2021-10-24

『DUNE/デューン 砂の惑星(DUNE: PART ONE)』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ゼンデイヤ、他

デューン 砂の惑星
DUNE: PART ONE

監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : ティモシー・シャラメ
レベッカ・ファーガソン
オスカー・アイザック
ジョシュ・ブローリン
ステラン・スカルスガルド
ジェイソン・モモア
ハビエル・バルデム
ゼンデイヤ、他


Dune001




Dreams are messages from the deep.




Memo1
キャスティングが素晴らしい。
予備知識を入れずに見たので「エッ?!この人がこの役を」と驚くことしきり。
(特にシャーロット・ランプリング)
冒頭、眠くなるかなぁと思って見ていたドラマ部分の丁寧さは、むしろ好感。
このテイストのまま完結してほしい。
予定されている3部作+女性だけの組織ベネ・ゲセリットの事を描くドラマシリーズ。(まさに後述、女性側のストーリー)
いわゆる、英雄・貴種流離譚。
ティモシー・シャラメ演じる主人公、ポール・アトレイデス。
登場した時のシルエットの細さがプリンスであり、のち(PART TWO)に展開される砂漠の民フレメンのリーダーたる姿への変容を考えても、よい配役。
随分、昔に原作読んだので忘れてたけど惑星生態学者カインズ博士が女性に変更されていた。
母、教母、博士、フレメンのチャニ。
インタビューでも「女性側のストーリーを語るんだ」と答えている通り、やはりヴィルヌーヴの作家性が滲み出た作品となっている。
特に母、ジェシカのポールに対する視線は独特だ(続きで何か原作と変えるかも?)
『アラビアのロレンス(Lawrence of Arabia)』との類似。
(これは他作品含め監督自身も発言している)
「砂漠では2種類の生き物しか楽しめない。ベドウィンと神々だ」
ドライデン顧問(クロード・レインズ)の台詞。
デューンでのフレメンはまさにベドウィンだ。
アカバ攻略の際の死の砂漠横断とアラキス山脈へ抜けるために越える砂嵐(コリオリの嵐)やロレンスが初めて人を殺すことになるガシムとの件(くだり)と「今まで、誰も殺していない」と言うポールが挑まれる決闘。それによって部族に受け入れられる展開。

ラスト、サンドワームを乗りこなしているフレメンの姿を横目に移動を開始するポール、ジェシカとフレメンたち。チャニ(ゼンデイヤ)の台詞にあるとおり「始まったばかり

Dune002

Memo2
タイトルデザイン > PRODIGAL PICTURES / DANNY YOUNT
(現時点でタイトル動画なし。以前、手がけたブレードランナー2049 スタジオロゴなど有り
https://prodigalpictures.com/work/
Crafting Music & Creating the World of Arrakis in Dune | Discover it in Dolby Cinema
3分45秒あたりからサンドワーム出現シーン
https://www.youtube.com/watch?v=od0w9OhvFI0
(一度、アナログ化) ノーラン監督が行っているフィルム撮影ではなく、この工程で行われている。
→Alexa IMAXカメラによるデジタル撮影→編集→ポスプロでデジタル映像をフィルム撮影→ネガを作成→そのネガをスキャンし直してデジタル形式に戻す。
ICGMagazine October 2021 Digital Edition
32P-49Pにわたって『DUNE』特集。
(無料で閲覧できます)
https://www.icgmagazine.com/web/october-2021-digital-edition/
オーニソプター(Ornithopter)の図面、出ていないかと検索するも今のところなし。
7人乗りと2人乗りでデザインが違うのもよい。(実際、この実物サイズを製作したらしいオーニソプターを見られただけで入場料の元は取った、と思ったぐらい。まあ見た感じがアレとかアレに似てるという指摘も多々ありそうだけれど、インダストリアルデザインとして実物が作れるぐらいに細部が美しい)
あのロケ地はどこ?
Where was Dune filmed? Guide to All the Filming Locations
(アトレイデス家の拠点、惑星カラダン > ノルウェーのKinn (island) 大きな二股の岩、など対比して掲載)
https://www.atlasofwonders.com/2021/10/where-was-dune-filmed.html

余談 >>>
ティモシー・シャラメが昨年8月の追加撮影の時にオスカー・アイザックらと『狼たちの午後』を一緒に観た話、好き。

Dune003

Memo3
『DUNE/デューン 砂の惑星』
パンフレット
「ブレードランナー2049」と同一判型/40P
人物相関図、キーワード、監督&ティモシー・シャラメ/クロストーク、キャストインタビュー。DUNE HISTORY、批評、コラム、プロダクションノート、など。

Dune

Memo4
デイヴィッド・リンチ監督『砂の惑星(Dune)』(1984年)
タイトルデザイン
(Title Lettering by : Robert Schaefer /Titles by : Title House)

Dune1984

4:3アスペクトのアラン・スミシー版『デューン/砂の惑星』(2枚組)引っ張り出してきて見てみた。プロローグ。6041年皇帝支配が始まる以前のことが紙芝居で語られる。本編始まってもナレーションでつないでダイジェスト、見てるみたい。(でも予習、復習には最適かも??)いわゆるデイヴィッド・リンチ監督版を189分のテレビ放映用に再編集したもの。トラブルからアラン・スミシー名義に。


これはSF大作ではない。どちらかというとアートフィルムだと思う。そう言った意味でもヨハン・ヨハンソンの不在は大きい。おそらくワーナー側の思惑からのハンス・ジマーでは?とも思ってしまう。鳴りすぎ感は否めない。ピッタリの楽曲も多いので、その点残念。大振りな構図とミニマムさの狭間がヴィルヌーヴ監督の持ち味。
ワーナー側が(うっすら)発言している通り「パッケージとしてのデューン」の価値がポイント。なのでHBO Maxで製作されると思われるドラマシリーズは、ヴィルヌーヴ監督はショーランナーだけを務めてアクションやドラマツルギーに長けた別監督が起用され、アートフィルムDUNE: PART TWOと合わせて世界観が増幅されるのでは?と、勝手に推測・夢想する。




 













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2021-08-22

「…チェーホフはおそろしい」『ドライブ・マイ・カー(Drive My Car)』村上春樹原作、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、他

ドライブ・マイ・カー
Drive My Car

原作 : 村上春樹
監督 : 濱口竜介
出演 : 西島秀俊、三浦透子
岡田将生、霧島れいか、他

Mycar

Memo1
何を足し何を削るか、そして膨らませるか。
村上春樹原作短編小説集『女のいない男たち』
(曰くコンセプト・アルバムのようなもの)。
骨格となるドライブ・マイ・カー。
サブテキストしての木野、シェラザード。
そしてチェーホフ「ワーニャ伯父さん」
(原作では「ヴァーニャ伯父」一行だけ記述)。
テキスト(言葉/会話)が演者を現実を侵食していく。
「…チェーホフはおそろしい」
車の中という密室。
そして、これは映画でもあり演者を写し取るでもある。
何を写し、何を映さないか。
劇中で用いられる他言語。
それは最初の舞台シーン「ゴドーを待ちながら」で提示される。
家福(日本語)ともう一人の演者(ホリゾントに字幕でインドネシア語/英語)
さらには韓国手話も。
ラスト。
パク・ユムリ演じるイ・ユナ。
失意のワーニャ(演劇祭で結果、演じることとなった家福)を励ますソーニャ(イ・ユナ)。
肩を抱くような形で後ろから手話で語る。
ここは「音」ではない形で。
「生きていかなければ」

構成は基本的に「東京編」と「広島編」
さらに : Codaとして「北海道編」「韓国編」
「東京編」
まず家福の妻、音とのセックスシーン。まだ仄暗く顔が見えない。
音から発生する物語。
それを家福は翌日、サーブの中で聞かせ直す。
ある日、予定していたウラジオストック便が飛ばず、仕方なく家に戻った家福が目撃する音の浮気現場。
に映った、その姿を家福は見る。
(角度からすると気づいていないのだろうか?)
これは後に広島でのオーディションシーンで(音の相手であろう)高槻(岡田将生)とジャニス・チャンが演じるキスシーンのと繋がる。

ある時、告げられる「話したいことがあるの」
しかし、家福はその続きを聞くことができないまま、音を失ってしまう。
ここでキャストクレジットが現れる(端正なフォント選び)
「広島編」
ドライバーとして雇われるみさき。
最初は自分にとって大事なひとりの空間を他人に任せられないと固辞するが、みさきの見事な運転、特に車線変更(音が運転している時に「あの場合はすぐに車線変更しないと」と細かい指摘をしていた)を見て任せることにする。
始まった演劇祭オーディション、
音の浮気相手のひとりだとわかっている高槻をワーニャへとキャスティングする。

(ここからが本作の肝の部分、濱口メソッドを再現しているとも言われているリハーサルシーンへと繋がるが、また再構築して追記で)

トラブルが多く、かなり不気味さを漂わせる高槻。
その高槻から聞かされる妻「音」の別の側面、物語の続き。
サーブの密室の中で初めて直接対峙する家福と高槻。
この時カメラは切り返しショットでふたりの顔を捉える。
「やつめうなぎの話の続き」を話しながら、ぼわっと浮かび上がる高槻の顔がホラー(怪異譚)のようだ。
「北海道編」
エッ?!
マジで…北海道まで車で...
(と、思ったが、この距離、時間が必要)
家福にとっては亡くなった娘が生きていれば、みさきと同じ年齢でもある。
やがて、(安直な言葉で言うならば)再生の旅が終わる。
3時間、スクリーンに映し出される出来事を観察するように見続けた我々(観客)が最後に辿りつく希望あるラスト。
みさきがスーパーで買い物をしている。ハングルが書かれた商品。
マスクをつけている。赤いサーブ。後部座席に犬の姿が。
はたして、これは家福から譲り受けたものなのか、どうなのかはわからないが後ろから顔を覗かせる犬とみさきの笑みをフロントガラス越しに捉えたショットは至福な瞬間をあたえてくれる。

Main

Memo2
そうか!三浦透子さん、2代目なっちゃんだったのか(知らなかった)
赤いサーブをロングショットで捉えた走行シーンや夜間など含め、あまりにも美しい赤で何か記載はないかとパンフレットチェック。
カラーグレーディングはIMAGICA Lab.のカラリスト北山夢人氏と判明。
本当に凄いので、これからご覧になる方は端正な色調も是非。
(それは朱色に寄った赤ではなく赤色)(Y+Mでもなく)

Car
Memo3
パンフレット。
物語、監督インタビュー、キャスト、批評、
リファレンス(ワーニャ伯父さんやサーブ900について)
ロケ地ガイド。
デザイン : 岡野登/柴田理子(サイファ) 32P
そういえば『ドライブ・マイ・カー』と同じ村上春樹・原作、トラン・アン・ユン監督『ノルウェイの森』パンフレット(レコードジャケットスタイル)も岡野登さんデザインによるもの。





 

 

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2021-06-06

『騙し絵の牙』吉田大八監督、大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、國村隼、木村佳乃、他

※注・ネタバレしています。
騙し絵の牙

監督 : 吉田大八
脚本 : 楠野一郎吉田大八
原作 : 塩田武士

大泉洋
松岡茉優
宮沢氷魚
池田エライザ
斎藤工
中村倫也
佐野史郎
リリー・フランキー
塚本晋也
國村隼
木村佳乃
小林聡美
佐藤浩市、他

Da2

Memo1
原作未読で鑑賞。
(古い言い回しで)ギャフンと言わせる。
騙し騙され、なんだか振り回されている登場人物が、その仕掛けた側の人たちを逆に最後、ギャフンと言わせる。
もう、この手のお話は大好物。
しかも名前だけで絶対見に行く吉田大八監督作品ときている。
さらに観客も最後にギャフンと言わされる、お見事さ。
原作はKADOKAWAから出ているにもかかわらず出版社内ロケは文藝春秋社で行われたって、どれだけ懐深い会社なの、と感心 (そもそも映画の舞台となる「薫風社」自体が「文藝春秋社」のことかなぁー、なんてイメージしながら見ていたし。笑)
タイトルに「騙し」とついている時点でなるべく情報や詳細プロットなど「見ない聞かない読まない」スタンスで鑑賞。
いろいろ後追いでインタビューなどを読むと大泉洋、当て書き原作なのですね。(これ、出来上がり見て大泉洋、フフフって笑ったでしょう 笑)
その他キャスティングの妙。これ誰かモデルいるのかなー、とか思いながらの國村隼演ずる大御所作家 笑
池田イライザにもビックリした。
塚本晋也監督がオーーーーっというぐらいに上手い、しかも味がある。
超役得でもあるが最後のギャフンにはニンマリ。
そして最後に。
やっぱり松岡茉優。
上手いわ〜。
冒頭のコップ倒しから、転換点越えてからの「負けて勝つ」キャラに変わるところまで堪能したわー。

Da1

Memo2
『桐島、部活やめるってよ』『美しい星』と元原作とは違う形で物語を現出させてきた監督だけあって本作も見事なアダプテーション(脚本 : 楠野一郎、吉田大八)
ふと『桐島、部活やめるってよ』試写のあと、監督舞台挨拶で「各地での試写会でいつもエンドロールが始まったら、ざわざわすると聞いていたけれど、初めて実際の雰囲気を目の当たりにしました」と語っていたこと思い出した。
例えるなら密林より大草原の小さな家(察して)としての書店の未来。
機関車トーマスこと東松の部屋の壁に(見間違いでなければ)割と早い段階からプロジェクトKIBAのポスターが貼ってあったので、その辺もフェア。

映画『騙し絵の牙』公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/




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2021-02-26

『天国にちがいない(IT MUST BE HEAVEN)』エリア・スレイマン監督・脚本・製作・主演、ガエル・ガルシア・ベルナル

天国にちがいない
IT MUST BE HEAVEN

監督・脚本・製作・主演
エリア・スレイマン
出演 : ガエル・ガルシア・ベルナル

物語・映画監督のエリア・スレイマンは故郷ナザレを後にし、新作映画の企画を売り込もうとパリとニューヨークを目指す。彼は最初に訪れたパリで、ルーヴル美術館やノートルダム大聖堂などに魅せられる。次の訪問先のニューヨークでも企画はボツ。しかし、彼は行く先々で祖国との類似点を発見していた。(シネマトゥディより抜粋)
Heaven
※Memo1
エリア・スレイマン監督が本人役。
監督が出くわすシーンはどこかヘンテコリンで目を丸くしてしまうことばかり。
もう、これが可笑しくて可笑しくて。
遭遇を通り越して、もはや呼び込んでいる?
(レモンを取る隣人、追いかけられる人、サングラスを交換しながら運転している警官、ワルツを踊るように隊を組むセグウェイに乗った3人、突如目の前を横切る戦車、誰もかれもが銃を肩にかけている町‥)
しかし、そこに加担することはなく傍観者として見続けているだけ。
(バスターキートンのように)笑わないのかな?と思っていたらホテルの部屋に小鳥が舞い込んで水を小皿であげるシーンは監督ともどもほっこりにっこりと思わず頬が緩んでしまった。
(エンドクレジットにCGチームが記載されていたので、この小鳥はCG?)
あと機上の窓から見える翼のぶれぶれは怖いなぁ(それでも他の乗客は全く気にしていない。このあたりもズレが描かれて別の意味で怖い)
(関係ないけれど機上の上の怪物が怖かったトワイライトゾーンがありました)
いくつものユーモアやシュールなシーンのバックボーンに流れる気配がパレスチナ人への見えない恐怖も内包していて逆にすごい。

※Memo2
あまり予備知識を入れず見てガエル・ガルシア・ベルナルの登場にビックリ。
そのシーン、パンフレットでも圷滋夫氏が書かれていたが「Heaven Can Wait」はやはりルビッチ監督「天国は待ってくれる」を想起。
Title
※蛇足
それにしても風貌が誰かに似てるなぁー、と思って途中で「あ、松尾スズキさんだ 笑」と気づいて以来、そう見えて仕方なかった(それはそれでニコニコでニマニマだが)


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2019-12-31

『旅のおわり 世界のはじまり』黒沢清監督、前田敦子、加瀬亮、染谷将太、柄本時生、アジズ・ラジャボフ

旅のおわり 世界のはじまり

監督 : 黒沢清
出演 : 前田敦子
加瀬亮、染谷将太、柄本時生
アジズ・ラジャボフ

物語・葉子(前田敦子)は舞台で歌うことを夢見ながら、テレビ番組のリポーターの仕事をこなしていた。彼女は番組スタッフ(加瀬亮、染谷将太、柄本時生)たちと、かつてシルクロードの中心として繁栄した土地を訪問する。旅の目的は湖に生息するといわれる“幻の怪魚”を探すことだったが、異国の地での撮影は思い通りに進まなかった。
End1

「危ないところに行っちゃあだめだよ」と言いながら本人は知らない土地で知らない場所へずんずんと入っていく。
このずんずんズンズンと突き進む姿が黒沢清監督との前作もそうだがとてもよい。
柄本時生さんへ要望
「妖精のような役どころ」って…笑
確かにスタッフ間の気まずい空気が漂いはじめたときの緩衝材的ポジションとしてうまいキャスティング。
ピラフの語源がプロフ
(これはちょっとメモメモ)
ラストショット。
『愛の讃歌』を歌い終えた葉子。
真正面から捉えたクローズアップ。
そのあとに黒み。
前田敦子の息遣いがかぶさる。
素晴らしき余韻。

あゝそれにしてもなんという素敵なタイトル。
始まれば終わる。終わればまた始まる。
2019年、(個人的にも)最も琴線に触れた映画。
(後述、2019年_お気に入りベスト10、1位に選びました)

タイトルデザイン
赤松 陽構造サイト
http://n-art.jp/

 End2

旅のおわり 世界のはじまり 公式サイト
https://tabisekamovie.com/



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2018-03-18

その永遠の一瞬に『ちはやふる -結び-』小泉徳宏監督、広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、松岡茉優、賀来賢人、他

ちはやふる -結び-

原作 : 末次由紀
監督 : 小泉徳宏
出演 : 広瀬すず野村周平
新田真剣佑
上白石萌音
松岡茉優、賀来賢人
矢本悠馬、森永悠希
清水尋也、優希美青
佐野勇斗、清原果耶
坂口涼太郎
松田美由紀、國村隼、他

物語・瑞沢高校競技かるた部員の綾瀬千早(広瀬すず)と若宮詩暢(松岡茉優)が、全国大会で激闘を繰り広げてから2年。真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)らと共に名人・クイーン戦に挑む千早だったが、詩暢と戦えない自分の実力不足を痛感する。そんな中、千早たちの師匠・原田秀雄(國村隼)が史上最強の名人とされる周防久志(賀来賢人)に敗れてしまい、新が彼に挑戦状をたたきつける。その後3年生になった千早は、高校最後の全国大会に向けて動くが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Chihaya

Memo1
まずは前作ブログメモ
(2016年5月11日のポストイン)
『ちはやふる 上の句、下の句』同一スクリーンでイッキ見。
(世評の高評価を我慢して下の句公開の5週間後まで待って見た)
https://color-of-cinema.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-ab39.html
2年目の夏のことや名人戦へ挑戦しようとする綿谷新、そしてその新のことを「おにい」と呼ぶ、準かるたクイーンとなる伊織のこと、さらには本作冒頭シーンへと繋がる「名人・クイーン決定戦」直前シーン(名人周防が饅頭…笑)などが描かれた配信限定スピンオフドラマちはやふる 繋ぐ』は必須かも?
(もちろん見ていなくても本作のみで十分、熱度は伝わる)
映画における3年間と実際の高校生活、そして役者としての成長。
それらが全てシンクロして起こった奇跡的な
(そして、いくつかの台詞と響き合う「一瞬」)青春映画
また、登場人物に嫌いな(好きになれないタイプの)人が出てこないという点。それは今回、新たに加わった登場人物たちにおいても。
あーっ終わってほしくないなぁ、このままずっと見ていられると思わせてくれる全体を通しての味わいともいえる部分も素晴らしい。
本作における(結果的に)太一のメンターとなる名人・周防。
甘いもの好きで、ちょっと突飛な人物造詣だと思いきや、結果馴染んでくる重要な役回り。
(最初、解説者に当人には聞こえていないけれどこんなツッコミいれられてた)
「今年も順調に留年をきめています」
「そっちは連覇せんでもよかったんですけどね」
札を取る速度そのままに台詞の上に台詞を乗せていくテンポの良さ、スピード!
(ほぼ全編にわたって)新と伊織の会話。
「やっと高校生になったんやで、私とつきおうてや」
「ゴメン、好きな人がおる」
「秒殺かっ」
他にも別の場面で
「なに塩対」
運命戦は運命じゃない
原作でも最もキーとなる台詞。
太一が周防から教えられたことと顧問の原田先生の言葉が呼応する。
ふたつの恋のうた。
しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は
ものや思ふと 人の問ふまて

恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめ

「下の句」繋がりの意味もありつつの団体戦ラストに持ってきたあたりがうまい。
そして自陣の札に対しての台詞。
「来い!」
「来い!」
偶然なのか意図的なのか「恋」とも聴こえる。
ラスト(大会終了後のパーティ)で千早と伊織がシャカシャカ振ってLINE交換しているシーンがあったりして、ちょっと微笑ましい。

C2

Memo2
若宮詩暢のキャラクター趣味。
前作「下の句」の「これは はらじゅくげんてい おめかしダディタオル」に続いて。
「これはファンクラブ限定スノー丸タオル」
「しかも直筆サイン付き!」
配信中継で急遽、解説をすることになった詩暢
(相手ゲストがスノー丸 笑)
「なんかシュールな絵面やなぁ」
そのスノー丸、ダディベアのあわら限定グッズのページ
(ちなみに綿谷新の住む町、福井県あわら市とのコラボページ)
http://www.chihaya-awara.com/goods.html
京阪乗るなら「お京はん」ではなく『ちはやふる −結び−』京阪電車大津線1dayチケット
https://www.keihan.co.jp/traffic/valueticket/ticket/chihayafuru/

『ちはやふる -結び-』公式サイト
http://chihayafuru-movie.com/

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2018-01-07

「物語」のバトンをつなぐ。 Netflix『DEVILMAN crybaby』原作 : 永井豪、監督 : 湯浅政明

注・内容、ラストに触れています。
DEVILMAN crybaby

原作 : 永井豪
監督 : 湯浅政明

Dc1

Memo1
デビルマン原作が終了した年に中東戦争が始まり翌年オイルショックが始まった時代の予兆を含めた空気感。
そこから生み出された物語。
それをそのまま2018年に置き換えることは不可だ。
ノストラダムスも日本沈没もゴジラ対ヘドラも全ては70年代前半のこと。
(それは『エクソシスト』をはじめとするオカルトブームとも呼応する。この時期の映画を現代にリメイクすることはそれ自体でハードルが高い)
本作の湯浅政明監督による「漫画史に残る物語」の新たなるアップデート
(最も顕著なSNSの扱いや「デビルマン」が既にアニメとして存在している世界という「デビルマン」原作以降に多々誕生したアニメや漫画への目配せなど)
そうすることによって次世代へ「物語」のバトンを手渡すという英断と手法は素晴らしい。
2と9話(Netflix 特有のエンドクレジット飛ばしのマーカーもラストまで出ない)が出色。
(湯浅監督自らがツイートしているとおり9話は原作でも最も衝撃的な展開が待ち受けているエピソード回。エンドクレジットの曲とその後のシーンも含めて)
映画とは違いリミテッド(ミニ)アニメシリーズ。
全話一括配信とはいえ1話ごとに同じテンションでは描かず(まだ細かく精査していないがスタッフも仕上がりもかなり違う)全体バランスのために途中緩めているエピソードも存在。
「悪意」の伝播。
転写、そしてまた伝播。
それは「魔女狩り」の時代から変わらぬ人間のメンタル構造における負(ここで負というのも二元論的だが)の部分。
それはSNSなどにおける拡散力の増幅によりさらに増している。
その中で描かれた9話。
牧村美樹の「それでも信じている」「私もデビルマンだ」というメッセージは「悪を憎み退治していくものもまた悪」といった広義な救済を描いていて強烈だ。
ラストの「明!教えてくれ!この感情はなんなんだ」と流す飛鳥了(サタン)の涙も同じだ。
しっかりと湯浅監督のテイスト(昨年の『夜明け告げるルーのうた』とも重なる)も練りこまれた作品となっている。
1話に湯浅監督の昨年の映画『夜は短し歩けよ乙女』からまさかの台詞。
「たまたま通りかかったもので」
(さすがに言いかけて途中で止めてますが 笑)
他にも「地獄の黙示録」ナパーム弾シーンや「おやっ?ゴジラ?」と一瞬見えてしまう自衛隊トラックに載せられた退治されたと思しき悪魔←未確認(未確定)など、イースターエッグ的にいろいろありそう。

Dc2

Memo2
余談1(オイルショック当時買った漫画の単行本は紙資源不足から中質紙の中でも特に質の悪い中質紙に変わり、もはや劣化の一途…)
余談2(『デビルマン』に先だつ同じ永井豪原作『魔王ダンテ』の未完のラスト。「ぼくらマガジン」廃刊の為に仕方なく描かれたと思うのだけれど「さあ!これから」と思わせての「エッ?!ここで終わり?」は唖然としたと同時に「こういう終わり方もあるのだ」と逆に強烈な印象が残っている。それは石ノ森章太郎「幻魔大戦」ラスト最終カットと共に初期漫画原風景の絶対的記憶)

DEVILMAN crybaby | 公式サイト
http://devilman-crybaby.com/

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2017-10-12

【午前十時の映画祭】黒澤明監督『野良犬(STRAY DOG)』『天国と地獄(HIGH AND LOW)』

【午前十時の映画祭】
黒澤明監督、2作品が4K上映!

野良犬
STRAY DOG
天国と地獄
HIGH AND LOW

Art_of_kurosawa

Memo
上記画像は1991年11月『七人の侍』完全オリジナル版ニュープリント公開記念の際のパンフレットより表紙(部分拡大)と2作品の紹介ページ。
『野良犬』下部分はレーザーディスク発売時のチラシ一部。
『天国と地獄』のロケ地を巡る記事(サイト)で圧倒的な質と量(各シーンと現在の場所写真多数あり。
未見の方は鑑賞後に。
サイト別館には本編に登場する自動車図鑑や電車図鑑も)
荻窪東宝『聖地巡礼・天国と地獄』あのロケ場所は何処?
http://ogikubo-toho.com/seititenjigo.html
『天国と地獄』に登場する、あの鞄。
「吉田カバン」創業者・吉田吉蔵氏による特注・革のブリーフケース。
(制作されたサンプルのひとつ/直営グランフロント大阪店オープン時に展示された際のもの)

Ak_hl

黒澤明監督作品の書家による題字。
『蜘蛛巣城』金子鴎亭『天国と地獄』西川寧『乱』から『まあだだよ』今井凌雪 (エンドクレジット表記や記述資料など確認できているもののみ)
なお広告宣伝についての題字などはデザイナーの益川進 (全て敬称略)
スコープサイズについて
「僕は『天国と地獄』が昔から好きで、人の配置や動かし方が芸術的だと思っているんです。今回はそういったことが狙える作品の気がしました」(是枝裕和監督『三度目の殺人』パンフレット撮影/瀧本幹也氏インタビューより)
今回の4K上映でわかったことは、ほんの少しの人物の動きにまで演出がなされていること。劇場や名画座、ディスクなどで何回も見ているにもかかわらず、はっとさせられる。
『野良犬』約9分間、70カットに及ぶ村上刑事(三船敏郎)が盗まれたピストルを探し求めて、東京の盛り場を歩きまわるシーンを撮影したのはB班を担当していた本多猪四郎監督
ロケーションの見事さは初見の際に圧倒されたが、今回も引きこまれてしまう熱度は変わらない。

午前十時の映画祭 8
http://asa10.eiga.com/2017/cinema/

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2017-09-29

タイトルデザイン_54 Plucky『ドリーム(Hidden Figures)』セオドア・メルフィ監督、タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケヴィン・コスナー、他

注・内容、台詞に触れています。
ドリーム
Hidden Figures

監督 : セオドア・メルフィ
出演 : タラジ・P・ヘンソン
オクタヴィア・スペンサー
ジャネール・モネイ
ケヴィン・コスナー
キルステン・ダンスト
マハーシャラ・アリ、他

物語・1960年代の初め、ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていたアメリカは、国家の威信をかけて有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAのキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は、差別や偏見と闘いながら、宇宙飛行士ジョン・グレンの地球周回軌道飛行を成功させるため奔走する。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Dream

Memo1
冒頭からの語り口が素晴らしくよい。
そして、全体から醸しだされるトーンが上品だ。
トイレやバスの座席、学校(白人専用という壁)、図書館など黒人差別がはっきりと行われていた時代。
ロケット軌道計算(チェックのための再計算も)などを行う非常に重要な仕事、計算手。にもかかわらず、黒人で女性というだけで別棟の窓もない部屋に押し込められて働くドロシーたち。
そんな環境の中にあっても深刻にならず持ち前の前向きなエネルギーで突破していく聡明なる女性たち姿に元気づけられる。
そして、本編全体にある"誰かが支えとなって応援している(してくれる)"空気。
押し付けがましいポジティブさではなく、まさに観終えたときに、よい心根と余韻を残してくれる映画だ。
ケビン・コスナー演じる本部長ハリソン。
マーキュリー計画を成功させるためへの静かなる決意を感じる。
そこには人種差別もない。必要なのは安全に確実に宇宙飛行士を送り出し帰還させること。職務のためには壁もない。
いい役だ。
ハリソンが黒人専用とかかれた化粧室の看板を壊す件(くだり)は、ちょっと胸熱なシーン。
『ムーンライト』でも素晴らしかったマハーシャラ・アリ
本作でも包みこむような優しさに溢れている。
夫に先立たれて女手ひとりで子供3人を育てていたキャサリンへの誠実な対応(初対面の時の非礼さの謝り方)そして、プロポーズシーン。
ここにも"支えとなって応援してくれる"人がいる。
当時、導入しようとしていたIBMコンピュータ。
あまりに大きすぎて設置部屋のドアから入らないシーンや実際の社員が動かし方に戸惑っている場面が。
そんな中、管理職をめざすも直接の管轄上司であるミッチェル(キルスティン・ダンスト)には、すげなく却下されていたドロシーが独学でFORTRANを学び、こっそりと動かしてしまう。その上、別棟“西計算グループ”の女性たちにもプログラミングを伝授して準備を整えておく先見性。
『ライトスタッフ』でジョン・グレンを演じていたのはエド・ハリス。
本作はちょっと若い感じだけれど、いかにも海兵隊から選ばれたパイロットで、しかもものすごく陽気、マーキュリー計画記者会見のために飛行場に降り立った際もNASAのスタッフたちとは少し離された位置にいたキャサリンたちに別け隔てなく挨拶していくナイスガイ。
(そのフリもあってのクライマックスのフレンドシップ7シークエンス)
女性は入れないことになっているブリーフィングにハリソンの計らいで参加するキャサリン。
そこでの素早いキャサリンの着陸地点再計算。
ぽかりとしている男性陣。
ジョン・グレンの台詞。
I like her numbers.
また打ちあげ間際での計算ミスが見つかった際も。
Let’s get the girl to check the numbers.
ハリソンの台詞
You think we can get to the moon?
それに対してキャサリン。
We’re already there, sir.

Hidden_figures

Memo2
MAIN ON END TITLES デザインはPlucky
(下記サイト > PROJECTS > MAIN TITLE選択/エンドタイトル動画あり。スマホの場合はPROJECTSで左にスライド)
http://www.plucky.la/projects/
キャサリンが800m離れた別棟へトイレのために走るバックに流れるのがこの曲。
ファレル・ウィリアムスの声が、また映画のトーンにピッタリ!
Pharrell Williams - Runnin'
(公式VEVO動画)
https://www.youtube.com/watch?v=9jXQBMNe01c
Kodak 35mmフィルム撮影・記事
Hidden Figures reunites Kodak and NASA
元々、記録フィルムなどNASAとの関わりにおいて40年の歴史を持つKodak。
まさに記事タイトル通り"NASAとの再会"となった。
撮影やカラーパレットについて興味深い内容。
https://www.kodak.com/Kodak/motion/blog/blog_post/?contentId=4295001217

『ドリーム』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/

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2017-09-23

"SURVIVAL IS VICTORY"『ダンケルク(DUNKIRK)』クリストファー・ノーラン監督、トム・ハーディ、ジャック・ロウデン、フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、マーク・ライランスケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、他

注・内容、台詞、ラストなどに触れています。
ダンケルク
DUNKIRK

監督 : クリストファー・ノーラン

出演 : フィオン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
トム・ハーディ
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン
キリアン・マーフィ
ケネス・ブラナー
マーク・ライランス、他

物語・1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

D_1

Memo1
チクタクチクタクチクタクチクタク
時を刻む音。
メトロノームが左右に振幅している。
1番大きな振れ幅が1週間、中央寄りが1日、そしてほぼ中心が1日。
ただしリズムは全て同一。
どの場面においても戦っているのは顔の見えない敵ではなく"時間"ともいえる。
陸でも海でも空でも。
「この救出を待つ長い行列はいつまで待てばよいのか…」
「一刻の猶予もない、すぐに出航する」
「燃料はあと、どれぐらいだ」
この行きつ戻りつ、時に前後ねじれたりする時間の中を観客は兵士たちと共にラストまで目撃していくこととなる。
そして、それ(時を刻む音)はやがて、無事帰還したイギリスでの列車内でゆっくりと止まる。
カチッ
トミーたちと同じようにホッと一息つける瞬間だ。
プロペラが止まりゆっくりとダンケルク海岸をとぶスピットファイア。
手動で車輪を出す。
詩的なるシーンはファンタジー性を帯びているようにもみえる。
読み上げられる"ダンケルクからの撤退こそ勝利"の新聞記事のボイスオーバーがかぶさり続け、音楽が高らかに鳴り響く。
ラストカット。
捕虜となるべく手を後ろで組むファリア。
燃えるスピットファイア。
(ただ、映画はここで終わらず…)
着陸したファリアの時間より既にはるかに進行している列車。
トミーの顔。
(この表情をどう、捉えるか…)
エンドクレジットへ。
最強の箱庭シーン。
それぞれの時間軸のキャストに対して観客が同一視線で体感できるように構成されている本作にあって、いきなり出る俯瞰シーン。
海岸の兵士、桟橋の人の数…
桟橋にずらりと並ぶ兵士。
近づく爆音に対して一斉に見上げる顔、顔、顔。
IMAXで見たときの奥の奥まで見える表情!
Nolan Blue(グレートーンの中にも数%のブルーが混じっているようにみえる)に浮かび上がる炎のオレンジ
本作はほとんど流血とよべるシーンがない。
唯一、そのようなシーンがあるのは、ムーンスター号でミスタードーソンの役に立ちたいと乗船したジョージがキリアン・マーフィ演じる謎の英国兵(あきらかに戦闘による神経症を発症している)に突き飛ばされ船内で階段から落ち後頭部を鉄ダクトハンドルに打ちつけた場面ぐらいではないだろうか?
(戦闘でも爆撃でもなく不慮の事故で死亡してしまうアイロニカルさ)
決定的な台詞。
何が見える
故国(HOME)
・イギリスへ帰還した兵士たちが列車に乗り込もうとしている。
毛布を配っている盲目の老人に対して。
「生き残っただけだ」
「十分だ」
・コリンズに対しての兵士の台詞
(やや、小突き気味に)
「空軍は何をやってたんだ」
ミスター・ドーソン
「我々は知っているよ」
マスク取ったらめちゃくちゃハンサム。
後ろの席で見ていた年配の女性ふたりの会話。
(関西弁 ↓)
「あのパイロット、マスク取ったらめちゃくちゃハンサムやったねー」
「あ、思った思った、正統派男前って感じやった」←これはきっとジャック・ロウデンの事ですね 笑
こういう人もいました。
ラスト、桟橋で「あ、あれ?どうなってるの?」といった顔で目を覚まして(もしかして、最初から最後まで寝てたりして?)ちゃっかり将校たちの、これが最後となるイギリス兵の帰還船に乗船できる兵士。

Memo2
エキスポIMAXで発見したこと。
埃や糸くず(ヘアー)と思しきものが確認できる。
(後述、船内シーンで左下にかなり、はっきりと判る)
さすが完全アナログなフィトケミカルプロセスによる組み合わせ。
そのフィルムプリントからスキャニングされただけのことはある。
そしてデジタル修復せずに、そのまま再現していることに驚嘆。
約75%のIMAXカメラ撮影に対して25%の65mmカメラ撮影部分は主にムーンスター号部分(船内、船上)引潮で海岸に打ちあげられた状態になっている漁船の船内シーン(この密室シーン、本編中最も怖かった)、ボルトン海軍中佐(ケネス・ブラナー)が桟橋の上から海上に現れる民間船を目にするシーン
空を広く撮ったり描いたりすることは難しい。
スカスカという評、発言を見かけたけれど、龍安寺の庭みたいな余白の美として好きだけどなぁ。
「ヘルツォークが語っていた"Ecstatic Truth"の意のひとつとして砂浜での兵士たちの配置を幾何学模様にした」とインタビュー(後述TV Bros.)での発言も。
65mmカメラで撮影された『アラビアのロレンス』と、どこかダブるような感慨のシーンがいくつか。
(『ダンケルク』のCGを使わないアナログ撮影に関してのメイキング映像や画像などがすごく面白い。同じように「ロレンス」も砂漠に電信柱を建てて電気をひくところから始める話や駱駝の面構えオーディションなど逸話が多数)
・1週間と1日と1時間が交差していく際に起こる時間軸のねじれ
(『アラビアのロレンス』におけるダマスカスで握手をもとめてきた兵士に「どこかで会いましたか?」と不思議な顔をするロレンス)
・冒頭「イングリーシュ!」「イングリーシュ!」と叫ぶトミーを見て『アラビアのロレンス』で3回出てくる同台詞を思いだした。
スピットファイアの象徴するもの。
それは、まさにイギリスそのものでもある。
フレデリック・フォーサイス自伝『アウトサイダー』の中にスピットファイアに乗ることが子供の頃の夢だったから空軍へ入った記述が (最初の方にダンケルクのこともチラッと出てくる。最近撮影されたスピットファイアに乗るカラー写真も)

Dunkirk_1

Memo3
おそらく最も上映館数が多いと思われる2K上映。
ビスタFLATかシネスコ額縁か。
張りキャンノーカットマスクの現在、最も大事なことはフットライトが最小限の明るさで場内が限りなく暗いこと(消防法の関係なのか禁煙室内灯がぼやっと点けざるをえない劇場もあるので注意)。
TOHOシネマズなんばの2K IMAX
D列だと通路をはさんでC列の人の頭がかぶってくるため最初から販売していなかったりと、それぞれの劇場によって対応が変わっている(はず)
冒頭。
…砂浜へ。建物や塀の影が青い
その影の色が見たこともないほど美しい。
2K額縁でもエキスポIMAXでもデジタルIMAXでも全て同じ色だ。
(これもフィトケミカルプロセスの恩恵ではないだろうか)

Imax

Imax_f

次世代レーザーIMAX
写真は大阪エキスポシティ・座席 F-012
最前列鉄柵のことを考えると、センターのF-020が個人的にはベスト(このあたりは好みの問題もある)。
確認のため、2K額縁上映をなんばパークスシネマ シアター7で。
中央部分だとかなり没頭できる。
ショットとしておさまりがよくなるシーンも発見。
(最初から考えられているのだろうか?不思議だ)
初見の知人がエキスポIMAXでは視点の位置が中央になるため、IMAXカメラと65mmカメラ撮影部分との切替箇所は気づかなかったと言ってた。

Imax_p

Memo4
TVブロス. 9月9日号
『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督インタビュー。
カラー4P。
"Ecstatic Truth"の意味するもの、音楽的ストラクチャーの話、映画のトーンについてなど素晴らしい内容。

Bros1

Bros2

「若き兵士たちはオープンキャスティングをやって集めた~中略~僕は各ストーリーラインをきっちりしめてくれる"アンカー"がほしかった。経験を積んだベテランで観客にも馴染みがある役者。ケネス(・ブラナー)、マーク(・ライアンス)、そしてトム(・ハーディ)だ。彼らがかっこいいって?そうでなくちゃ困るよ。かっこよく撮ったんだから(笑)」
Title Design > SCARLET LETTERS
ノーラン監督のほとんどの作品(『インターステラー』『メメント』など除く)タイトルは黒バックに白文字。
クリストファー・ノーラン監督
Movie titles and typography from all feature films directed by Christopher Nolan.
http://annyas.com/screenshots/directors/christopher-nolan/
パンフレット。
奥付けにしっかりとビスタサイズ(上下に黒みのあるレターボックス)/2D, IMAX/2Dという記載もある。
まだ途中まで(やや拾い読み)ハーパーBOOKS『ダンケルク』
ノンフィクション本と思いきや、これがすこぶる面白いメイキング本(8Pカラーページ、インタビュー有り)でもあります。
(11章「新たなダンケルク」は40ページ以上にわたって映画に関して)

Dk2

Memo5
手作り感!
厚紙で出来たエキストラを立てるところを撮影した動画
https://www.youtube.com/watch?v=26cNm9trmIU
70mmフィルムのプロセス、配送などに関して。
A Day in the Life - 70mm Dunkirk
https://www.youtube.com/watch?v=tFGaxVejvys
参考
マイケル・ケイン繋がり(ファリアとコリンズへ指示を出す司令官の声でカメオ出演)で『空軍大戦略(BATTLE OF BRITAIN)』(1969)
movie typography
タイトルデザインはモーリス・ビンダー(Maurice Binder)
http://annyas.com/screenshots/updates/battle-of-britain-1969-movie-typography/

『ダンケルク』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

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