2021-06-06

『騙し絵の牙』吉田大八監督、大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、國村隼、木村佳乃、他

※注・ネタバレしています。
騙し絵の牙

監督 : 吉田大八
脚本 : 楠野一郎吉田大八
原作 : 塩田武士

大泉洋
松岡茉優
宮沢氷魚
池田エライザ
斎藤工
中村倫也
佐野史郎
リリー・フランキー
塚本晋也
國村隼
木村佳乃
小林聡美
佐藤浩市、他

Da2

Memo1
原作未読で鑑賞。
(古い言い回しで)ギャフンと言わせる。
騙し騙され、なんだか振り回されている登場人物が、その仕掛けた側の人たちを逆に最後、ギャフンと言わせる。
もう、この手のお話は大好物。
しかも名前だけで絶対見に行く吉田大八監督作品ときている。
さらに観客も最後にギャフンと言わされる、お見事さ。
原作はKADOKAWAから出ているにもかかわらず出版社内ロケは文藝春秋社で行われたって、どれだけ懐深い会社なの、と感心 (そもそも映画の舞台となる「薫風社」自体が「文藝春秋社」のことかなぁー、なんてイメージしながら見ていたし。笑)
タイトルに「騙し」とついている時点でなるべく情報や詳細プロットなど「見ない聞かない読まない」スタンスで鑑賞。
いろいろ後追いでインタビューなどを読むと大泉洋、当て書き原作なのですね。(これ、出来上がり見て大泉洋、フフフって笑ったでしょう 笑)
その他キャスティングの妙。これ誰かモデルいるのかなー、とか思いながらの國村隼演ずる大御所作家 笑
池田イライザにもビックリした。
塚本晋也監督がオーーーーっというぐらいに上手い、しかも味がある。
超役得でもあるが最後のギャフンにはニンマリ。
そして最後に。
やっぱり松岡茉優。
上手いわ〜。
冒頭のコップ倒しから、転換点越えてからの「負けて勝つ」キャラに変わるところまで堪能したわー。

Da1

Memo2
『桐島、部活やめるってよ』『美しい星』と元原作とは違う形で物語を現出させてきた監督だけあって本作も見事なアダプテーション(脚本 : 楠野一郎、吉田大八)
ふと『桐島、部活やめるってよ』試写のあと、監督舞台挨拶で「各地での試写会でいつもエンドロールが始まったら、ざわざわすると聞いていたけれど、初めて実際の雰囲気を目の当たりにしました」と語っていたこと思い出した。
例えるなら密林より大草原の小さな家(察して)としての書店の未来。
機関車トーマスこと東松の部屋の壁に(見間違いでなければ)割と早い段階からプロジェクトKIBAのポスターが貼ってあったので、その辺もフェア。

映画『騙し絵の牙』公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/




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2021-03-15

『すばらしき世界(Under the Open Sky)』西川美和監督、役所広司、仲野太賀、長澤まさみ、他

すばらしき世界
Under the Open Sky

各シーンに触れています。(文章内・敬称略)

監督・脚本 : 西川美和

役所広司(三上正夫)
仲野太賀(津乃田龍太郎)
長澤まさみ(吉澤遥)
六角精児(松本良介)
北村有起哉(井口久俊)
白竜(下稲葉明雅)
キムラ緑子(下稲葉マス子)
安田成美(西尾久美子)
梶芽衣子(庄司敦子)
橋爪功(庄司勉)

Wonderful
Memo1
生きにくさ、不寛容、閉塞感。そんな押しつぶされそうな空気は普通に生活していても、大多数の人が胸が痛くなる息苦しさを感じる。まして三上にとってこの社会は馴染みづらく居場所が見つけられない場所でもある。
生活保護などを受けて暮らすことは三上にとっては、ある意味恥じ入ることだと思っている。
血の気が多いのか暴力を振るった瞬間だけ生き生きしてしまう。しかし根は普通の人たちよりも正義感が強く生真面目なだけなのだ。それが自分を律しようとすればするほど裏目に出てしまう。
そんな三上の人間味に周囲の人たちは微力ながらも支えていこうとする。その描き方が静けさとユーモアと丁寧なシーンの積み重ねで綴られている。
プロデューサー吉澤の押しによって、なんとも気乗りして参加したわけではなくドキュメンタリー撮影を行っていく津乃田だが、いつの間にか三上の人間力とでもいうべき魅力に惹かれていき、カメラを捨てやめてしまう。これは同時に観客側である我々の視点も津乃田と同じところに移り、このまま何も起こらずに平和に終わってほしいと願いながら見ることとなる。
(鋏のシーンはスピルバーグ監督『カラーパープル』髭剃りシーンと並ぶドキドキシーンだった)
自分が正しいことでも我慢すること、周りの支えてくれている人たちの顔が浮かんだのだろうか。
強い風が吹いている。嵐が近い。
全体的にアップが多いような気がして、後でいろいろ読んだり見たりしてわかったことは、あまりに役所広司の演技が素晴らしすぎて自然と多くなったようだ。編集の時にはもっと多かったようなので、それほど際立っていたということなのだろう。もっとも、このことによって突然の空撮とエンディングのクレーンショットが印象に残ることとなった。
タイトルが最初ではなくラストに置き換えられている。
そのこととラストシーンとの関係性を、ふと感じる。
三上が香りをかぐコスモス。
立ち尽くす5人。
カメラがゆっくりと見下ろす形で上がっていく。

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Memo2
大寿美トモエさんデザインによる100ページ厚パンフレット!
鑑賞後、なんとも言えない主人公に対してのまなざし(演出側、観客側)に対して「これはシナリオ読みたいなぁ」と思っていたら決定稿が丸々掲載されていて嬉しい!
パンフレット掲載の決定稿。
シーン119と120が本編ではカット(87、88と対になっている)。
他にもいくつかあり。シーン18あたりは身元引き受け人・夫妻の印象、ちょっと変わってたかも。
こういったことが後から確認できるのもシナリオ付きパンフのお楽しみ面白み。
写真が趣味という中野大河
パンフレット56ページに、その中野大河撮影による役所公司、安田成美の素敵なツーショットが。
西川美和による著書『スクリーンが待っている』
ほぼ大半を占める本作の制作過程。
最も最近の「夜明け前」撮影の笠松さんと役所広司さん、監督との映画談義が楽しい!ジョーカー、タクシードライバー、キングコング対ゴジラ、帝国の逆襲…
そして最後はこう締めくくられている。
「最良の時が、最後の時だ。次はまた、もっとすばらしき世界が待っている。」
幻の母親役となった八千草薫さんのこと、日本でのロケ撮影のこと、役所広司さんとシナリオと対峙しての言い回しのこと、など。『すばらしき世界』出来上がった映画の裏側で繰り広げられた出来事の数々。
役所さんの帯コメント通り「映画作りの教則本です」

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Memo3
動画1
役所広司は切り札(ジョーカー)だ
映画『すばらしき世界』西川美和監督インタビュー
(インタビュー部分、約7分プラス予告編)
https://www.youtube.com/watch?v=HHJyQIUryz4
動画2
本編映像
パンフレットに掲載されているシナリオ決定稿中
シーン59(途中)から60(こちらも途中まで)
https://www.youtube.com/watch?v=Smi_jmYE_CY







 

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2021-02-28

遅ればせながらの2020年コミックお気に入りベストと気の早い話。

2020年コミックお気に入りベスト
(遅ればせながらの2月末に)
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まぁ、何と言っても『薔薇はシュラバで生まれる』と『水は海に向かって流れる』が"お気に入り双璧"

1位『薔薇はシュラバで生まれる 70年代少女漫画アシスタント奮戦記』
2位『水は海に向かって流れる』
3位『スインギンドラゴンタイガーブギ』
4位『ランド』
5位『北極百貨店のコンシェルジュさん』

『薔薇はシュラバで生まれる 70年代少女漫画アシスタント奮戦記』(笹生那実・著)
「このマンガを読め!2021」「このマンガがすごい!2021」共にランクイン。
著者が美内すずえ先生はじめ多くのアシスタントをされていた頃のエピソード(シュラバ 笑)の数々。
カンヅメ旅館に残された飛び散った墨汁の跡や当時のアシスタントあるある「眠気覚ましに怖い話をする」笑ったー。
あと山岸凉子先生『天人唐草』エピソードのようないい話や三原順先生の元での一度だけの『はみだしっ子』(9作目「そして門の鍵」の時)話も。
ちょうど『ガラスの仮面』を1巻から再読中だったので、いろいろ被って、それがまた楽し。
『水は海に向かって流れる』(田島列島・著)
こちらも「このマンガを読め!2021」(◀︎昨年もランクインしているから合わせると1位かも)「このマンガがすごい!2021」共にランクイン。
今年、沖田修一監督に夜映画作品が公開予定の前作『子供はわかってあげない』も超絶傑作だが、こちらはさらに傑作(まあ、とにかく読んで)

まだ連載中だった際の田島列島さんのインタビュー
 (2019/10/17)
https://manba.co.jp/manba_magazines/8901

『スインギンドラゴンタイガーブギ』(灰田高鴻・著)
ジャズ漫画にして戦後芸能史ストーリーとなっていくかもと期待。ある意味、ナベプロを想起。もっとランク上位でいいと思うのだが。描線も好み。プレイリストがSpotifyとApple Musicで公開されている。
『ランド』(山下和美・著)はずっと読んでいた漫画が完結。しかも、このスケールで。
『北極百貨店のコンシェルジュさん』(西村ツチカ・著)はイラストレーターでもある氏の絵が好き。


さて気の早い話だけれど、こちらは2021年漫画ベストテンに確実に入ってきそうな作品▼あ、もちろん個人的お気に入りベストには既にランクイン。
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熊倉献『ブランクスペース
スイちゃん、ショーコちゃん、
ガールミーツガールものにして奇妙なるSF青春漫画。
(配信型漫画だが、紙で読んだ方が百倍以上すごくなる。これはコマ割りとの関係性もあるのかも?)
ただの高校生の日常物語かと油断していると超巨大破壊巨編になってしまうかもしれない?危うさが隠れている。
あー、早く続きが読みたい!!!




 

 

 

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2021-02-24

道頓堀・松竹座と映画広告デザインの源流

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名作がいっぱい 映画のデザイン
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大正12年オープンした大阪・松竹座で独自に配布されていた「松竹座ニュース」は当時、図案家と呼ばれていたデザイナー達による才能発揮の場として機能し、まさに「映画広告の源流」だ。
なかでも山田伸吉による大阪・松竹座封切りの映画ポスターは日本の近代デザインを語る展覧会にはほぼ必ずと言ってよいほど出品されている。
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Memo1
『芝居画家 山田伸吉の世界 - 関西大学』
33ページの図録がPDFとしてダウンロード可
https://www.kansai-u.ac.jp/Museum/osaka-toshi/img/publication/catalog121201.pdf

こちらの論文(図版あり)のキネマ文字項目はまさに映画広告の源流を知ることができて素晴らしい。
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/53312/jjsd37_015.pdf

以下抜粋
「その当時、社会的地位は別として大阪には神戸で見られない華やかな図案家の存在があった。そのトップは松竹座美術部の山田伸吉であった。全国に行きわたった映画広告独特のレタリングは、そのオリジナルが彼の創案によるものであった」

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国立映画アーカイブのNFAJ Digital Gallery 第3回〜10回で北野劇場や道頓堀・松竹座、他の戦前前期の写真を見ることができます。もちろん東京や京都などもリンクを辿って見ることができます。
https://www.nfaj.go.jp/onlineservice/digital-gallery/dg20140906_008/
東京・帝国劇場も大阪・松竹座もお披露目作品がエルンスト・ルビッチ作品!


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2017-09-25

"背中あわせのランデブー" 吉田拓郎 - 松本隆 - 太田裕美。他

背中あわせのランデブー
A面吉田拓郎作曲、B面太田裕美による作曲(作詞も)。

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『背中合わせのランデブー』に収録されている「失恋魔術師」はシングルとは別アレンジで、これが続く「花吹雪」「」(この3曲が松本隆作詞)への流れにピッタリ。この3曲、拓郎節と言われる独特の譜割りとコード進行全開で名曲だと思う。
とくに「花吹雪」は2度めぐる桜の季節。
恋人と友だちのさかいめを切なく綴った松本隆の詞の世界全開の名作。
画像はアルバム発売時の宣伝チラシ。
(チラシの反対側は当時、太田裕美とよくライヴ共演していた森田公一とトップギャラン)

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『レコードコレクターズ』2017年10月号
特集「作詞家・松本隆の世界
名作100選のきらめくような作品群。
そして執筆者が選ぶ101番目のオススメ曲に吉田拓郎「外は白い雪の夜」と「英雄」が。
(選者は違うのに同一アルバムから)
以前にも書いたけれど「外は白い雪の夜」は最初「そして誰もいなくなった」というタイトルだった。(同曲収録の「ローリング30」レコーディング中の箱根ロックウェルスタジオからの深夜ラジオ「セイヤング」中継内で生演奏)
『レコードコレクターズ』表紙写真の構成が絶妙。中央タイトルを挟んで、それぞれが対になっている。太田裕美と松田聖子。アグネス・チャンと斉藤由貴。鈴木茂とYMO、大滝詠一とナイアガラ・トライアングルなど。

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2016-06-09

"映画の生き死には宣伝次第よ" 淀川長治さんの映画広告

21世紀の淀川長治
(キネマ旬報社・刊)

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「映画へとひとびとを誘う言葉」と思いが詰まった一冊。
「淀川長治自伝」の「終回」から幕を開ける本書。
(その冒頭部分を引用)
"チャップリンは亡くなったのに映画はある。ジョン・フォードは亡くなったのに映画はある。ヴィスコンティの映画もルノアールの映画も永遠であろう。映画は残る。これは小説も絵画も同じこと。この世に何かを残すということはどれほど偉大なことか。"
シャブロル、ブレッソンから『荒野の一ドル銀貨』成瀬・川島両監督による『夜の流れ』などなど淀川さん口調で声まで聞こえてきそうな映画批評や監督論の数々。きっちりと批判したものも採録されていて初めて読まれる方はドキリとするのでは?
(とはいえ、あるのは映画を愛する心。P60わが映画批評の立脚点を読めば、その指針もうかがうる)
巻末には『キネマ旬報』ベスト・テン他が表だけではなくコメントも(←これは嬉しい!)そのまま採録されています。
カラーページに"淀川長治がつくった広告"といったコーナーが。
ハサミコミと呼ばれるキネマ旬報本誌に綴じこまれた広告を淀川さん自身によるレタリング、レイアウトで作られた話が語られています。
(図版は「駅馬車」「デッドエンド」「牧童と貴婦人」「ゼンダ城の虜」)
※確かキネマ旬報には1970年代中頃までチラシ自体を挟みこんで発刊されていたと記憶する。
そこで思い出したのが今から27年前に広告批評で特集された、この号。

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広告批評』1989年5月号
特集・淀川長治ワンマンショー
43ページにおよぶ大特集。
(本誌自体が130ページなのだから、これは本当に大特集でした)
聞き手に川本三郎さん、島森路子さんをむかえてのインタビューを軸に構成。
第1部・どうしておしゃべりになったか
第2部・こんなふうに生きてきた
第3部・私の美意識
そして<付録>と記された映画広告にもの申す。
こちらには図版として他の著書でも見た記憶があるユナイト宣伝部時代に作られた有名な『駅馬車』の雑誌広告が。
他にはキャストやスタッフなど何も入れず、ただひとこと「駅馬車来る!」
当時としては画期的な広告。

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淀川長治のひとこと広告批評
(前年に公開された作品の中から選ばれたもの)
それぞれにコメントがつけられている。
続くインタビューページ。
(多分、ここで初めて読んだ知らなかった話←島森さんも、はじめて聞いたと答えています)
"角川春樹さんに、僕、呼ばれたの。あの人が映画を始めるときに。「一体なんですか」って言ったら「映画を大事に売りたい、商売したい。どうしたらいいでしょうか」って質問された。「映画の生き死には広告です」って、僕、答えたの。「宣伝しない映画は、絶対に当たりません。映画の第一は宣伝です。あらゆる方法で、見せるなり聞かせるなり、どんどん自信を持っておやりなさい」。春樹さん、一生懸命聞いてたよ。で、宣伝に力を入れられたね。"
(映画の生き死には宣伝次第よ、より抜粋)
この後に、ちゃんと「で、広告負けしたの〜(中略)〜やりすぎちゃったの。」とピシャリと言い切るあたりにも、驚く。(さらには東和の話、セルズニックの話もかぶせているので、ただの苦言でないこともわかる)
※他にも初出だと思われる話がいくつも。どちらかの著書におさめられているのかは未確認です。

追記
『21世紀の淀川長治』読み進めていくと(と、いうか、すぐに数箇所)やたらと誤字が多いなぁと思っていたら下記、告知が記載されていました。
キネマ旬報ムック『キネマ旬報コレクション 21世紀の淀川長治』をご購入のお客様へ お詫びと商品交換のお知らせ
http://www.kinejun.com/book//tabid/95/Default.aspx?ItemId=588


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2015-06-24

作詞活動四十五周年トリビュート『風街であひませう』

松本隆さんの作詞活動四十五周年トリビュート盤『風街であひませう』がリリースされました。(文中敬称略)

1975年頃~1980年にかけては自分にとって、まさに吉田拓郎 - 松本隆 - 太田裕美を"見て、聴いて、追っかけて"度合いが濃密な時期だったので、今回の限定盤ディスク2「風街をよむ」での太田裕美による「外は白い雪の夜」朗読は「おぉっ!これは、あの"背中合わせのランデブー"(※)の変奏的再現ではないかぁ!」とちょっと小躍りしてしまった。
※『背中あわせのランデブー』A面吉田拓郎作曲、B面太田裕美による作詞作曲。

Kazemachi

Memo
「外は白い雪の夜」を初めて聴いたのは当時、吉田拓郎がパーソナリティだった「セイ!ヤング」(文化放送・金曜日深夜オンエア)で『ローリング30』レコーディング中、箱根ロックウェルスタジオからの生中継(1978年8月)
そこから実際に生での演奏や出来上がったばかりのピカピカのマスターテープなどがオンエアされた。
「これはレコーディングメンバー全員が大絶賛したという曲を今からやります」「えー、タイトルは"そして誰もいなくなった"というのですが」まだ曲名が「外は白い雪の夜」ではなかった。
ちなみに他にも生演奏で「旅立てジャック」「人間なんて」(「ちょっと、あれ、あれやってみようか」と少しだけ演奏)
箱根から特急便で文化放送に送っていた3曲から「君が欲しいよ」「虹の魚
ハートブレイクマンション」(「日当り良好(ひあたりりょうこう)」の部分をふり仮名間違いで「ひでりりょうこう」と歌っている間違いバージョン)が流された。
箱根ロックウェルスタジオは当時としては画期的なリゾート型レコーディング&リハーサルスタジオとして人気の高かった場所。フォーライフレコードの4人(吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげる・小室等)による「クリスマス」アルバムもここでレコーディングされた)。
そして、不思議なめぐり合わせというか、このロックウェルスタジオは、その後原田真二が「Modern Vision」と名前を変えてオーナーとなった時期があった(今、どうなのでしょう?←すみません未確認)
そして、さらには、その原田真二デビュー作「てぃーんずぶるーす」(松本隆作詞、原田真二作曲)も箱根ロックウェルスタジオでレコーディング(確かアルバムもだったと記憶)

前述『背中あわせのランデブー』に収録されている「失恋魔術師」はシングルとは別アレンジで、これが続く「花吹雪」「」(この3曲が松本隆作詞)への流れにピッタリ。この3曲、拓郎節と言われる独特の譜割りとコード進行全開で名曲だと思う。
限定盤ディスク2「風街でよむ」ディレクターの是枝裕和監督、ブックレット掲載のコメントで知りましたが太田裕美さんのファンだったのですねー( ´ ▽ ` ) ちょっと嬉しい。初めて買ったレコードが中学1年の時の「木綿のハンカチーフ
ブックレットが130ページ。これだけで独立した書籍の趣き。
(もちろん本文縦組み)
風街でうたう、集う、よむ、撮る、創る、語る、思う。
それぞれに応じた内容で綴られる、アルバムや購入者特典の限定公開是枝裕和監督ディレクターズカット「風街でよむ」など全体通して、これ以上ないのではないかと思える至極の仕上がり。

風街であひませう
http://www.jvcmusic.co.jp/kazemachi45/


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2013-12-12

小津安二郎監督 生誕 110年(没後50年)

2013年12月12日
「google」トップロゴが「小津安二郎監督 生誕 110年(没後50年)」にあわせてスペシャルロゴに。「東京物語」の終盤、義理の父・平山周吉(笠智衆)と戦死した二男の妻、紀子(原節子)、尾道でのシーン。

小津監督作品は70年代には、あまりよくわからず(洋画ばかり見ていたこともあり)全く見る機会がなく80年代に入ってレーザーディスクで鑑賞したのが最初(当時、ハリウッドメジャー作品はほとんどディスク化されず20世紀FOXのみが出ていたぐらい。何故か小津作品がLD化されていた←VHDという別システムはCIC配給系洋画が出ていて熾烈なる争いが始まっていた)
その小津作品初見時もピンとこなかったのもご多分にもれず。
のちにフィルムで特集上映(原節子出演作品として)であらためて見た時に「何っ、これ…。」とただならぬ美意識に衝撃を受けました(ある年齢を過ぎると急に感じいるところが多くなるというのも小津作品の不思議であり魅力だなぁ、と思います)。

Ozu2

(ハスミン関連書籍以外では)定番の2冊「小津安二郎の美学」「小津安二郎を読む」と今から20年前の没後30年の区切りに出た浜野保樹著「小津安二郎」(この本はサイズのこともさることながら、その時点で初めて知るエピソードなども数多く掲載されていてすごく参考になりました)

Ozu3

Ozu4

80年代後半から急速に高まってきた小津監督評価に伴って特集上映などが頻繁に行われるようになってきた際のチラシなど。
(「静」の文字が書かれているものはレーザーディスク発売10周年のLD-BOXセット、片面60分しか収録できないので17枚組29面でした)
左側チラシは今年(2013年)宝塚シネピピアで開かれた特集上映。松竹の小津監督が宝塚映画に出向して撮った作品「小早川家の秋」の一場面。

小津安二郎 生誕 110年
http://www.shochiku.co.jp/ozu/
小津安二郎の図像学
http://www.momat.go.jp/FC/ozu2013/

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2013-07-23

福山雅治・主演、西谷弘・監督『真夏の方程式』ガリレオにしてガリレオにあらずの傑作

注・内容に触れています。
東野圭吾
原作のテレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版第2弾『真夏の方程式』脚本・福田靖、監督は「容疑者Xの献身」の西谷弘。主演はテレビ版と前作に続いて福山雅治。テレビシリーズから吉高由里子北村一輝。共演は風吹ジュン前田吟白竜塩見三省

物語・手つかずの美しい海が残る玻璃ヶ浦。その海底鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして出席するために招かれた湯川は、旅館「緑岩荘」に滞在することに。そこで湯川は親の都合で夏休みを叔母一家が経営する旅館で過ごすことになったひとりの少年・恭平と出会う。翌朝、堤防下の岩場で男性の変死体が発見された。男は旅館のもう一人の宿泊客・塚原。これは事故か。殺人か…。(greenglay部分、フライヤーより抜粋)

Manatsu

Memo1
ドラマはスピン・オフ含めて全て見てきた上で鑑賞(劇場版前作も)。お約束の(毎回出るあの突如始まる計算シーンやコメディ部分に大きく寄与している栗林助手の出演シーン&研究室など)尽く封印して"こういう形"で映画化できたことによる、ガリレオにしてガリレオにあらずの傑作。そして、まさにこう表現できる「恭平少年と湯川准教授、夏の思い出」編だ。
(とは言え)逆に全くドラマも原作も読まずに全く白紙の状態で鑑賞した場合、どう評価されていくのかが(湯川教授の口癖の台詞で言うと)「実に興味深い」
で、"なつのおもいで"はこんな感じ→ ひとりで電車に乗っての旅、夏休みの自由研究、すいか、バスタオル、花火、ジワッとふきでる汗で目覚める朝、変わった大人との遭遇…。
「理科なんて何の役にもたたないのに」のひと言でガリレオ湯川の"ちょっとムキになったかも"スイッチが押される(テレビドラマでは毎回、吉高由里子扮する岸谷刑事が、なんとか事件に興味を持ってもらおうと四苦八苦する部分だが)。恭平の玻璃ヶ浦の海の中が見たいけど泳げないことへの科学的実験アプローチがペットボトルロケットだ(ここまでのくだりがホントに素晴らしい)
「全てを知って、その上で自分の進むべき道を選ぶべきだ」(説明会での反対派の人たちに対してのスタンスはそのままテーマとして反復される)。
実 際、非常に早い段階で事件の真相が判ってしまった湯川は、いつもとは違った行動パターンをとる。理由は本人は無自覚的にせよ殺人の手助けをしてしまったか もしれない(恭平少年のこと)その将来についてを案じるのだ。その台詞。「そのことによって、ある人物の人生がねじ曲げられる可能性がある」
誰もが秘密を持っている。
恭平少年もまた、大きな罪の呵責をもって、これから生きていくことになる。苦い。だが同時に湯川と過ごした夏の思い出(ペットボトルロケットのが、きっと勇気づけていくことになるのだろうな、と想像できるラストの少年の電車の中での姿に希望の光を見いだせる。案外、何年か経って恭平少年が湯川研究室に入ってきたりしてなどとも想像してしまった。その時、栗林さんが相変わらず助手のままだったなんていうオチまでw

Memo2(ちょっと思い出したので蛇足)
少年の成長で言うとポール・ギャリコ(「ポセイドン・アドベンチャー」「スノーグース」原作者)の傑作にして未文庫化作品の【シャボン玉ピストル大騒動】が出たばかり。9歳半の発明家を夢見る少年ジュリアが特許を取るためにワシントン行きの夜行バスにひとりで乗り込む。70年代ロードムービーの趣もあって楽しい。(創元推理文庫・刊。表紙イラストが片山若子さん)

映画「真夏の方程式」
http://www.galileo-movie.jp/

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2013-04-17

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

注・内容、台詞に触れています。
まあ、このタイトルからして当ブログにピッタリな事はない、ということで村上春樹・著『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
以前書いた記事→「村上春樹・1Q84」と「存在の耐えられない軽さ」

Haruki

Memo
アカアオクロシロ灰谷緑川
そして、"色彩を持たない多崎つくる"
高校時代の正しき五角形から突如スポイルされた多崎つくるが16年の歳月の後、その理由を知るための「巡礼の旅」東京→名古屋→ヘルシンキ

何故か、名古屋、浜松、岐阜。そういえば「国境の南、太陽の西」の時も豊橋が出てきたりと、このあたりは何かあるのかな、とも思ったり。
小説(物語)として伏線は全て回収しきる必要があるか、ないかという点も考えさせられた。灰田の(その後の)こと、灰田の父親のこと、シロの事件のこと。すべての物事の理由を知る必要がないといえば無いし、実際現実社会においても(何故あの時、そうなったかわからない事柄)謎は謎のままなのだし。
本作は著者自体も語っていたとおりジェットコースター的手法は使われず概ね時間軸通り、パラレルワールド世界も(夢の描写はあるが)ない。かといって、いつものリアリズム筆致(残酷描写に多く見られる)もない。読み進めていくうちに「あ、繋がっている?」と思わせる、あの感覚も少ない。ある意味新しい?ニューバージョンの村上春樹?("喪失感"や"失われてしまったけれど確かにそこに存在したもの"など、ハルキワールドではあります)。
時々Anagramを用いたりするので本著作でも色いろあるのでは?と、考えてみたり。わざとステレオタイプ的に女性を清楚なシロ、快活なクロと分けていること。中間的な受け皿としてのglay=灰田の存在など。
沙羅=真っさら(さら)←まさかねー。(これは考えすぎ)
あと、ふと途中思ったのが原恵一監督「カラフル」のこと。

終盤近く(希望的な光)
クロ
ことエリの台詞
「わたしたちはこうして生き残ったんだよ。私も君も。そして生き残った人間には、生き残った人間が果たさなくちゃならない責務がある。それはね、できるだけこのまましっかりここに生き残り続けることだよ。たとえいろんなことが不完全にしかできないとしても」

この台詞も
「ねえ、つくる、君は彼女を手に入れるべきだよ」
(「ダンス・ダンス・ダンス」の「ユミヨシさん、朝だよ」を思いだしたり←このラストが個人的には一番好きかなぁ)

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