2021-10-27

『ひらいて』首藤凛監督、綿矢りさ原作、山田杏奈、作間龍斗、芋生悠、他

ひらいて

監督 : 首藤凛
原作 : 綿矢りさ
出演 :
山田杏奈
作間龍斗
芋生悠
山本浩司
河井青葉
木下あかり
板谷由夏
田中美佐子
萩原聖人、他


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Memo1
今年ベスト級の素晴らしさ。
着地点が見えないまま見続ける3人の関係性の行方。
ラスト、おぉっとなって大森靖子主題歌。完璧。
編集がいいなぁ、と思っていたら監督自身でした。
各ショットの長さ、切り返し。
よいわー。
演者のパワーもそのまま映画のエネルギーとなっている。
たとえの作間龍斗(ジャニーズJr. HiHi Jets)。
よく芸能人が「"オーラを消して"普通にコンビニとか行くよ」と話してる、オーラを消して目立たないように振る舞うが、勉強を教えてもらう同級生らが結構いるし浮いたところもない絶妙感。そして謎の部分。
美雪を演じた芋生悠。声が印象的。
だからこそのモノローグ、ボイスオーバーだと思う。
どこかへ飛んで行ってしまいそうなストーリー展開の熱を冷ます上でも、この声ということは重要。表情がよい。
もしかすると大ベテランと呼べるぐらいに出演作多数の愛役、山田杏奈。推薦楽勝で大学へも行ける成績。学園祭の実行委員もやり、母親との関係性も淡々としているがギクシャクはない。しかし密かに自分だけが、見つけたと思っている、たとえに彼女がいることを知ってしまってからの逸脱。

Hira1

綿矢りさがインタビューで「どうしてこういう設定の物語を描こうと?」の問いに「書きたいと思った瞬間から書いてたような気がします。」
他人、自分以外の人のことを100%理解することなんて不可能なわけで、そう言った意味でも愛の途中から何をやっているのか、何をやりたいのか、わからない暴走モードは凄すぎる。(おそらくは本人も更には演じた山田杏奈にも)
強烈な衝動と"もやもや"の振幅。
そしてディティール。
ヘアアイロンのカットで「こういう描写、映画で初めて見たかも」と思っていたらキネ旬、首藤凛監督へのインタビューで、そのことについて答えていました。
(さらに細かいです)。
パッツンきっちりヘアスタイルや整頓された部屋もぐちゃぐちゃに。
それと爪も。
最初はネイルケアも行い、整っていたのが、たとえが誰か他に好きな人がいることがわかってから徐々にボロボロになっていく。
「爪は、お母さんそっくりね」
(全く気づかない母)


Hira2

美雪が漫画雑誌を読んでいる。
愛が「最近、何か面白いのある?」って聞いて答えた漫画タイトルが『チェンソーマン』
「えっ、それって、どんな話」
「悪魔がね…って、悪魔ってわかる」
奇妙な最初の会話(噛み合いそうもない)から、カラオケボックスでの(見ているこちらが気まずい空気という不思議感覚)近づいていく距離。
(それぞれの選曲、あいみょんとジュディマリ)
そして、美雪がたとえとつきあってることを知ってからの暴走する感情。
ここが意見が分かれるところかもしれない、愛と美雪の関係。
(実はお互いに、ないものの輪郭が見え始めるラブシーン、ベッドシーン)
もはや何をやっているのか自分でもわからなくなっている愛。
たとえの父親が暴力を振るっていて、たとえの身を案じバスでたとえ宅へ向かう美雪。
偶然、遭遇してついていく愛。
美雪の隣に座っている。
「愛ちゃん、何しに行くの?」
(いやいやいやいや、見ているこちらも聞きたいです)
もう、この辺りでは全く意味不明となっている。
それにしても蒲鉾親父(たとえの父)
身勝手気味に相手のことを考えず突き進む、愛の反転姿として描かれているとしても、さらに空気読めなさすぎの蒲鉾話し(怖いわ..)
最初、もこもこヘアスタイルで演じているのが、誰かわからなかった荻原聖人。
「CURE」想起の気味悪さ(かまぼこを切る包丁が…)
パンチ一発、キック一発。
3人それぞれの欠けていたもののパズルが少し埋まり前へと進む。
(愛はたとえと美雪に、たとえは愛に、それぞれかなりきついことを言ってきたのだが、一番傷ついているはずの美雪が綴った、この手紙には心震えた)




「およそ忍耐力など持ち合わせていない人が、たとえ打算であっても私の前で辛抱強くふるまい続けたのなら、ほんのひとときでも、心を開いてくれたのなら、私はその瞬間を忘れることができません。」





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Memo2
パンフレット。
24ページ/A4変型
出演者インタビュー
監督インタビュー
原作・綿矢りさインタビュー
プロダクションノート

Hiraite

『週刊文春 CINEMA!2021秋号』
期待の監督10人。
首藤凛監督の勢いある文章が他の方と一線を画していて面白い。高校の文化祭で作った映画の話し(他人の20分を奪ったクソみたいな映画に対しての作る事の怖さ)が、そのまま"映画"みたいだ。この熱度が『ひらいて』を生み出したことがわかる。(実際、この年の冬に「ひらいて」に出会っている)
岩永洋さんによる撮影
『ひらいて』『サマーフィルムにのって』『街の上で』と話題作が続く。それぞれの作品によって違う味わいを見せる。
ほぼ、順撮りだということも功を奏している。
余談 >>>
劇場のロビーが高校の廊下みたいになってた。


(文中敬称略)








※密かに補足
Memo2の最後の部分。
バスで愛と美雪が、たとえの家へ行くシーンは原作とは順番が違います。映画ではラスト近くとなる美雪からの手紙「〜私は私はその瞬間を忘れることができません。」を受け取って、愛の家へ行ったタイミングで向かうので「何しに行くの?」にはならず二人、わかった上での行動です。そのあとの、たとえの父親が「女ふたりに助けられて、情けない」からのパンチ一発は原作と同じです。
本作、すごくよくできているのは原作を先に読んでいても受け取る印象が変わらないところ。逆に本作を見て、原作を読んでみることも、また自分なりの広がりが持てて豊かさの増幅が得られるのでは?などと思っています。







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2021-10-24

『DUNE/デューン 砂の惑星(DUNE: PART ONE)』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ゼンデイヤ、他

デューン 砂の惑星
DUNE: PART ONE

監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : ティモシー・シャラメ
レベッカ・ファーガソン
オスカー・アイザック
ジョシュ・ブローリン
ステラン・スカルスガルド
ジェイソン・モモア
ハビエル・バルデム
ゼンデイヤ、他


Dune001




Dreams are messages from the deep.




Memo1
キャスティングが素晴らしい。
予備知識を入れずに見たので「エッ?!この人がこの役を」と驚くことしきり。
(特にシャーロット・ランプリング)
冒頭、眠くなるかなぁと思って見ていたドラマ部分の丁寧さは、むしろ好感。
このテイストのまま完結してほしい。
予定されている3部作+女性だけの組織ベネ・ゲセリットの事を描くドラマシリーズ。(まさに後述、女性側のストーリー)
いわゆる、英雄・貴種流離譚。
ティモシー・シャラメ演じる主人公、ポール・アトレイデス。
登場した時のシルエットの細さがプリンスであり、のち(PART TWO)に展開される砂漠の民フレメンのリーダーたる姿への変容を考えても、よい配役。
随分、昔に原作読んだので忘れてたけど惑星生態学者カインズ博士が女性に変更されていた。
母、教母、博士、フレメンのチャニ。
インタビューでも「女性側のストーリーを語るんだ」と答えている通り、やはりヴィルヌーヴの作家性が滲み出た作品となっている。
特に母、ジェシカのポールに対する視線は独特だ(続きで何か原作と変えるかも?)
『アラビアのロレンス(Lawrence of Arabia)』との類似。
(これは他作品含め監督自身も発言している)
「砂漠では2種類の生き物しか楽しめない。ベドウィンと神々だ」
ドライデン顧問(クロード・レインズ)の台詞。
デューンでのフレメンはまさにベドウィンだ。
アカバ攻略の際の死の砂漠横断とアラキス山脈へ抜けるために越える砂嵐(コリオリの嵐)やロレンスが初めて人を殺すことになるガシムとの件(くだり)と「今まで、誰も殺していない」と言うポールが挑まれる決闘。それによって部族に受け入れられる展開。

ラスト、サンドワームを乗りこなしているフレメンの姿を横目に移動を開始するポール、ジェシカとフレメンたち。チャニ(ゼンデイヤ)の台詞にあるとおり「始まったばかり

Dune002

Memo2
タイトルデザイン > PRODIGAL PICTURES / DANNY YOUNT
(現時点でタイトル動画なし。以前、手がけたブレードランナー2049 スタジオロゴなど有り
https://prodigalpictures.com/work/
Crafting Music & Creating the World of Arrakis in Dune | Discover it in Dolby Cinema
3分45秒あたりからサンドワーム出現シーン
https://www.youtube.com/watch?v=od0w9OhvFI0
(一度、アナログ化) ノーラン監督が行っているフィルム撮影ではなく、この工程で行われている。
→Alexa IMAXカメラによるデジタル撮影→編集→ポスプロでデジタル映像をフィルム撮影→ネガを作成→そのネガをスキャンし直してデジタル形式に戻す。
ICGMagazine October 2021 Digital Edition
32P-49Pにわたって『DUNE』特集。
(無料で閲覧できます)
https://www.icgmagazine.com/web/october-2021-digital-edition/
オーニソプター(Ornithopter)の図面、出ていないかと検索するも今のところなし。
7人乗りと2人乗りでデザインが違うのもよい。(実際、この実物サイズを製作したらしいオーニソプターを見られただけで入場料の元は取った、と思ったぐらい。まあ見た感じがアレとかアレに似てるという指摘も多々ありそうだけれど、インダストリアルデザインとして実物が作れるぐらいに細部が美しい)
あのロケ地はどこ?
Where was Dune filmed? Guide to All the Filming Locations
(アトレイデス家の拠点、惑星カラダン > ノルウェーのKinn (island) 大きな二股の岩、など対比して掲載)
https://www.atlasofwonders.com/2021/10/where-was-dune-filmed.html

余談 >>>
ティモシー・シャラメが昨年8月の追加撮影の時にオスカー・アイザックらと『狼たちの午後』を一緒に観た話、好き。

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Memo3
『DUNE/デューン 砂の惑星』
パンフレット
「ブレードランナー2049」と同一判型/40P
人物相関図、キーワード、監督&ティモシー・シャラメ/クロストーク、キャストインタビュー。DUNE HISTORY、批評、コラム、プロダクションノート、など。

Dune

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デイヴィッド・リンチ監督『砂の惑星(Dune)』(1984年)
タイトルデザイン
(Title Lettering by : Robert Schaefer /Titles by : Title House)

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4:3アスペクトのアラン・スミシー版『デューン/砂の惑星』(2枚組)引っ張り出してきて見てみた。プロローグ。6041年皇帝支配が始まる以前のことが紙芝居で語られる。本編始まってもナレーションでつないでダイジェスト、見てるみたい。(でも予習、復習には最適かも??)いわゆるデイヴィッド・リンチ監督版を189分のテレビ放映用に再編集したもの。トラブルからアラン・スミシー名義に。


これはSF大作ではない。どちらかというとアートフィルムだと思う。そう言った意味でもヨハン・ヨハンソンの不在は大きい。おそらくワーナー側の思惑からのハンス・ジマーでは?とも思ってしまう。鳴りすぎ感は否めない。ピッタリの楽曲も多いので、その点残念。大振りな構図とミニマムさの狭間がヴィルヌーヴ監督の持ち味。
ワーナー側が(うっすら)発言している通り「パッケージとしてのデューン」の価値がポイント。なのでHBO Maxで製作されると思われるドラマシリーズは、ヴィルヌーヴ監督はショーランナーだけを務めてアクションやドラマツルギーに長けた別監督が起用され、アートフィルムDUNE: PART TWOと合わせて世界観が増幅されるのでは?と、勝手に推測・夢想する。




 













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2021-10-18

『草の響き』斎藤久志監督、佐藤泰志原作、東出昌大、奈緒、大東駿介、他

草の響き

監督 : 斎藤久志
原作 : 佐藤泰志
(『きみの鳥はうたえる』所収)
出演 : 東出昌大
奈緒
大東駿介
Kaya
林裕太
三根有葵
利重剛
クノ真季子
室井滋

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Memo1
東京が舞台だった佐藤泰志原作を函館ロケに。
それが功を奏している。
作者の実体験が投影された本作において見晴らしの良い公園の土手やベイエリアを走る主人公・工藤和雄(東出昌大)の姿は鮮やかだ。ただ、それも走っていなければならない理由があるのだが。
脚色された点で一番、大きいのは和雄の妻・純子(奈緒)の存在。その事によって親友、佐久間研二(大東俊介)以外の第三者視点が増えた。それと下の世代である彰(Kaya)ら3人との対比も。原作は1979年発表。そういえば(随分以前ですが)読んだ原作、フリスビーとか出てた(そもそも彰は暴走族だったし)。
斎藤久志監督と脚本の加瀬仁美さんが夫婦だったことは、後で知りました(しかも発注時に妊娠されていたことも)。
それだけに本作の物語の運びや、気配、トーンに驚く。
物語の軸は和雄、純子、研二(病院に連れて行くことになる終盤のシーンは凄い)と彰、弘斗(林裕太)、その弘斗の妹・恵美(三根有葵)。運動療法としてランニングをする和雄にいつの間にか彰が並走して付いてくる。(そしてへばりながら弘斗も)。この走るシーンの繋がりが実に上手い描き方だ。見ている側としては「あぁ、これで良くなっていくのかなぁ」と思わせられる。しかし、そうならないのが人の心、精神の見えにくさである。結果、ふたりとも選ぶ道が同じである点も。(結末は違うが)

和雄の治療療養のため、地元である東京を離れ全く友だちも知り合いもいない函館に引っ越した上、淡々と家事をこなしケーブルカーの案内の仕事も行う純子。全く気遣いの無い和雄に対して、その感情のわかりにくさが、ややもするともどかしい。そんな純子が感情を露わにするのが妊娠を告げた時だ。「自分だけ傷ついたような言い方しないでよ」
ふたりはどうやって知り合ったのだ?
(同じ出版社で知り合って結婚したことがラスト近くの台詞でわかる)
「何も言わず、すっと荷物を持ってくれて、後ろ姿見て、あー、わたし、この人のこと好きだなって思って」
「ちょろいかな」
「ちょろいよ」
冒頭、ふたりの会話。
「今日、車運転していると目の前をキタキツネが横切ったんだよ」
「この辺りではキタキツネ、出ないよ」
「えー、そうかなぁ」
ラスト、和雄の自殺未遂、産まれてくる子供のこともあるのだろう、函館の家を引き払い実家に戻る純子。車を運転していて、ふと止まる。キタキツネだ。
(このシーンの感情を表し演じた、奈緒が印象的)
ここで和雄が病院から電話をかけているのだが留守電になっていて会話で終わらないところが素晴らしく良い。どうなるかはわからない。そして、和雄は病院の窓から逃げ出し、走り出す。

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Memo2
「草の響き」函館ロケ地マップ
(A4判、両面カラー印刷、三つ折り)
PDFダウンロード リンクあり
https://www.hakobura.jp/info/news/12041.html
パンフレット。28P
監督(斎藤久志)、脚本(加瀬仁美)インタビュー。
批評 (福間健二、小柳帝、篠儀直子、中澤雄大)
ロケ地マップ。
センターの意図的に選ばれた写真。
本編を見た後、なるほどと唸った配置。
工藤和雄(東出昌大)と和子(奈緒)がページの裏表にカラーで。

(文中敬称略)
Kusa1









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2021-10-07

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』堀江貴大監督、黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン、他

先生、私の隣に座っていただけませんか?

監督 : 堀江貴大
出演 : 黒木華
柄本佑
金子大地
奈緒
風吹ジュン、他

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Memo1
これはまさに快作。
ほぼ2時間、気がつけば(主要)登場人物が5人だけ。
あれれ?どうなるの?と、思ったままに物語の船に乗る。
楽しめた。
佐和子(黒木華)の路上教習を俊夫(柄本佑)が車で追いかける場面。
監督はダラダラしたチェイスシーンを撮りたくてヒッチコック監督『めまい』を意識したとパンフレットに出ていた。
なるほど、そう考えると該当シーン、他、いろいろと面白い。
疑心の物語でもあるし。
佐和子の母(風吹ジュン)も、ふたりが実家に帰ってきてから(うっすら)気づいているし(気にかけている)、わかっていないのは俊夫だけ。
不倫相手の佐和子の担当編集者、桜田千佳(奈緒)もバレそうな(バレている)感じを楽しんでいる節さえある。この辺り「あ〜あ」自業自得とはいえ、見ていて思わず笑ってしまう。
さて、話が進んで佐和子の方も教習所・教官、新谷(金子大地)が「隣の席」に座り、ハンドルとアクセルを踏んで一歩踏み出す勇気をあたえてくれる。王子様登場である。この2カップルスタイルは艶話的に寄せてスクリューボールコメディになりそうですが、そこを変速復讐譚にしているところも快作たる所以。(何を考えているのか解りにくい佐和子が最後の最後にビンタといったところも)
実写パートと漫画パートのバランスの面白さ。(劇中漫画はアラタアキ、鳥飼茜)
(ちょっと粗探しのような感想を見たので→)ネームにいきなりペン入れはないとは思うけれど、物語進行上のことば選びとしては、これでOKだと思う。
ラスト。
俊夫のひと言がシナリオだと「嘘」だけど「うっそぉ〜」になっていて言い回し含め、幕引きとしてピッタリ。
そして思い出しましょう。
本作のタイトルは『先生、私の隣に座っていただけませんか?』

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パンフレット。
表紙がそれぞれ佐和子と俊夫に分かれている。
さらに、それぞれにイントロダクションと物語が別々に組まれた構成。
組版も佐和子は横組み、俊夫は縦組み。
対談、コラム、キャスト・スタッフプロフィールなど。
音楽は渡邊琢磨。
なんと!今年公開3作品目(あのこは貴族、いとみち)
佐和子の実家。
セットの間取りとインテリアなどが写真入りで詳細に。
俊夫(柄本佑)が持ち込んだ亀も。
洋風のお屋敷 | CINEmadori シネマドリ |
映画と間取りの素敵なつながり
https://www.athome.co.jp/cinemadori/10275/



 

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2021-09-30

『空白(Intolerance)』吉田恵輔監督、古田新太、松坂桃李、田畑智子、片岡礼子、寺島しのぶ、伊東蒼、藤原季節、他

空白
Intolerance

監督・脚本 : 吉田恵輔
出演 : 古田新太
松坂桃李
田畑智子
藤原季節
趣里
伊東蒼
片岡礼子
寺島しのぶ

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Memo1
英タイトル「Intolerance」と示すように「不寛容さ」について語られた映画。
100年以上前に撮られたD・W・グリフィス監督同タイトル作品も迫害や無実の罪を起こす心の狭さが描かれていた。
しかし、本作、ほのかに心が変わる瞬間も過ぎり、そこは閉塞感からの出口で実はヒントなのかもしれない。
「寛容さ」「赦し」への道標。
「負の連鎖」とも違う「落とし所」「怒りの納め所」が、わからぬが故の添田充(古田新太)の「あたり散らし」「拳のふるい方」は、周囲までをも歪め始めてしまう。その描き方の容赦なさ。
「普段から、ボランティアもしてるし、ちゃんとして生きてます」と周囲に「善意の押し売り」と受け取られない空気を醸し出しているスーパーアオヤギのパート店員、草加部麻子(寺島しのぶ)。
店長・青柳(松坂桃李)をずっと気にかけている(というよりも気がある。腕、しっかりしてるよぉ〜と触りにいくシーン。困った青柳の反応)。その割に同僚の店員には、ボランティアを手伝ってもらってるにもかかわらず態度が厳しい。
当事者でない人、特に学校側の対応。もしかするとそんな話はなかったかもしれないのに「以前、卒業生のお姉さんが、あそこのスーパーで痴漢に云々」と嘘でもなんでもよいから火の粉を払うような言動も。
添田の元妻・松本翔子を田畑智子。
吉田恵輔監督『さんかく』以来11年ぶりの出演。
添田を目覚めさせるのは、事故を起こした(呵責の念から、というよりも真面目な気質から自殺してしまう)娘の母親(片岡礼子)からの「娘を許してやってはもらえませんか」という、愛情の籠もった言葉。その態度。
それを機に物語は少し転調する。
「自分は娘のことを何も知らなかったんじゃないのか」

誰かは知らないところで見てくれている。
(ここ、本作で最も好きなシーン)
青柳を救う言葉が全く予想もしないところからかけられる。
スーパーを閉め工事現場の警備員をしている。
通りがかった若いトラック運転手。
「あの、すいません」
「スーパーアオヤギの店長さんですよね」
「店長の唐揚げ弁当、俺、好きだったんスよ」
「また、弁当屋さんでも始めてくださいよ。そしたら、俺、買いに行きますから」
「おつかれさまでした」
その青柳を慕い同じ船に乗って漁師をする野木(藤原季節)
(彼も非常に良い)
「俺、充さんが父親だったらキツイッすわ」
そう言いながらも実は一番気を遣って添田のことを見守っている。ラスト近くでわかることは父親がひとりで海に出て亡くなっていたということ。手を怪我した上に漁を続ける添田をまた失いたくないということ。
終盤。タクシーの中での3人。
添田、翔子、野木。
「みんな、どうやって折り合いつけるのかなぁ」
射し込む光が美しい。
そして、ラスト。
娘・花音と同じ雲を見ていたことを知る、添田。
その表情。

前作同様、上映時間が同じ107分。
近年の他映画からすれば短い。しかし、観客への台詞などで説明しきらない想像の余白、静かな余韻を残してくれる秀作。

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Memo2
パンフレット。
表紙写真とデザインに驚いた。
この場所は表4まで広げると判るのだが事故が起こった、あの道路。
てっきりポスターなどに使われている古田新太と土下座している松坂桃李の写真が使われるものだと思っていただけに意表を突かれた。
そして一撃。
古田新太×松坂桃李対談、監督インタビュー、プロダクションノート、他、掲載。
前作『BLUE/ブルー』に続いて絶妙タイミングで出るメインタイトル。前者はリングへ上がる冒頭、本作は事故が起きた、あの場所、あの位置に、あの文字で。(タイトルといえば『ヒメノア〜ル』のようなビックリするパターンもあった!)
『空白』愛知県蒲郡市ロケ地マップ(PDFダウンロード可)
https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/kankoshoko/kuhaku.html

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『DVD&動画配信でーた』2021年4月号「吉田恵輔全仕事」と10月号「空白」インタビューによると来年公開予定の次回作はふざけまくっていて「あいつの巨匠期間は半年間だったかって思われるのが楽しみです!」「お前は何がしたいんだよ!どっちに行きたいんだって言われる監督では居続けたいですね」と語っていて、これまた楽しみな作品。

 

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2021-09-29

ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる『ムーンライト・シャドウ(Moonlight Shadow)』エドモンド・ヨウ監督、小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、臼田あさ美、他

ムーンライト・シャドウ
Moonlight Shadow

監督 : エドモンド・ヨウ
原作 : 吉本ばなな

出演 : 小松菜奈、宮沢氷魚
佐藤緋美、中原ナナ
吉倉あおい、中野誠也
臼田あさ美

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Memo1
彼岸と此岸を隔てるものは川だ。
そして繋ぐものも、思いをはせるために横たわるのも川だ。
ある種、夢を見ているような感覚。
時間の伸縮で言うならば、それは長い。
印象としての時間と実際の時間。
監督がインタビューで答えている通り、原作よりもかなり肉付けされた登場人物。
小説の映画化が(逆説的な意味ではなく)すごく文学的に見える。
映像から立ち上る行間は詩的だ。
さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)、柊(佐藤緋美)、ゆみこ(中原ナナ)、麗(臼田あさ美)の間に紡がれる時間も、川の流れのごとく、蜘蛛の巣のように地下に張り巡らされた地下の水のように、繋がっているようで変化し続け曖昧な感じだ。
4人が初めて顔を合わせるシーンがとてもよい。
柊とゆみこを見て反応するさつき。
それにしても、さつきを演じた小松菜奈のアップ絵の力強さたるや。(「渇き」以来、ずっとテレビよりも映画での出演作を見ている気がする。それほどにスクリーンが似合う)
出演者以外にも撮影、カラリスト、他、気になることがいっぱい。
そして印象深い音楽のトン・タット・アンさん
(『朝が来る』もそうだったのか、とMUBIをチェックして驚いているところ)
An Ton That
https://mubi.com/cast/an-ton-that
色のトーンについては何度もディスカッションを重ねたという通り、本作の文学性を創り上げる一端となっている。
さつきの赤のコートは(おそらくカラコレで強調されてると想像)強烈なイメージを残す。それはラストで喪失から踏み出して足を進める力強さにも繋がっていく"赤"だ。
ロケ地を調べると劇中、最も印象深い"あの橋"は東京都羽村市「羽村堰下橋(はむらせきしたばし)」
(google Mapに入力するとストリートビューもあるので、まさにあの場所へ飛ぶことができます)
これは、ちょっと行ってみたい。

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Memo2
パンフレット。
大島依提亜さんによるデザイン。
監督、キャストインタビュー、植本一子エッセイ、シナリオ決定稿(高橋知由)、他
(以下、大島さんのtwitterより引用)
上製本でもはや“本”(スピンやはなぎれも)
さらに表紙は金属的光沢の群青色のパール紙を使用。
谷川俊太郎さん詩/木下龍也さん岡野大嗣さん短歌の書き下ろし等、ナナロク社さん完全編集の中身も本気の書籍です。
これは本です、と語ってくる「もうひとつの仕掛け」が洒落ている。
(購入者のお楽しみとして)
買われた方の映画と映画館の思い出に

吉本ばなな原作本。
リアルタイムで読んだ当時、内容とともに話題となった装丁書籍を探したが見つからず、現在底本とされる新潮文庫版で再読。
「七夕現象」→「月影現象」
「うらら(ひらがな名)」→「麗(うらら)」
と、大きな差異はそれぐらいだ。
喪失からの一歩。
進んでいく「さつき」のモノローグ。
原作も映画もラストは同じ。
等。私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それは止めることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる
Moon2

 

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2021-09-28

『ショック・ドゥ・フューチャー(Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE)』マーク・コリン監督、アルマ・ホドロフスキー、他

ショック・ドゥ・フューチャー
Le choc du futur/THE SHOCK OF THE FUTURE

監督・製作・脚本・音楽 : マーク・コリン
出演 : アルマ・ホドロフスキー
フィリップ・ルボ、クララ・ルチアーニ、
ジェフリー・キャリー、コリーヌ、他


Futur3

Memo1
音楽が生まれる瞬間の映画。
このような描き方があったのか!
1日で語るミュージシャンの現実と希望。
78分が短い。もっと浸りたい。
オープニングからドキドキした。
アナがベットから起き上がり、煙草を吸い、一息置いて(神殿にも見える)シンセサイザーの前に座る。
そして、音が流れる。
シンセサイザーとスピーカーが幅いっぱいに映るスコープサイズだからこその高揚感。
アナを演じたのがホドロフスキー監督の孫(祖父がホドロフスキー監督と表記するより、こちらの方がインパクト大きくて、ちょっと驚いた)
監督インタビューでの言葉
先見性を持ち、未来の音楽を予知した女性の物語
劇中、アナとボーカル入れにやってきたクララが打ち解ける(と、いうかハイになって)見るアニメ「シャピ シャポ」音楽がフランソワ・ド・ルーベ(冒険者たち、さらば友よなど)。やはり監督インタビューで知ったが「映画音楽の...」だけではなく「フランスにおける電子音楽の先駆者」といった位置づけもあるのだ。その他、とりわけエレクトロ・ミュージックへの造詣が深いマーク・コリン監督が、だからこその音楽映画といえる。そして、過去映像ドキュメンタリーではなく「映画」として描かれたことは幸せなことだ。
それにしても、この時代のセクハラ、パワハラ度合いは酷い(「男なら時間を守る」ってなんだ?!)。デビューするということはメジャーレーベルからレコードを出すこと。それしか方法がなく、アナもその呪縛の中で嫌な発注者(CM音楽)と会話を交わしていくこととなる。ほとんどの男性が、そのような接し方をする。(最初、リズムボックスを持ってきた部屋の持ち主の友人も「見返り」のような口ぶりを見せるところも)
結局、アナとクララで創り上げた音楽(曲)を大物プロデューサーは鼻にもかけず落胆するアナ。しかし、友人の弁護士が部屋から連れ出して案内してくれた女性歌手のレコーディングを見て、再び音楽へ戻ることとなる。この短い転調と呼べるシーンが、そのままcodaへつながるシンプルな構造。

Futur

Memo2
パンフレット
24P。日本語タイトル表記なしなのが素晴らしい。
監督インタビュー、野田勉(ele-king編集長)レビュー
スタッフ、キャスト(と言っても監督とそのバンドのみですが)、他
アナが魅せられたリズムマシン Roland CR-78。
のちにTR-808からTR-909へ(パンフレットで知ったのだが、本作で置き時計表示が9:09でTR-909へのオマージュだったなんて、監督のすご過ぎるエレクトロニック・ミュージック愛)

Futur2

こちらはTR-808 誕生から40周年のRoland記念サイト。
歴史はCR-78の紹介からスタート。
https://www.roland.com/jp/promos/roland_tr-808/

Futuree

ラストシーン
またシンセサイザーの前に座り曲を作り始めるアナ。
他の人には見えなくても確実に感じている未来の音楽。
そこからエンドロール。
最高。


 

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2021-08-29

『いとみち』横浜聡子監督、駒井蓮、豊川悦司、西川洋子、黒川芽以、ジョナゴールド、他

いとみち

監督・脚本 : 横浜聡子
原作 : 越谷オサム
出演 : 駒井蓮、黒川芽以
横田真悠、中島歩、古坂大魔王
宇野祥平、ジョナゴールド
西川洋子、豊川悦司

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原作未読で鑑賞。

Memo1
時間が経過して色々なシーンが浮かんでくる作品がある。
本作がそうだ。
見た瞬間もよかったが、じわ〜っともう一回見たい!と。
ご当地映画としても過不足なく、そして押し付けがましくもなく上品に成立している。
津軽三味線名所(岩木山・浅虫海岸・弘前れんが倉庫美術館)、ご当地アイドル(りんご娘・アルプスおとめ・ライスボール)、そしてりんご(アップルパイ!)
駒井蓮さん演じるいとの「ぐぬぬぬぅぅ」といった声が聞こえてきそうな悔し顔を思いだし笑いした。
あんな漫画でしか見たことのない表情、実写で初めてみた。
また、場面場面で変化する表情も本当に素晴らしい。
パンフレットの写真だけでも同一人物とは思えないほどの印象。

通学列車が一緒で初めてできた友だち、早苗(ジョナゴールド)
父親や他の同級生、周りの人たちとは違った表情を見せる。
半ば家出(祖母に「頭、冷やしてこい」と父親とともに出されたのだから家出でもなくなる 笑)のような形で三味線(持って行く必要がないのだが、なぜか目に付いた)とバッグを持って早苗の家に泊まる、いと。
ここのシーンも好きな場面。
早苗「いとっちは三味線弾いだ方がいいよ」
いと「なして」
早苗「うん、なんとなく」
この前段階があってのラスト、津軽メイド珈琲店でのライヴ。
いとの父親、耕一(豊川悦司)。
『子供はわかってあげない』でも雑な日焼けの不思議能力・海パン父を演じていたが、本作でも幼くして母親を亡くした、いととの接し方に戸惑いを隠せない父親を好演。
父と娘の距離感。どこかよそよそしい。
お互い、打ち解けようとしても打ち解けない。
メイド珈琲店が経営者のオーナー逮捕で危機に陥った時、初めて語彙を荒げて、いととぶつかる。
(母親とのこと、周囲の同情などで)感情を表に出さず、泣かなかった、いと。
そんな二人の気持ちが通じるアイテムとしての珈琲。
父、耕一がいつも母親の仏壇に供えていた珈琲を、いとが初めて入れて父に出す。
会話はなかったが、成長した、いとの心を映した素敵なシーンだ。

周りの人たちも素敵。
永遠の22歳(って言った瞬間、笑ってしまった)本当はシングルマザーでいろいろ大変なのに、いとの心をほぐしていく先輩メイド、葛西幸子(黒川芽以)。浅虫海岸での慰安旅行。ここでの会話がまた、いとの心をほぐす。
同じく先輩メイドの智美(横田真悠) 漫画家志望で東京行きを目指している。上昇志向のように見えて友達もいなくて絵を描くだけと、いとに感情をぶつける。それが、またお互いの心を開いていく。
珈琲店・店長、工藤(中島歩)の結果的に信頼のおける立場に。接し方が丁寧。
いとの祖母 ハツヱ(西川洋子)
娘(いとの母)、いとに三味線を教える(伝える)。実際に高橋竹山の最初の弟子ということを後で知ってびっくり。演者としても、いとと耕一の良き理解者にしてメンター。まなざしが優しい。玄関で必ず干し餅を出してくるところが、また良き味。
いとが青森空襲の記念館に行くシーン。
(監督が以前に「イヨマンテ」を見たときに打ちのめされたのと同様の衝撃を、いとに感じてもらいたいとイメージした映画)『女と男のいる舗道』で、アンナ・カリーナ演じる主人公ナナが『裁かれるジャンヌ』を観て涙を流す、あれくらい美しくて衝撃的なシーンが撮れないものかと思って。(監督インタビューより)
そして、ラスト。
リニューアルしたメイド珈琲店での三味線ライヴ。
「...わあは、好ぎだように弾ぎます」
満を持して、どっしりと力強く三味線を弾く、いと。
そのまま、岩木山への父、耕一との登山シーンへ。
津軽平野を見下ろし、家のある方へ手を振る。
「わあだぢ。ちっちぇな」
逆に岩木山に手を振る、いと。

横浜聡子監督のすべての人に向けるまなざしは、そのまま見ている観客にも素直に届く。最初に書いた通り、それは初見から時間が経った今もじわ〜っと心の中に残る。


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Memo2
パンフレット
48P 
デザイン : クスハラ デザイン
監督&キャスト インタビュー、コメント。
スタッフプロフィール。プロダクションノート。
ロケ地マップ。
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シナリオ掲載(完成台本)
欄外で津軽弁を標準語に翻訳(?)してくれていて、例えば「でったらだ」「ほんずなし」や「か。け(ほら、食べろ)」とか初見(聴き)では絶対わからないし..(会話の雰囲気で伝わっていて、それがまた魅力でもありますが)


 









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2021-08-22

『子供はわかってあげない』田島列島原作、沖田修一監督、上白石萌歌、細田佳央太、豊川悦司、千葉雄大、他

子供はわかってあげない

原作 : 田島列島
監督 : 沖田修一
出演 : 上白石萌歌
細田佳央太、豊川悦司
千葉雄大、斉藤由貴
古舘寛治、他


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Memo1
それにしても、ひたすら上白石萌歌さんが笑っていて、こちらも最後まで、ずーっとニコニコして見てた。
のびのびとした屈託のなさと勢い、間合い、身体性。
画面からはみ出しております(実は今の家族のことを大事に思っていて、ずっと深いところにしまい込んでいるものもある)
オープニング。
いきなり始まるアニメ。しかも超ニッチな左官少女って 笑
このアニメを見ている美波と父親、走り回る弟、寿司を団扇(このうちわ、後も出てくる)であおぐ母。
ここをフィックスカメラの長回しで捉える(仲の良さや関係性も伝わる楽しい撮り方)
ラスト、屋上での告白シーン。原作19話。
「もじくん、あのね、私、もじくぶふぉう」そのまま、やるのかなぁって思ったら、ほぼそのままで嬉!吹き出し方がナイスタイミング。あと、見ないように(見ると笑う)手で目を隠す感じも抜群の見せ方。
豊川悦司、かなり癖あり父親役。
顔の日焼けがいかにも雑で、あー、この海岸前の家で暮らしてる感ビシバシ。
ある意味、原作越えの怪演。
ブーメランタイプの競泳水着を着て仁王立ちする父
「僕にも、泳ぎ、教えてくれよ」
(これではアブナイオヤジやん 笑)
家の前にテント張ったり、コロッケ買うついでにテレビ買ってきたり、なんだかいろいろ変だけど「娘と過ごせることが楽しい」感、出てて良いわ〜。KOTEKOのBOXセット買ってきてるし。
水泳部顧問の役名が「な」って、そのままやー。
ちなみに原作にも出てます。(さすがに映画では役名あるかと思ったら、脚本でもやっぱり「な」でした 笑)
タルンドル朔田とか細かいフレーズも。母、由起の「OK牧場」も。
もしかしてPG12って「海苔巻きちんちん」のことか?って思ったら未成年飲酒の件ね。
これもエンドロールの一番最後に「お酒は20歳になってから」の習字で補足していて、見事なオチ。

Kodomo

Memo2
パンフレット。
原作の田島列島さん描き下ろしイラスト
「屋上のふたり、その後」あり。
本編でもじくんが砂浜に「朔田美波」と描く場面、それに対して終盤、実はもじくんに会いたい美波がプールサイドに水で「もじくん」と描いた、そのシーンが描かれています。
撮影シナリオ掲載。
断り書き通り本編には無いシーンも。
同学年の水泳部、宮島が美波にパピコを膝で二つ割りして渡すところとかも。
(ほとんど膝蹴りみたいだが、あれでいいのか 笑)
あと「じゃりじゃり〜」
そして宮島との挨拶。「アデュー」は上白石萌歌さんが歌手の時に使うadieuのことだと思うけど、ちょっと小粋な小ネタ。
原作からの抽出度が絶妙。
もじくんの兄、明大の探偵シーン(父親探しと教祖が教団のお金持逃げ事件を同時に追う)がもっと多くあるけれど、父と娘の夏冒険物語&ガールミーツボーイものにしたところがシンプル&大正解。
沖田監督作品はほぼリアルタイムで公開時に見ているけれど(昨年の「おらおらでひとりいぐも」はお気に入りベストテンに)本作は格別な面白さがある。
Kodomowa

原作「あとがき」によると趣味で長編を描いてみようと思い立ってできたのが『子供はわかってあげない』しかも、これは趣味だと自分に言い聞かせなければどうにも描き出せなかった、とも。
「これは趣味だ これは趣味だ これは趣味だ 逃げちゃダメだ」には吹いた。
(サウンドトラック/牛尾憲輔)
サブスク配信されているので鑑賞後、聴ける方「走れ!!!」を是非。
おぉぉっ!ってなる。「じゃりじゃり〜」
もじくんが連絡が取れなくなった美波のことを案じて江虫浜に向かうシーンでかかる曲が、お!これって「ラブストーリーは突然に」じゃないと思ったらサントラ曲名が「左官のこころは突然に」
しかも脚本では→シーンNo.77 門司、トレンディードラマみたいに走る。
映画『子供はわかってあげない』劇中アニメ
【魔法左官少女バッファローKOTEKO】本編映像&ED
https://www.youtube.com/watch?v=7smP_TUKASY&t=1s




 

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「…チェーホフはおそろしい」『ドライブ・マイ・カー(Drive My Car)』村上春樹原作、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、他

ドライブ・マイ・カー
Drive My Car

原作 : 村上春樹
監督 : 濱口竜介
出演 : 西島秀俊、三浦透子
岡田将生、霧島れいか、他

Mycar

Memo1
何を足し何を削るか、そして膨らませるか。
村上春樹原作短編小説集『女のいない男たち』
(曰くコンセプト・アルバムのようなもの)。
骨格となるドライブ・マイ・カー。
サブテキストしての木野、シェラザード。
そしてチェーホフ「ワーニャ伯父さん」
(原作では「ヴァーニャ伯父」一行だけ記述)。
テキスト(言葉/会話)が演者を現実を侵食していく。
「…チェーホフはおそろしい」
車の中という密室。
そして、これは映画でもあり演者を写し取るでもある。
何を写し、何を映さないか。
劇中で用いられる他言語。
それは最初の舞台シーン「ゴドーを待ちながら」で提示される。
家福(日本語)ともう一人の演者(ホリゾントに字幕でインドネシア語/英語)
さらには韓国手話も。
ラスト。
パク・ユムリ演じるイ・ユナ。
失意のワーニャ(演劇祭で結果、演じることとなった家福)を励ますソーニャ(イ・ユナ)。
肩を抱くような形で後ろから手話で語る。
ここは「音」ではない形で。
「生きていかなければ」

構成は基本的に「東京編」と「広島編」
さらに : Codaとして「北海道編」「韓国編」
「東京編」
まず家福の妻、音とのセックスシーン。まだ仄暗く顔が見えない。
音から発生する物語。
それを家福は翌日、サーブの中で聞かせ直す。
ある日、予定していたウラジオストック便が飛ばず、仕方なく家に戻った家福が目撃する音の浮気現場。
に映った、その姿を家福は見る。
(角度からすると気づいていないのだろうか?)
これは後に広島でのオーディションシーンで(音の相手であろう)高槻(岡田将生)とジャニス・チャンが演じるキスシーンのと繋がる。

ある時、告げられる「話したいことがあるの」
しかし、家福はその続きを聞くことができないまま、音を失ってしまう。
ここでキャストクレジットが現れる(端正なフォント選び)
「広島編」
ドライバーとして雇われるみさき。
最初は自分にとって大事なひとりの空間を他人に任せられないと固辞するが、みさきの見事な運転、特に車線変更(音が運転している時に「あの場合はすぐに車線変更しないと」と細かい指摘をしていた)を見て任せることにする。
始まった演劇祭オーディション、
音の浮気相手のひとりだとわかっている高槻をワーニャへとキャスティングする。

(ここからが本作の肝の部分、濱口メソッドを再現しているとも言われているリハーサルシーンへと繋がるが、また再構築して追記で)

トラブルが多く、かなり不気味さを漂わせる高槻。
その高槻から聞かされる妻「音」の別の側面、物語の続き。
サーブの密室の中で初めて直接対峙する家福と高槻。
この時カメラは切り返しショットでふたりの顔を捉える。
「やつめうなぎの話の続き」を話しながら、ぼわっと浮かび上がる高槻の顔がホラー(怪異譚)のようだ。
「北海道編」
エッ?!
マジで…北海道まで車で...
(と、思ったが、この距離、時間が必要)
家福にとっては亡くなった娘が生きていれば、みさきと同じ年齢でもある。
やがて、(安直な言葉で言うならば)再生の旅が終わる。
3時間、スクリーンに映し出される出来事を観察するように見続けた我々(観客)が最後に辿りつく希望あるラスト。
みさきがスーパーで買い物をしている。ハングルが書かれた商品。
マスクをつけている。赤いサーブ。後部座席に犬の姿が。
はたして、これは家福から譲り受けたものなのか、どうなのかはわからないが後ろから顔を覗かせる犬とみさきの笑みをフロントガラス越しに捉えたショットは至福な瞬間をあたえてくれる。

Main

Memo2
そうか!三浦透子さん、2代目なっちゃんだったのか(知らなかった)
赤いサーブをロングショットで捉えた走行シーンや夜間など含め、あまりにも美しい赤で何か記載はないかとパンフレットチェック。
カラーグレーディングはIMAGICA Lab.のカラリスト北山夢人氏と判明。
本当に凄いので、これからご覧になる方は端正な色調も是非。
(それは朱色に寄った赤ではなく赤色)(Y+Mでもなく)

Car
Memo3
パンフレット。
物語、監督インタビュー、キャスト、批評、
リファレンス(ワーニャ伯父さんやサーブ900について)
ロケ地ガイド。
デザイン : 岡野登/柴田理子(サイファ) 32P
そういえば『ドライブ・マイ・カー』と同じ村上春樹・原作、トラン・アン・ユン監督『ノルウェイの森』パンフレット(レコードジャケットスタイル)も岡野登さんデザインによるもの。





 

 

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