ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる『ムーンライト・シャドウ(Moonlight Shadow)』エドモンド・ヨウ監督、小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、臼田あさ美、他
『ムーンライト・シャドウ』
Moonlight Shadow
監督 : エドモンド・ヨウ
原作 : 吉本ばなな
出演 : 小松菜奈、宮沢氷魚
佐藤緋美、中原ナナ
吉倉あおい、中野誠也
臼田あさ美
※Memo1
●彼岸と此岸を隔てるものは川だ。
そして繋ぐものも、思いをはせるために横たわるのも川だ。
ある種、夢を見ているような感覚。
時間の伸縮で言うならば、それは長い。
印象としての時間と実際の時間。
●監督がインタビューで答えている通り、原作よりもかなり肉付けされた登場人物。
小説の映画化が(逆説的な意味ではなく)すごく文学的に見える。
映像から立ち上る行間は詩的だ。
●さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)、柊(佐藤緋美)、ゆみこ(中原ナナ)、麗(臼田あさ美)の間に紡がれる時間も、川の流れのごとく、蜘蛛の巣のように地下に張り巡らされた地下の水のように、繋がっているようで変化し続け曖昧な感じだ。
●4人が初めて顔を合わせるシーンがとてもよい。
柊とゆみこを見て反応するさつき。
●それにしても、さつきを演じた小松菜奈のアップ絵の力強さたるや。(「渇き」以来、ずっとテレビよりも映画での出演作を見ている気がする。それほどにスクリーンが似合う)
●出演者以外にも撮影、カラリスト、他、気になることがいっぱい。
そして印象深い音楽のトン・タット・アンさん
(『朝が来る』もそうだったのか、とMUBIをチェックして驚いているところ)
An Ton That
https://mubi.com/cast/an-ton-that
●色のトーンについては何度もディスカッションを重ねたという通り、本作の文学性を創り上げる一端となっている。
さつきの赤のコートは(おそらくカラコレで強調されてると想像)強烈なイメージを残す。それはラストで喪失から踏み出して足を進める力強さにも繋がっていく"赤"だ。
●ロケ地を調べると劇中、最も印象深い"あの橋"は東京都羽村市「羽村堰下橋(はむらせきしたばし)」
(google Mapに入力するとストリートビューもあるので、まさにあの場所へ飛ぶことができます)
これは、ちょっと行ってみたい。
※Memo2
●パンフレット。
大島依提亜さんによるデザイン。
●監督、キャストインタビュー、植本一子エッセイ、シナリオ決定稿(高橋知由)、他
●(以下、大島さんのtwitterより引用)
上製本でもはや“本”(スピンやはなぎれも)
さらに表紙は金属的光沢の群青色のパール紙を使用。
谷川俊太郎さん詩/木下龍也さん岡野大嗣さん短歌の書き下ろし等、ナナロク社さん完全編集の中身も本気の書籍です。
●これは本です、と語ってくる「もうひとつの仕掛け」が洒落ている。
(購入者のお楽しみとして)
買われた方の映画と映画館の思い出に
●吉本ばなな原作本。
リアルタイムで読んだ当時、内容とともに話題となった装丁書籍を探したが見つからず、現在底本とされる新潮文庫版で再読。
「七夕現象」→「月影現象」
「うらら(ひらがな名)」→「麗(うらら)」
と、大きな差異はそれぐらいだ。
喪失からの一歩。
進んでいく「さつき」のモノローグ。
原作も映画もラストは同じ。
「等。私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それは止めることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる」
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