『すばらしき世界(Under the Open Sky)』西川美和監督、役所広司、仲野太賀、長澤まさみ、他
『すばらしき世界』
Under the Open Sky
※各シーンに触れています。(文章内・敬称略)
監督・脚本 : 西川美和
役所広司(三上正夫)
仲野太賀(津乃田龍太郎)
長澤まさみ(吉澤遥)
六角精児(松本良介)
北村有起哉(井口久俊)
白竜(下稲葉明雅)
キムラ緑子(下稲葉マス子)
安田成美(西尾久美子)
梶芽衣子(庄司敦子)
橋爪功(庄司勉)
※Memo1
●生きにくさ、不寛容、閉塞感。そんな押しつぶされそうな空気は普通に生活していても、大多数の人が胸が痛くなる息苦しさを感じる。まして三上にとってこの社会は馴染みづらく居場所が見つけられない場所でもある。
生活保護などを受けて暮らすことは三上にとっては、ある意味恥じ入ることだと思っている。
血の気が多いのか暴力を振るった瞬間だけ生き生きしてしまう。しかし根は普通の人たちよりも正義感が強く生真面目なだけなのだ。それが自分を律しようとすればするほど裏目に出てしまう。
そんな三上の人間味に周囲の人たちは微力ながらも支えていこうとする。その描き方が静けさとユーモアと丁寧なシーンの積み重ねで綴られている。
●プロデューサー吉澤の押しによって、なんとも気乗りして参加したわけではなくドキュメンタリー撮影を行っていく津乃田だが、いつの間にか三上の人間力とでもいうべき魅力に惹かれていき、カメラを捨てやめてしまう。これは同時に観客側である我々の視点も津乃田と同じところに移り、このまま何も起こらずに平和に終わってほしいと願いながら見ることとなる。
(鋏のシーンはスピルバーグ監督『カラーパープル』髭剃りシーンと並ぶドキドキシーンだった)
●自分が正しいことでも我慢すること、周りの支えてくれている人たちの顔が浮かんだのだろうか。
強い風が吹いている。嵐が近い。
●全体的にアップが多いような気がして、後でいろいろ読んだり見たりしてわかったことは、あまりに役所広司の演技が素晴らしすぎて自然と多くなったようだ。編集の時にはもっと多かったようなので、それほど際立っていたということなのだろう。もっとも、このことによって突然の空撮とエンディングのクレーンショットが印象に残ることとなった。
●タイトルが最初ではなくラストに置き換えられている。
そのこととラストシーンとの関係性を、ふと感じる。
●三上が香りをかぐコスモス。
立ち尽くす5人。
カメラがゆっくりと見下ろす形で上がっていく。
※Memo2
●大寿美トモエさんデザインによる100ページ厚パンフレット!
鑑賞後、なんとも言えない主人公に対してのまなざし(演出側、観客側)に対して「これはシナリオ読みたいなぁ」と思っていたら決定稿が丸々掲載されていて嬉しい!
●パンフレット掲載の決定稿。
シーン119と120が本編ではカット(87、88と対になっている)。
他にもいくつかあり。シーン18あたりは身元引き受け人・夫妻の印象、ちょっと変わってたかも。
こういったことが後から確認できるのもシナリオ付きパンフのお楽しみ面白み。
●写真が趣味という中野大河
パンフレット56ページに、その中野大河撮影による役所公司、安田成美の素敵なツーショットが。
●西川美和による著書『スクリーンが待っている』
ほぼ大半を占める本作の制作過程。
最も最近の「夜明け前」撮影の笠松さんと役所広司さん、監督との映画談義が楽しい!ジョーカー、タクシードライバー、キングコング対ゴジラ、帝国の逆襲…
そして最後はこう締めくくられている。
「最良の時が、最後の時だ。次はまた、もっとすばらしき世界が待っている。」
●幻の母親役となった八千草薫さんのこと、日本でのロケ撮影のこと、役所広司さんとシナリオと対峙しての言い回しのこと、など。『すばらしき世界』出来上がった映画の裏側で繰り広げられた出来事の数々。
役所さんの帯コメント通り「映画作りの教則本です」
※Memo3
●動画1
役所広司は切り札(ジョーカー)だ
映画『すばらしき世界』西川美和監督インタビュー
(インタビュー部分、約7分プラス予告編)
https://www.youtube.com/watch?v=HHJyQIUryz4
●動画2
本編映像
パンフレットに掲載されているシナリオ決定稿中
シーン59(途中)から60(こちらも途中まで)
https://www.youtube.com/watch?v=Smi_jmYE_CY
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