2013-12-24

フランシス・フォード・コッポラ監督、ジーン・ハックマン主演『カンバセーション…盗聴…(The Conversation)』

フランシス・フォード・コッポラ監督・製作・脚本によるサスペンス映画の傑作『カンバセーション…盗聴…(The Conversation)』(1974年製作)。出演はジーン・ハックマン、他多数(後述)。カンヌ映画祭グランプリ。

物語・プロの盗聴屋ハリー・コール(ジーン・ハックマン)は通称"専務"(ロバートデュヴァル)からの依頼であるカップルの会話を録音。しかしテープを渡す段になっての相手側の対応(会う約束の際、専務ではなく秘書が代わりに受け取ると言い出したり)に疑問を抱きテープを再生して内容を知ってしまう…

Conversation

Memo
俯瞰ショットから始まるオープニング(まるでスナイパーのようなガンマイク、最初に目につくパントマイマー、紙袋にマイクを忍ばせ近づくチームが盗聴しているカップルを次々と映しとる)から不安を漂わせる室内を捉えたラストシーンまで無駄な部分が全くない途切れることがないサスペンス。
ハリー・コールはニューヨークで行った盗聴が原因で3人の死者が出ていることを知り、その地を離れた。が、業界は狭いというのか情報は漏れているというのかハリーの仕事ぶりは既に知れ渡っている。(業界のコンベンションに参加した際にまるでスターにでもあったかのように「ハリーさんでしたか…せめて我が社の製品と一緒に写真でも写してもらえませんか」と言われる始末)
終了後ハリーの仕事場に打ち上げ(パーティの続き)として流れこむ同業者やスタッフ。この部分が中間点。ここからハリーの強迫観念と実際にテープが盗まれたり徐々に怖さが増していく。
ラスト、知られているはずのない電話番号に秘書(ハリソン・フォード)から電話が。
「気づいたようだな」
「盗聴してるからな」
(盗聴屋に盗聴しているという声)
プロの盗聴屋だからこそ、わかる手口。
照明器具を調べ、コンセントを分解し、床や壁を剥がし、部屋中を探しつくしボロボロになった部屋でサックスを吹くハリー。
映画はそこで静かに終わる…。
コッポラ=ルーカス=スピルバーグのラインが浮かび上がるキャスト。(接続ポイントとでも呼ぶべきかも)
テリー・ガー→未知との遭遇
ハリソン・フォード→スターウォーズ、インディ・ジョーンズ
ロバート・デュバル→ゴッドファーザー、地獄の黙示録
フレデリック・フォレスト→ワン・フロム・ザ・ハート
ジョン・カザール→ゴッドファーザー
撮影はビル・バトラー(「雨のなかの女」「ジョーズ」「カッコーの巣の上で」など70年代の傑作群を数多く撮影)。
元々、音響技師だったウォルター・マーチが編集も兼任として初参加。のちに数多くの編集と音響に携わることに。(「地獄の黙示録」「イングリッシュ・ペイシェント」など)
思い浮かんだこと→この雰囲気を「アルゴ」や「裏切りのサーカス」は醸し出していたのだなぁ、と(←どちらも好みの作品たる、ひとつの要素)
初見は大阪・梅田地下劇場(現在のTOHOシネマズ梅田)で『アメリカン・グラフィティ』とのロードショー2本立て公開で(今思うと贅沢な2本立て!)。
奇しくも「アメリカン・グラフィティ」に出ているハリソン・フォードとシンディ・ウィリアムズが本作にも出演していた。

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2012-08-13

フランシス・フォード・コッポラ監督『Virginia/ヴァージニア』(Twixt)

注・内容に触れています。
フランシス・フォード・コッポラ監督
Virginia/ヴァージニア 』(Twixt)
出演はヴァル・キルマーエル・ファニングブルース・ダーンベン・チャップリン、そしてトム・ウェイツがナレーションを担当。

物語・オカルト作家のボルティモア(ヴァル・キルマー)はサイン会で訪れた小さな町で少女の死体が発見された事を知る。ボルティモアはミステリー好きの保安官(ブルース・ダーン)から、この事件を元にした小説を共著しないかと持ちかけられるが、気乗りしない。しかしその夜、ボルティモアの夢の中に少女V(エル・ファニング)と作家のエドガー・アラン・ポー(ベン・チャップリン)が現れ、かつてこの町で子供たちが犠牲になった事件へと彼を導く。現在と過去の事件を解いていくうち、彼は自分の過去と向き合うようになる。

Virginia

Memo1
モノクロのようなBlueDarkGray(暗青灰色)の映像にオレンジゴールドの煌き。
V」はVirginia(ヴァージニア)の「VVampire(ヴァンパイア)の「VそしてVicky(ヴィッキー)の「V」
・ヴァージニア(ポーの妻)
・ヴァンパイア(小説の中の…、そして夢のなかの…)
・ヴィッキー(ボルティモアの亡くなった娘)
そして現在の少女殺人事件。
物語に導かれるように、或いは夢に…
カメラはほとんど動かないが観客の心は動いた。あとで調べたらカメラがパンしたのは5回だけだそうです。やー、豊穣なワインのような作品。久々に画(え)そのものに酔った。で、例によって編集はFinal Cut PROで(本作の編集は盟友、ウォルターマーチではありませんが…)

メリエス月を想起するシーン、パートカラー、モノクロ、昼間に撮影した夜間シーン(「アメリカの夜」方式)、画面分割などなど隠しコマンドとしての映画史を潜ませていると予想。日本では公開されませんが時計台のシーン(今年公開されたスコセッシ監督「ヒューゴ」想起←こちらもメリエス、そして時計台!)が部分3Dで創られていて、そのシーンになると3Dメガネを掛けるようになっているそうです(見たかったなぁ)
トム・ウェイツの渋い声によるナレーションで幕を開ける物語(実はこのナレーション部分はボルティモアが書いた小説の冒頭部分であることも後で判る)
主人公の名前、ボルティモアポー従妹のヴァージニアと叔母の反対にあいながらも求婚、結婚した場所。
「V」を演じたエル・ファニング。歯科矯正器具とVampire…。ほとんど確信犯的に結びつけた後のあのシーンは!!!でした。

Memo2
タイトルデザインはStephen Faustina。「テトロ 過去を殺した男」も。(IMDbに本作の記載はありませんがエンドクレジットには記載有り)。季刊小説誌『ゾエトロープ・オールストーリー』(Zoetrope: All-Story Magazine)のアートディレクションも。
~ SFAUSTINA ~
(Stephen Faustinaのスタジオ)
http://www.sfaustina.com/

「Cahiers du Cinéma」2012年No.677 コッポラ監督【Virginia/ヴァージニア】インタビュー、カラコレやVFXについてなど22ページの特集記事が掲載されていました

音楽は「コッポラの胡蝶の夢」「テトロ 過去を殺した男」に続いてオスバルド・ゴリホフ(Osvaldo Golijov)
オスバルド・ゴリホフ公式ウェブサイト
http://www.osvaldogolijov.com/

コッポラ監督が映画に寄せた文章の締めの部分が本編中、台詞にも出てくる。ポーに執拗にエンディングについて聞くボルティモア。その答えとは?「君が探しているエンディングは君自身だ」
そして「V」の事を知る…

映画「Virginia/ヴァージニア」公式サイト
http://virginia-movie.jp/index.html


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2012-01-23

フランシス・フォード・コッポラ監督『テトロ 過去を殺した男』(Tetro)

注・内容、ラストシーンに触れています。
フランシス・フォード・コッポラ監督

テトロ』原題 : Tetro

2008年にブエノスアイレス、パタゴニア、スペインで撮影
2009年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品として上映
日本では2010年第7回ラテンビート映画祭で上映。コッポラ作品にして(まさかの)DVDスルーかと思われた2012年1月に無事公開されました。

物語・長い間、音信不通だった兄がブエノスアイレスで暮らしているのを知った17歳のベニー(
アルデン・エーレンライク)。ベニーは、兄・アンジー(ヴィンセント・ギャロ)の家を訪れることを決めた。しかし、久しぶりに会った兄アンジーは自分をテトロと呼べと命じた。さらに、周りにはベニーを友人と紹介して…。(オレンジ色部分、goo映画より抜粋)

Tetro_1

Memo1
デジタル、フィルム、白黒、カラー、画面サイズ、ロングショット、クローズアップ、演劇、映画、バレエ、言語、ロケ地… 様々な事柄が渾然一体となって押し寄せてくる。編集の妙、ディティールの集積。光と影。もう、これ久々に映画酔した!
本編もフィックスで撮られた絵画レベルの映像にウォルター・マーチの編集と、もうホントに目のご馳走オンパレードでした。
明滅する光。山麓の雪が反射された光、ヘッドライト、テレビカメラクルーのライト。数多くの光の束がデジタル撮影(デジタル上映)によって強烈なコントラストを生む。
物語はカンヌでの初公開時から語られてきたとおり、(父親、カーマインコッポラを連想する)作曲家の父とのオィデプス王の逆転写的様相を帯びている。そのドラマツルギーを支えるヴィンセント・ギャロ、アルデン・エーレンライクら演技陣も素晴らしい。
ラスト
出生の秘密(兄ではなく父親であったこと)を知り道路に出て車の方向へフラフラ歩き出すベニー。ヘッドライトの光に一瞬よろめく。
後ろから目を塞ぐテトロ
「光を見るな」
そして「THE END」
前作『コッポラの胡蝶の夢』もそうでしたが長いエンドクレジットはなく、シンプルに(ハリウッドの伝統的なスタイル)「THE END」で幕を閉じる
様々なスタイルを実験的に繰り返すコッポラ監督だが本作をもって、そろそろ終りにしたいと前作公開時のインタビューで答えていました。
(以下「Esquire・2008年10月号」より蓮實重彦氏によるコッポラ監督電話取材記事より抜粋)
「映画のスタイルは、作品のテーマを表現すべきものだと信じています。そしてスタイルはテーマに対し完璧なものであるべきだと。それで毎回作品のテーマに最も合うと思われる撮り方をしてきました。しかし私も歳を取ってきましたので、今回の作品と次回作(「テトロ」のこと)を作ってみて、そろそろスタイルに関する実験的なことはやめて、今後は私が今まで試みてきた中で最も好きなスタイルを使って作品を撮っていくべきではないかと考え始めました。」(この後、小津監督もそうであったこと等が語られる)

Memo2
Tetro Film
(YouTubeリンクですがアップされた日付から察するに半オフィシャルと思われるので記載しました) → 予告編、メイキング(バレエシーンのメイキング映像も)、インタビュー、冒頭3分間のシーン(美しいタイトルバックも)見ることが出来ます。
http://www.youtube.com/user/TetroFilm

Tetro_2

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2010-10-09

午前十時の映画祭・『ゴッドファーザー』

午前十時の映画祭フランシス・フォード・コッポラ監督ゴッドファーザー』を再見。エンドクレジットでレストレーション版だと知る。プリントで色調がグリーン気味になったのは一箇所だけ(安定したニュープリント)。スクリーンサイズもシネコン(TOHOシネマズなんば)内、最大で。消防法改定後のほぼ暗闇に近い状態での上映を観るは初めてかも。ゴードン・ウィリスの陰影あるゴールデンアンバー映像。ドン・コルレオーネの顔が本当に凄みが効いて映し出される。瞳の光がはっきりとわかる。スクリーンで判るトムヘイゲンの立ち居振る舞い。コルレオーネ村での眩いばかりの日差し。俯瞰から捉えられたドンコルレオーネが撃たれるシーン。転がる果物までがはっきりとわかる。演技をまったく感じさせない役者とその存在すら忘れさせるカメラの動き。ゆったりと3時間のドラマに酔う。ファミリーの姿とその裏で起こる出来事のカットバック。それはワルツのリズムが刻まれるが如く、PARTII(2)へと続いていく。

Gf_1

Gf_2

※公開時のパンフレット

午前十時の映画祭

http://asa10.eiga.com/

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2007-02-01

フランシス・フォード・コッポラ監督・人工の街『ワン・フロム・ザ・ハート』

ロケ撮影をいっさい行わずに全てセットとミニチュアで作られたフランシス・フォード・コッポラ監督ワン・フロム・ザ・ハート

物語・7月4日の独立記念日を明日に控えた、ラスベガスの街。旅行会社に勤めるフラニー(テリー・ガー)の夢は南の楽園ボラボラ島へ行く事。しかし、同棲生活5年を迎える恋人ハンク(フレデリック・フォレスト)はそんな島へ行く事よりも彼女との平凡な家庭生活を密かに望んでいた。そして、そのような性格不一致の2人はささいな事からケンカ、フラニーは遂に家を出て行ってしまう…。

撮影ヴィットリオ・ストラーロ(ベルトルッチ監督作品をほとんど手がける名カメラマン。「ラストエンペラー」でのゴールデンアンバー調の色彩設計はストラーロの特色と呼べるもの)。オープニングのミニチュアの看板を使ったタイトルロールから沿道、そしてフラニーの働く旅行会社のオフィスめがけてショーウィンドウを一気に突き破ってしまうカメラワークは圧巻です。 

Ofth

美術はコッポラ監督と「ゴッドファーザーPART2(正確にはロシア数字表記)」以来の付き合いとなるディーン・タブラリス。コッポラ監督の無理難題にも「俺にできない美術(デザイン)はない ! 」と答える程。
ラスベガスのミニチュアから終盤に登場するマッカーラン空港のセットまで制作したのはグレッグ・ジーン(「未知との遭遇」のマザーシップ!を作ったのはこの人)

そして、公開当時に話題になったのが高品位ビデオカメラを導入して撮影された事(現在のデジタル撮影の「デ」の字も無い時代においては最先端、と、いうか先駆者だったのではと思われます。当然、AppleのMacも生まれていないし、CGも研究段階だった)。
その時の撮影の様子が記録されています。(以下、公開時のプログラムより抜粋)。
あらかじめ全ショットを1枚ごとの絵コンテにし、効果音と全台詞を入れたサウンド・テープ(ラジオドラマのようなもの)を作成。この2つをビデオテープにシンクロさせたのち、アテレコの要領でリハーサルを行う。ビデオに収められたコンテに合わせ、役者たちは大体の動きを決めていく。さて、本番。ラスベガスのセットの中で、役者たちはあらかじめ決められたとおりの動きをし、セリフをしゃべる。これを2インチのビデオテープに収め、フィルムにトランスファーしていくのだ。この間、コッポラ監督は何をしていたのかというと現場には姿を見せず、もっぱらトレーラーを改造したビデオ調整室にいて、ブラウン管とにらめっこ。「TV局のディレクターのような仕事ぶり」と評されたわけである。高品位ビデオカメラのおかげで、画質はいたって鮮明。色のひずみも硬さも無い。明るく、そして柔らかい。特に赤が驚く程の発色を見せている。

この映画のキーとなる色彩は。オープニングとエンディングに現れる緞帳は。タイトルは。フラニーは、ハンクは。ふたりの心情が混じる部分は
と、はっきりと色分けされているのもわかりやすい趣向となっています。
音楽も男心をトム・ウェイツが女心をクリスタル・ゲイルが歌っていて渋く、そしてロマンティックに盛り上げています。
元々は「砂漠の真ん中の街で、撮影ができるか ! 」のコッポラ監督のひと声で、ラスベガスの街を含むオールセット撮影になったという逸話も。

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