪魔がね…って、悪魔ってわかる」
奇妙な最初の会話(噛み合いそうもない)から、カラオケボックスでの(見ているこちらが気まずい空気という不思議感覚)近づいていく距離。
(それぞれの選曲、あいみょんとジュディマリ)
そして、美雪がたとえとつきあってることを知ってからの暴走する感情。
ここが意見が分かれるところかもしれない、愛と美雪の関係。
(実はお互いに、ないものの輪郭が見え始めるラブシーン、ベッドシーン)
もはや何をやっているのか自分でもわからなくなっている愛。
たとえの父親が暴力を振るっていて、たとえの身を案じバスでたとえ宅へ向かう美雪。
偶然、遭遇してついていく愛。
美雪の隣に座っている。
「愛ちゃん、何しに行くの?」
(いやいやいやいや、見ているこちらも聞きたいです)
もう、この辺りでは全く意味不明となっている。
それにしても蒲鉾親父(たとえの父)
身勝手気味に相手のことを考えず突き進む、愛の反転姿として描かれているとしても、さらに空気読めなさすぎの蒲鉾話し(怖いわ..)
最初、もこもこヘアスタイルで演じているのが、誰かわからなかった荻原聖人。
「CURE」想起の気味悪さ(かまぼこを切る包丁が…)
パンチ一発、キック一発。
3人それぞれの欠けていたもののパズルが少し埋まり前へと進む。
(愛はたとえと美雪に、たとえは愛に、それぞれかなりきついことを言ってきたのだが、一番傷ついているはずの美雪が綴った、この手紙には心震えた)




「およそ忍耐力など持ち合わせていない人が、たとえ打算であっても私の前で辛抱強くふるまい続けたのなら、ほんのひとときでも、心を開いてくれたのなら、私はその瞬間を忘れることができません。」





Hira3

Memo2
パンフレット。
24ページ/A4変型
出演者インタビュー
監督インタビュー
原作・綿矢りさインタビュー
プロダクションノート

Hiraite

『週刊文春 CINEMA!2021秋号』
期待の監督10人。
首藤凛監督の勢いある文章が他の方と一線を画していて面白い。高校の文化祭で作った映画の話し(他人の20分を奪ったクソみたいな映画に対しての作る事の怖さ)が、そのまま"映画"みたいだ。この熱度が『ひらいて』を生み出したことがわかる。(実際、この年の冬に「ひらいて」に出会っている)
岩永洋さんによる撮影
『ひらいて』『サマーフィルムにのって』『街の上で』と話題作が続く。それぞれの作品によって違う味わいを見せる。
ほぼ、順撮りだということも功を奏している。
余談 >>>
劇場のロビーが高校の廊下みたいになってた。


(文中敬称略)








※密かに補足
Memo2の最後の部分。
バスで愛と美雪が、たとえの家へ行くシーンは原作とは順番が違います。映画ではラスト近くとなる美雪からの手紙「〜私は私はその瞬間を忘れることができません。」を受け取って、愛の家へ行ったタイミングで向かうので「何しに行くの?」にはならず二人、わかった上での行動です。そのあとの、たとえの父親が「女ふたりに助けられて、情けない」からのパンチ一発は原作と同じです。
本作、すごくよくできているのは原作を先に読んでいても受け取る印象が変わらないところ。逆に本作を見て、原作を読んでみることも、また自分なりの広がりが持てて豊かさの増幅が得られるのでは?などと思っています。







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2021-10-21

『最後の決闘裁判(The Last Duel)』リドリー・スコット監督、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック、他

最後の決闘裁判
The Last Duel

監督 : リドリースコット
脚本 : ニコール・ホロフセナー
ベン・アフレック
マット・デイモン
出演 : マット・デイモン
アダム・ドライバー
ジョディ・カマー
ベン・アフレック

Duel

Memo1
各章タイトルカードの出し方(見せ方)が(ある意味)答え。
(10月16日にtwitterへの短評ポストに掲載)
しかも「羅生門」的骨格を利用した「藪の中」ではない現代に問う物語。
巧妙に編まれた脚本。
完璧なキャスティング。
とりわけマルグリットを演じたジョディ・カマーが素晴らしい。
各章、自分の証言部分含め表情、台詞の言い回し、立ち位置、レイプシーンでのル・グリが押し入ってからの明らかに違う動線(2章、3章)を全てを演じ分けている。
冒頭、手伝ってもらいながら着替えているマルグリット。
観客はここでは何が描かれているのかが、わからない。
連れられて台上にあげられる。
そこで初めてタイトルの決闘裁判が行われる場所だということが判明し各章へと移る。
導入部分として凄い。
さらに各章の時間配分がダレることがないようにスピードが上がっていく構成も見事だ。
ジョディ・カマー次回作は再びリドリー・スコット監督。
アナウンスされているリドリースコット監督5本の予定作中の1本、ホアキン・フェニックスがナポレオンを演じる『Kitbag』と、いうことはジョゼフィーヌ役(これは、見たい)
先に記したタイトルカード(第1章、第2章、とそれぞれの物語、或いは言い分。第3章のみ「真実」が画面上に残り、ある意味これが「本当の証言」と強調している。)
ネタバレとは言わないが、見る人それぞれの「発見」の楽しみを奪うかもしれないので鉤括弧付きで(ある意味)と書いたのは本作が「真実」を追求する物語ではないからだ。
暴行は行われたし、3人の人物像もそのままだと思う。
今も変わらぬ男性社会、家父長制に対してのあえて声高ではないように編まれた、しかし確実に心に残る、突き刺さるメッセージ。
当時(14世紀)は、というより夫であるジャン・ド・カルージュの妻、女性に対しての「モノ・所有物」扱いも酷い。勝者となったのち「まるで見世物のように」マルグリットの手を挙げ群衆に晒し者のように引き廻すのだから…
(同じように友人や周囲の人々の裏切り、陰口、事勿れ主義も)

疑問 : ジャン・ド・カルージュの母親がマルグリットをひとりだけ置いて出かけたのは、何か理由があったのか?(ただの嫌がらせだとは思うけれど、ついつい、ル・グリとグル?申し合わせ?とか思ってしまう)
(参考原作、未読なのでこの辺りが書かれているかは不明。見当違い甚だしいかも、です)

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(下記、キネ旬記事より)
1幕と2幕をマット・デイモンとベン・アフレック、3幕を女性の観点からということでニコール・ホロフセナー、と分けて書かれたことも成功の要因だろうなぁ。
それにしても脚本、6週間で書き上げたとは。
キネ旬11月上旬特別号にリドリー・スコット×ジョディ・カマー、ニコール・ホロフセナー×マット・デイモン×ベン・アフレック 脚本家インタビューと作品評(大森さわこ)
パンフレットがないだけに貴重。(敬称略)
このインタビューの締めくくりのベンアフレックの言葉。
「3幕とも描かれているのは明らかにレイプなんだ。何が違うかというとル・グリに取っては、それがレイプだという認識がない、ということ〜中略〜これは反騎士道的な物語なんだ。」

Memo2
タイトルデザイン(Main & End titles)は Matt Curtis
音楽のハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。あまり聞き覚えがないので調べてみると「メタルギアソリッド」シリーズへの共同参加。リドリー・スコット監督とは「プロメテウス」「オデッセイ」ベン・アフレックの監督作品「ザ・タウン」「夜に生きる」も。
『プロメテウス』から次回作『ハウス・オブ・グッチ』まで全てダリウス・ウォルスキーによる撮影。リドリー・スコット監督は決まった撮影監督を得たことによってイメージにあったシーンを作れるようになったのかも。
(本作からの初4K撮影着手も)
「ここは広角で」「ダイナミックさが肝心」指示を出し、マーカーで絵コンテを描くリドリー・スコット監督。
メイキング映像。
https://www.youtube.com/watch?v=ckAWcnthAnE






 

 



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2021-10-18

『草の響き』斎藤久志監督、佐藤泰志原作、東出昌大、奈緒、大東駿介、他

草の響き

監督 : 斎藤久志
原作 : 佐藤泰志
(『きみの鳥はうたえる』所収)
出演 : 東出昌大
奈緒
大東駿介
Kaya
林裕太
三根有葵
利重剛
クノ真季子
室井滋

Kusa3

Memo1
東京が舞台だった佐藤泰志原作を函館ロケに。
それが功を奏している。
作者の実体験が投影された本作において見晴らしの良い公園の土手やベイエリアを走る主人公・工藤和雄(東出昌大)の姿は鮮やかだ。ただ、それも走っていなければならない理由があるのだが。
脚色された点で一番、大きいのは和雄の妻・純子(奈緒)の存在。その事によって親友、佐久間研二(大東俊介)以外の第三者視点が増えた。それと下の世代である彰(Kaya)ら3人との対比も。原作は1979年発表。そういえば(随分以前ですが)読んだ原作、フリスビーとか出てた(そもそも彰は暴走族だったし)。
斎藤久志監督と脚本の加瀬仁美さんが夫婦だったことは、後で知りました(しかも発注時に妊娠されていたことも)。
それだけに本作の物語の運びや、気配、トーンに驚く。
物語の軸は和雄、純子、研二(病院に連れて行くことになる終盤のシーンは凄い)と彰、弘斗(林裕太)、その弘斗の妹・恵美(三根有葵)。運動療法としてランニングをする和雄にいつの間にか彰が並走して付いてくる。(そしてへばりながら弘斗も)。この走るシーンの繋がりが実に上手い描き方だ。見ている側としては「あぁ、これで良くなっていくのかなぁ」と思わせられる。しかし、そうならないのが人の心、精神の見えにくさである。結果、ふたりとも選ぶ道が同じである点も。(結末は違うが)

和雄の治療療養のため、地元である東京を離れ全く友だちも知り合いもいない函館に引っ越した上、淡々と家事をこなしケーブルカーの案内の仕事も行う純子。全く気遣いの無い和雄に対して、その感情のわかりにくさが、ややもするともどかしい。そんな純子が感情を露わにするのが妊娠を告げた時だ。「自分だけ傷ついたような言い方しないでよ」
ふたりはどうやって知り合ったのだ?
(同じ出版社で知り合って結婚したことがラスト近くの台詞でわかる)
「何も言わず、すっと荷物を持ってくれて、後ろ姿見て、あー、わたし、この人のこと好きだなって思って」
「ちょろいかな」
「ちょろいよ」
冒頭、ふたりの会話。
「今日、車運転していると目の前をキタキツネが横切ったんだよ」
「この辺りではキタキツネ、出ないよ」
「えー、そうかなぁ」
ラスト、和雄の自殺未遂、産まれてくる子供のこともあるのだろう、函館の家を引き払い実家に戻る純子。車を運転していて、ふと止まる。キタキツネだ。
(このシーンの感情を表し演じた、奈緒が印象的)
ここで和雄が病院から電話をかけているのだが留守電になっていて会話で終わらないところが素晴らしく良い。どうなるかはわからない。そして、和雄は病院の窓から逃げ出し、走り出す。

Kusa2

Memo2
「草の響き」函館ロケ地マップ
(A4判、両面カラー印刷、三つ折り)
PDFダウンロード リンクあり
https://www.hakobura.jp/info/news/12041.html
パンフレット。28P
監督(斎藤久志)、脚本(加瀬仁美)インタビュー。
批評 (福間健二、小柳帝、篠儀直子、中澤雄大)
ロケ地マップ。
センターの意図的に選ばれた写真。
本編を見た後、なるほどと唸った配置。
工藤和雄(東出昌大)と和子(奈緒)がページの裏表にカラーで。

(文中敬称略)
Kusa1









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2021-10-07

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』堀江貴大監督、黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン、他

先生、私の隣に座っていただけませんか?

監督 : 堀江貴大
出演 : 黒木華
柄本佑
金子大地
奈緒
風吹ジュン、他

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Memo1
これはまさに快作。
ほぼ2時間、気がつけば(主要)登場人物が5人だけ。
あれれ?どうなるの?と、思ったままに物語の船に乗る。
楽しめた。
佐和子(黒木華)の路上教習を俊夫(柄本佑)が車で追いかける場面。
監督はダラダラしたチェイスシーンを撮りたくてヒッチコック監督『めまい』を意識したとパンフレットに出ていた。
なるほど、そう考えると該当シーン、他、いろいろと面白い。
疑心の物語でもあるし。
佐和子の母(風吹ジュン)も、ふたりが実家に帰ってきてから(うっすら)気づいているし(気にかけている)、わかっていないのは俊夫だけ。
不倫相手の佐和子の担当編集者、桜田千佳(奈緒)もバレそうな(バレている)感じを楽しんでいる節さえある。この辺り「あ〜あ」自業自得とはいえ、見ていて思わず笑ってしまう。
さて、話が進んで佐和子の方も教習所・教官、新谷(金子大地)が「隣の席」に座り、ハンドルとアクセルを踏んで一歩踏み出す勇気をあたえてくれる。王子様登場である。この2カップルスタイルは艶話的に寄せてスクリューボールコメディになりそうですが、そこを変速復讐譚にしているところも快作たる所以。(何を考えているのか解りにくい佐和子が最後の最後にビンタといったところも)
実写パートと漫画パートのバランスの面白さ。(劇中漫画はアラタアキ、鳥飼茜)
(ちょっと粗探しのような感想を見たので→)ネームにいきなりペン入れはないとは思うけれど、物語進行上のことば選びとしては、これでOKだと思う。
ラスト。
俊夫のひと言がシナリオだと「嘘」だけど「うっそぉ〜」になっていて言い回し含め、幕引きとしてピッタリ。
そして思い出しましょう。
本作のタイトルは『先生、私の隣に座っていただけませんか?』

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パンフレット。
表紙がそれぞれ佐和子と俊夫に分かれている。
さらに、それぞれにイントロダクションと物語が別々に組まれた構成。
組版も佐和子は横組み、俊夫は縦組み。
対談、コラム、キャスト・スタッフプロフィールなど。
音楽は渡邊琢磨。
なんと!今年公開3作品目(あのこは貴族、いとみち)
佐和子の実家。
セットの間取りとインテリアなどが写真入りで詳細に。
俊夫(柄本佑)が持ち込んだ亀も。
洋風のお屋敷 | CINEmadori シネマドリ |
映画と間取りの素敵なつながり
https://www.athome.co.jp/cinemadori/10275/



 

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写真メモ『ザ・フィンランドデザイン展』兵庫陶芸美術館

ザ・フィンランドデザイン展
兵庫陶芸美術館
2021年9月11日〜11月28日

丹波焼の里に2005年、オープンした兵庫陶芸美術館。
道路の西側に多くの窯が並ぶ。

へルシンキ市立美術館(HAM)監修のもと、マリメッコやフィンレイソンのテキスタイル、カイ・フランクのガラス工芸の他、陶磁器や家具など約250点の作品と約80点の関係資料を展示。
巡回展。(既に会期終了となっている鳥取、北九州に続いて12月7日から東京・Bunkamura ザ・ミュージアム)

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美術館への目印

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な、何かが?!
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エントランス
(この横に入場券売り場があり、そこからエレベーターで階上へ)

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展覧会入り口(撮影可能エリア)

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展示棟への渡り廊下
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展覧会場はBF 1F 2Fの3エリア
エレベーターで移動できるが横の階段の採光が良く、歩いて降りていくのもオススメ。
なんといっても「インターステラー」的。

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庭園にも陶器がいっぱい。
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茶室もある(要予約制)

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展望エリア


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近くにある丹波焼最古の登り窯
1895年(明治28年) 現在も使用されている。


兵庫陶芸美術館
https://www.mcart.jp/

ザ・フィンランドデザイン展
Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_Finland/


 

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2021-10-02

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(No Time to Die)』キャリー・ジョージ・フクナガ監督、ダニエル・クレイグ、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、アナ・デ・アルマス、ラミ・マレック、レイフ・ファインズ、他

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
007/No Time to Die

監督 : キャリー・ジョージ・フクナガ
出演 : 
ダニエル・クレイグ
ラミ・マレック
レア・セドゥ
ラシャーナ・リンチ
ベン・ウィショー
アナ・デ・アルマス
ナオミ・ハリス
ジェフリー・ライト
クリストフ・ヴァルツ
レイフ・ファインズ


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Memo1
最後のダニエル・クレイグによるジェーム・ズボンド。
今までシリーズとして演じるものが変わっても決して死ぬことはなかったボンドの死。(原作小説で行方不明のまま、のような記載もあったが)
全体を覆ったテーマ。
台詞でも出てくる。
「後ろを気にしている」
「過去に追われている」
長いアヴァン。
マドレーヌとのイタリア、マテーラでの蜜月とヴェスパーへの別れ。爆発。
「過去からは逃れられない」

新しい007となったノーミと「この台詞」
「00…?」
(エージェントNoを聞くボンド)
「007」
「永久欠番だと思ってた?」
「ただの数字だ」
アナ・デ・アルマス演じる新米CIAエージェント、パロマ。
飲んで撃ちまくり蹴りまくる暴れっぷりが楽しい。
おっ?!今回はこの「陽」の展開で、と期待していたら標的であるロシア科学者オブルチェフ救出し終えたらジャマイカ・キューバシークエンスは終わり。
「私はここまで」
ドアをバタンと閉めたら本当に終わった。
確実に必要な技術でボンドとMI6をサポートし続ける「Q」例によって巻き込まれつつ「しようがないなぁ」と楽しんでいるように見えるベン・ウィショーは最高だ。
(パロマの「新米はつらいよ・エージェントパロマの長い1日」みたいなスピンオフも有りだが「Q」も面白いスピンオフ、可能なのでは?)
いろいろラストだがジェフリー・ライトが演じてきたCIA局員フェリックス・ライター。(カジノロワイヤルから本作まで)とも本作でお別れ。シガーのことも描かれる。(亡くなることが判っていたら…もう一回、ジャマイカでのやり取り見る)
ボンドがイタリアで襲われたのはマドレーヌの裏切りと勘違いしての、列車での別れ。マドレーヌがそっとお腹をおさえるシーンがあったので、もしや?と思ったら、その通りの展開だった。
やはりヴィランが弱い。
これは007シリーズ、いつものことのように思う。スペクターと本作でのブロフェルド、サフィン。「スペクター」の時も思ったがシルエットで浮かんだブロフェルドの小物感は「う〜ん」と首を捻ったし、サフィンは能面を付けた異形感からか、まだマシな気もした。あと、マドレーヌを助けたこととマドレーヌの娘をあっさり逃したことの心境繋がりがもう少し判りやすければ、とも。

人間味溢れるボンドを描いてきたクレイグ版。
ファミリーを手に入れる。
(朝食の林檎をむく場面。あとで思うと最後の家族が揃ったシーン)
そして、ラストでは死。
過去作からすると「禁じ手」とも言える全てを包み込んで終幕。
これは「イアン・フレミング原作、ダニエル・クレイグによるジェームズ・ボンド」5作品の完結であって、エンドクレジット後に出る「ジェームズ・ボンドは帰ってくる」がシリーズの立ち位置だと思う。
ジェイソン・ボーンやミッション・インポッシブルがシリーズで上映されている時代のボンド。
いつの時代も、その時々の時流(カンフーとか宇宙とかネーミングとか)や社会背景を飲み込んで映画化されてきていることを思うと至極まっとうな有り様だったと思う。
ひとつのシリーズとして完璧なエンディング。


ナノボットは実際にガン治療などへの期待が寄せられている合成テクノロジー技術。分子・原子・DNAレベルでの物質再構築が可能。これは、言うならば「何でもつくれる」ことになったと言える究極の技術。故に本作のように究極の兵器に転用されてしまうこともあり得る。それによって、ラスト。ボンドはサフィンが「これはマドレーヌへの保険」と手にしていたキーホルダーに仕込まれたナノボットの液体を格闘の最中、割って体に浴びてしまうこととなる。
確かに、二度とマドレーヌと娘に合わなければ彼女へナノボット液体は転写されないが、それより選んだ道は全てを終わらせること。地球上に、この兵器を残さないこと。そしてマドレーヌと自分の娘に”過去から追われること”がないように、と。

「ブルーの瞳よ」
「知ってる」



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爆発で耳がキーン。
これは音に対して。一瞬、衝撃で聞こえなくなりボンドの声もくぐもって聴こえる効果。
Dolby Atmos、綺麗に分離して聴こえた。
これ、フォーマットによっていろいろ変わるのかなぁ。
(『ソーシャルネットワーク』クラブシーンで大きく唸る音楽とテーブルで交わす会話がはっきり聴こえた分離以来かも)
タイトルデザインはダニエル・クライマン(Daniel Kleinman)
007初期作品から有名なタイトルシークエンスを創り上げてきたソール・バスと列ぶ大御所、モーリス・ビンダーから引き継いだシリーズも本作で8作品目。
こちらはRATTLING STICK.スタジオサイト。
前作「スペクター」までのタイトルシークエンス動画あり(その他作品含む)
https://www.rattlingstick.com/film-tv/


追記 : キャリー・ジョージ・フクナガってエマ・ストーン、ジョナ・ヒル『マニアック』 の監督って、今気づいた。
21世紀の「カッコーの巣の上で」みたいで瞑想しながら迷走しててよかったけどなぁ。本作のちょっとバラけた感じは、ここからかも。







 

 

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2021-09-30

『空白(Intolerance)』吉田恵輔監督、古田新太、松坂桃李、田畑智子、片岡礼子、寺島しのぶ、伊東蒼、藤原季節、他

空白
Intolerance

監督・脚本 : 吉田恵輔
出演 : 古田新太
松坂桃李
田畑智子
藤原季節
趣里
伊東蒼
片岡礼子
寺島しのぶ

Kuhaku2

Memo1
英タイトル「Intolerance」と示すように「不寛容さ」について語られた映画。
100年以上前に撮られたD・W・グリフィス監督同タイトル作品も迫害や無実の罪を起こす心の狭さが描かれていた。
しかし、本作、ほのかに心が変わる瞬間も過ぎり、そこは閉塞感からの出口で実はヒントなのかもしれない。
「寛容さ」「赦し」への道標。
「負の連鎖」とも違う「落とし所」「怒りの納め所」が、わからぬが故の添田充(古田新太)の「あたり散らし」「拳のふるい方」は、周囲までをも歪め始めてしまう。その描き方の容赦なさ。
「普段から、ボランティアもしてるし、ちゃんとして生きてます」と周囲に「善意の押し売り」と受け取られない空気を醸し出しているスーパーアオヤギのパート店員、草加部麻子(寺島しのぶ)。
店長・青柳(松坂桃李)をずっと気にかけている(というよりも気がある。腕、しっかりしてるよぉ〜と触りにいくシーン。困った青柳の反応)。その割に同僚の店員には、ボランティアを手伝ってもらってるにもかかわらず態度が厳しい。
当事者でない人、特に学校側の対応。もしかするとそんな話はなかったかもしれないのに「以前、卒業生のお姉さんが、あそこのスーパーで痴漢に云々」と嘘でもなんでもよいから火の粉を払うような言動も。
添田の元妻・松本翔子を田畑智子。
吉田恵輔監督『さんかく』以来11年ぶりの出演。
添田を目覚めさせるのは、事故を起こした(呵責の念から、というよりも真面目な気質から自殺してしまう)娘の母親(片岡礼子)からの「娘を許してやってはもらえませんか」という、愛情の籠もった言葉。その態度。
それを機に物語は少し転調する。
「自分は娘のことを何も知らなかったんじゃないのか」

誰かは知らないところで見てくれている。
(ここ、本作で最も好きなシーン)
青柳を救う言葉が全く予想もしないところからかけられる。
スーパーを閉め工事現場の警備員をしている。
通りがかった若いトラック運転手。
「あの、すいません」
「スーパーアオヤギの店長さんですよね」
「店長の唐揚げ弁当、俺、好きだったんスよ」
「また、弁当屋さんでも始めてくださいよ。そしたら、俺、買いに行きますから」
「おつかれさまでした」
その青柳を慕い同じ船に乗って漁師をする野木(藤原季節)
(彼も非常に良い)
「俺、充さんが父親だったらキツイッすわ」
そう言いながらも実は一番気を遣って添田のことを見守っている。ラスト近くでわかることは父親がひとりで海に出て亡くなっていたということ。手を怪我した上に漁を続ける添田をまた失いたくないということ。
終盤。タクシーの中での3人。
添田、翔子、野木。
「みんな、どうやって折り合いつけるのかなぁ」
射し込む光が美しい。
そして、ラスト。
娘・花音と同じ雲を見ていたことを知る、添田。
その表情。

前作同様、上映時間が同じ107分。
近年の他映画からすれば短い。しかし、観客への台詞などで説明しきらない想像の余白、静かな余韻を残してくれる秀作。

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パンフレット。
表紙写真とデザインに驚いた。
この場所は表4まで広げると判るのだが事故が起こった、あの道路。
てっきりポスターなどに使われている古田新太と土下座している松坂桃李の写真が使われるものだと思っていただけに意表を突かれた。
そして一撃。
古田新太×松坂桃李対談、監督インタビュー、プロダクションノート、他、掲載。
前作『BLUE/ブルー』に続いて絶妙タイミングで出るメインタイトル。前者はリングへ上がる冒頭、本作は事故が起きた、あの場所、あの位置に、あの文字で。(タイトルといえば『ヒメノア〜ル』のようなビックリするパターンもあった!)
『空白』愛知県蒲郡市ロケ地マップ(PDFダウンロード可)
https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/kankoshoko/kuhaku.html

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『DVD&動画配信でーた』2021年4月号「吉田恵輔全仕事」と10月号「空白」インタビューによると来年公開予定の次回作はふざけまくっていて「あいつの巨匠期間は半年間だったかって思われるのが楽しみです!」「お前は何がしたいんだよ!どっちに行きたいんだって言われる監督では居続けたいですね」と語っていて、これまた楽しみな作品。

 

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2021-09-29

ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる『ムーンライト・シャドウ(Moonlight Shadow)』エドモンド・ヨウ監督、小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、臼田あさ美、他

ムーンライト・シャドウ
Moonlight Shadow

監督 : エドモンド・ヨウ
原作 : 吉本ばなな

出演 : 小松菜奈、宮沢氷魚
佐藤緋美、中原ナナ
吉倉あおい、中野誠也
臼田あさ美

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Memo1
彼岸と此岸を隔てるものは川だ。
そして繋ぐものも、思いをはせるために横たわるのも川だ。
ある種、夢を見ているような感覚。
時間の伸縮で言うならば、それは長い。
印象としての時間と実際の時間。
監督がインタビューで答えている通り、原作よりもかなり肉付けされた登場人物。
小説の映画化が(逆説的な意味ではなく)すごく文学的に見える。
映像から立ち上る行間は詩的だ。
さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)、柊(佐藤緋美)、ゆみこ(中原ナナ)、麗(臼田あさ美)の間に紡がれる時間も、川の流れのごとく、蜘蛛の巣のように地下に張り巡らされた地下の水のように、繋がっているようで変化し続け曖昧な感じだ。
4人が初めて顔を合わせるシーンがとてもよい。
柊とゆみこを見て反応するさつき。
それにしても、さつきを演じた小松菜奈のアップ絵の力強さたるや。(「渇き」以来、ずっとテレビよりも映画での出演作を見ている気がする。それほどにスクリーンが似合う)
出演者以外にも撮影、カラリスト、他、気になることがいっぱい。
そして印象深い音楽のトン・タット・アンさん
(『朝が来る』もそうだったのか、とMUBIをチェックして驚いているところ)
An Ton That
https://mubi.com/cast/an-ton-that
色のトーンについては何度もディスカッションを重ねたという通り、本作の文学性を創り上げる一端となっている。
さつきの赤のコートは(おそらくカラコレで強調されてると想像)強烈なイメージを残す。それはラストで喪失から踏み出して足を進める力強さにも繋がっていく"赤"だ。
ロケ地を調べると劇中、最も印象深い"あの橋"は東京都羽村市「羽村堰下橋(はむらせきしたばし)」
(google Mapに入力するとストリートビューもあるので、まさにあの場所へ飛ぶことができます)
これは、ちょっと行ってみたい。

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Memo2
パンフレット。
大島依提亜さんによるデザイン。
監督、キャストインタビュー、植本一子エッセイ、シナリオ決定稿(高橋知由)、他
(以下、大島さんのtwitterより引用)
上製本でもはや“本”(スピンやはなぎれも)
さらに表紙は金属的光沢の群青色のパール紙を使用。
谷川俊太郎さん詩/木下龍也さん岡野大嗣さん短歌の書き下ろし等、ナナロク社さん完全編集の中身も本気の書籍です。
これは本です、と語ってくる「もうひとつの仕掛け」が洒落ている。
(購入者のお楽しみとして)
買われた方の映画と映画館の思い出に

吉本ばなな原作本。
リアルタイムで読んだ当時、内容とともに話題となった装丁書籍を探したが見つからず、現在底本とされる新潮文庫版で再読。
「七夕現象」→「月影現象」
「うらら(ひらがな名)」→「麗(うらら)」
と、大きな差異はそれぐらいだ。
喪失からの一歩。
進んでいく「さつき」のモノローグ。
原作も映画もラストは同じ。
等。私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それは止めることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる
Moon2

 

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2021-09-28

『ショック・ドゥ・フューチャー(Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE)』マーク・コリン監督、アルマ・ホドロフスキー、他

ショック・ドゥ・フューチャー
Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE

監督・製作・脚本・音楽 : マーク・コリン
出演 : アルマ・ホドロフスキー
フィリップ・ルボ、クララ・ルチアーニ、
ジェフリー・キャリー、コリーヌ、他


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音楽が生まれる瞬間の映画。
このような描き方があったのか!
1日で語るミュージシャンの現実と希望。
78分が短い。もっと浸りたい。
オープニングからドキドキした。
アナがベットから起き上がり、煙草を吸い、一息置いて(神殿にも見える)シンセサイザーの前に座る。
そして、音が流れる。
シンセサイザーとスピーカーが幅いっぱいに映るスコープサイズだからこその高揚感。
アナを演じたのがホドロフスキー監督の孫(祖父がホドロフスキー監督と表記するより、こちらの方がインパクト大きくて、ちょっと驚いた)
監督インタビューでの言葉
先見性を持ち、未来の音楽を予知した女性の物語
劇中、アナとボーカル入れにやってきたクララが打ち解ける(と、いうかハイになって)見るアニメ「シャピ シャポ」音楽がフランソワ・ド・ルーベ(冒険者たち、さらば友よなど)。やはり監督インタビューで知ったが「映画音楽の...」だけではなく「フランスにおける電子音楽の先駆者」といった位置づけもあるのだ。その他、とりわけエレクトロ・ミュージックへの造詣が深いマーク・コリン監督が、だからこその音楽映画といえる。そして、過去映像ドキュメンタリーではなく「映画」として描かれたことは幸せなことだ。
それにしても、この時代のセクハラ、パワハラ度合いは酷い(「男なら時間を守る」ってなんだ?!)。デビューするということはメジャーレーベルからレコードを出すこと。それしか方法がなく、アナもその呪縛の中で嫌な発注者(CM音楽)と会話を交わしていくこととなる。ほとんどの男性が、そのような接し方をする。(最初、リズムボックスを持ってきた部屋の持ち主の友人も「見返り」のような口ぶりを見せるところも)
結局、アナとクララで創り上げた音楽(曲)を大物プロデューサーは鼻にもかけず落胆するアナ。しかし、友人の弁護士が部屋から連れ出して案内してくれた女性歌手のレコーディングを見て、再び音楽へ戻ることとなる。この短い転調と呼べるシーンが、そのままcodaへつながるシンプルな構造。

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Memo2
パンフレット
24P。日本語タイトル表記なしなのが素晴らしい。
監督インタビュー、野田勉(ele-king編集長)レビュー
スタッフ、キャスト(と言っても監督とそのバンドのみですが)、他
アナが魅せられたリズムマシン Roland CR-78。
のちにTR-808からTR-909へ(パンフレットで知ったのだが、本作で置き時計表示が9:09でTR-909へのオマージュだったなんて、監督のすご過ぎるエレクトロニック・ミュージック愛)

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こちらはTR-808 誕生から40周年のRoland記念サイト。
歴史はCR-78の紹介からスタート。
https://www.roland.com/jp/promos/roland_tr-808/

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ラストシーン
またシンセサイザーの前に座り曲を作り始めるアナ。
他の人には見えなくても確実に感じている未来の音楽。
そこからエンドロール。
最高。


 

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